今、Moto2クラスのランキングトップに立っているのはフランス人ライダー、J・ザルコ選手。南仏出身のザルコ選手は、安定した好成績を残し、初タイトルを目指している。第8戦オランダの会場、アッセンでザルコ選手に好調の理由、ヘルメットデザインの秘密などをうかがった。
−日本のファンは、あまりザルコ選手のことを知らないので、簡単なプロフィールを教えてください。南フランス出身ですね。何歳からレースを始めたんですか?
「カンヌ生まれで、今はコーチのL・フェロンと一緒にアヴィニオンに住んでいるんだ。10歳くらいからバイクに乗っているけど、レースを始めたのは13歳。みんなより少し遅いんだ。レースを始めたのは、速く走ることが大好きだから」
−イタリアのポケットバイクレースに出ていましたね。
「コーチにもっと速くなりたいならイタリアのレースに出たらいいと言われたんだ。南フランスにはポケットバイクのレースはないからね」
−2007年にはルーキーズカップの初代チャンピオンを獲得していますね。2009年からGPに参戦して、Moto2クラス3年目の今シーズンは、アッセンまでに3勝してランキングトップと大活躍ですね。今年の好調の理由はなんですか?
「去年の前半はマシンに問題があったり、ミスがあってうまくいかなかったけど、9月頃から調子が上がって終盤は良かったんだ。そして、今年はいい状態で開幕した。今はすごく自信があるんだ。」
−何か取り組み方か作戦を変えたのですか?
「特に作戦を変えたわけじゃないんだ。前とやることは同じ。バイクに乗って、状態をスタッフに伝えて、マシンをセッティングして…。やることは変わっていない。いろんな経験を積んできたことが生きていると思う」
−去年の前半は苦戦していましたね。
「去年は、マシンに問題があって、そのことを考えすぎていた。今は、いいマシンといいチームがあるから、走りに専念して、勝利を目指しているんだ。マシンにトラブルがあっても考えすぎないで、リラックスしてやっていくこと、自信を持つこと、これが大事なことなんだ。経験を積んで、リラックスしてできるようになるまで、少し時間がかかったよ。毎回、天気も違うし、サーキットも違う、そこでうまくやるのが仕事なんだ。経験がいるよね」
−今年からKALEXのマシンに乗っていますね。
「最近、KALEXのほうが成績が出ているからね。コンスタントに戦うためにはKALEXに乗った方がいいと思った。去年はSUTERがいいと思ったんだけど、ラバットがKALEXで速く走っているし。KALEXに変えることが必要だった。今シーズン、KALEXに乗ってへレスでもルマンでいい感じで走れた」
−今年は、チームも変わりましたね。
「GP125ccのときに在籍していたAjoのチームに戻った。彼らとレースに対するスピリットは同じだし、チームといい仕事ができている。マシンをばっちりチェックしてくれると分かっているから、今年はリラックスできている。リラックスしていることが、チャンピオンシップを戦う上で大切なんだ。前はナーバスになりすぎたけど、今はチームやマシンのおかげでリラックスできているよ」
−今年、ダンロップは新しいタイヤを供給していますね。
「今年はフランスで作っているタイヤを使っていて、それがすごくいいんだよ。去年のタイヤよりもすごくよくなっているんだ。それで、今年は速くなっているね。今年はレースで最後まで安定して走れるよ。今年はタイヤがすごくいいから、タイヤマネージメントも楽だよね。」
−ザルコ選手の強みはなんですか?
「コーナーに入るのがすごく速いこと。コーナーに速く入って、スムーズなことだね。スムーズな走りが僕の強みだと思う。タイヤマネージメントのためにも、スムーズに走ることが大切。激しく走るよりスムーズな走りのほうがいいんだ」
−今回のアッセンはいかがですか?去年は4位でしたが。
「2013、2014年も表彰台争いしていたんだけど、最後は表彰台に上がれなかった。だから、今年は上がりたいね。アッセンはときどき雨が降ったり、晴れたり安定しないから分からないけど。とにかく、楽しく冷静にやることが大切だね。アッセンは予選まで芝生がいっぱい見えるけど、レースになるとお客さんがいっぱい入って黒くなる。それが面白いね」
−今年は初タイトルのチャンスですね。今から意識していますか?
「もちろん、冬からタイトルを目指しているよ。今は、ランキングトップだけど、やることは変わらない。毎回予選でできるだけ速く走って、決勝でできるだけいい順位でゴールすること。あまり考えすぎずに、シンプルに考えた方がいいと思っているんだ。そして、最後にタイトルがとれたらいいと思っている。タイトルを獲得するためにはクレバーにレースすることが、とっても重要だと思う」
−タイトルを獲得したらMotoGPクラスに参戦したいですか?
「もちろん、MotoGPが目標。子どものときからの夢だけど、いいチームに入ることが大事だから。僕にはMotoGPマシンに乗る技術はあると思うけど、いいマシンに乗れないと意味ないからね。MotoGPクラスにはフランス人ライダーが必要なんだ。僕がそのひとりになれたら、最高だね。それに、ロッシ選手は僕が子どものときの憧れの選手。だから、彼とレースすることになったらファンタスティックだし、ちょっと妙な感じだよね」
−南仏で子どもたちのレーシングスクールをやっているそうですね。
「南仏でレーシングスクールをやっている。7〜12歳の子どもたちにバイクの乗り方とか教えている。スペインでは多くの子どもたちがバイクに乗って、レースに出るチャンスがある。フランスもそういう状況にしたいんだ。スクールを始めてもう2年になる。週末にGPがないときは、彼らに教えているよ。今17人のライダーがいる。フランスにモータースポーツをもっと広めたいと思って始めた。最近、若手のクアタラーロ選手が出てきて、少し人気が出てきたけど、まだフランスでは、MotoGPはそれほど人気はないからね」
−もてぎで2011年にGP初優勝を果たしていますね。
「そうなんだ。いい思い出だね。もてぎは、コースとしてはハードブレーキングが多くて難しいよね。今年は勝てるといいな」
−ヘルメットにライジングサンのデザインが入っていますね。
「僕のコーチは1992年にGPのメカニックをしていたんだ。で、彼から日本人ライダーのことを聞いた。あの頃、坂田、上田、若井がGPにやってきて、彼らはすごく強かった。マネージャーから彼らのストーリーをいろいろ聞いていたんだ。それで、彼ら日本人ライダーへ尊敬を表して、ライジングサンのデザインをヘルメットにつけた。すごく気に入っているんだ。上田の時代を思い出すね。ライジングサンのデザインは、戦争の悪いイメージがあるという人もいるけど、それとは意味が違うんだ」
−最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
「いつももてぎに行くと、みんながサインを求めてきて、とてもうれしいよ。ライジングサンのヘルメットにつけているし、日本でレースするのはプレッシャーもあるんだ。今年、勝てたらうれしいよね。今年も応援よろしくお願いします」