「お金持ち」と思わせるのは簡単だ
「彼はセレブ社長なんです。この前のデートでは外車でレインボーブリッジを走って、夜景を見たんですよ。同世代の男子とは『格』が違います。有名人の知り合いも多いし、仕事もデキるんです」(Kさん)
24歳の女性(Kさん)は、新卒で就職した2年目OL。恋愛マッチングアプリで知り合った33歳の「自称ベンチャー経営者」と交際している。私は彼女から様子を聞いて「その男は怪しい」とうすうす感じたが、Kさんは心酔しているようだ。
彼女の同世代である20代は「さとり世代」と呼ばれ、昔の若者がこぞって買った車やブランド品を欲しがらず、ファストファッションで満足し、恋愛にも消極的だといわれる。ところが33歳の彼は違う。外車でドライブデート、Kさんを連れていくのはおしゃれなレストランで、服は百貨店のハイブランドしか着ないのがこだわりだ。「有名人と電話で話しているところを見せてくれるから、きっとセレブなんですよ!」とKさん。
それならよほど儲かっているのかと思うが、彼の言動にはややおかしな点が目立つ。Kさんに聞くと、彼はセレブの集まるパーティーへ行った話をしてくれるが、「有名人のプライバシーを守るため」と写真やFacebookを見せてくれることは絶対にない。そんな彼をKさんは「セレブの秘密を守る、真面目な人」だと思っている。なんだかおかしいと思いませんか。
「赤字にするために」経費を使いまくる
さらに「彼は1円で起業」し、オフィスはもっておらず「儲かっているけど、決算を赤字にしようと利益はゼロ円にしているって言うんです。そのために先日、フェラーリを買ったって」。ふむふむ、確かに資本金1円でも起業はできるので、そこに嘘はないのだろう。が、利益が上がりすぎたから経費を増やすのではなく、最初から「赤字にするためにフェラーリを買った」とはこれいかに。本当に彼は「お金持ちのセレブ社長」なのか……?
「デート代は全て彼がカードで払ってくれる」というKさん。カード払いは借金なので、彼がお金持ちである証拠にはならない。ブラックカードならまだ「お金持ち」の雰囲気があるが、Kさんによると彼のカードは「銀色に赤の◯が印字されている」らしいので、楽天カードか何かであろう。楽天カードに罪はないが、彼のキャッシュが豊富である証拠はどこにもない。
あげく彼は連絡もマメで、LINEは即レス、毎日1時間は電話してくるらしい。Kさんはそんな彼を「マメで、私を大切にしてくれる」と喜んでいるが、ベンチャーを経営する33歳男性が、そんなに時間があるものだろうか。
私が取材した若手経営者はみんな仕事に精一杯で、デートどころか会社に寝泊まりが当たり前だと聞くが、Kさんの彼はいつ電話しても出てくれるという。本当に仕事をしているのだろうかと勘ぐりたくなる。心配になりつつも彼女が幸せならまあいいかと見守っていると、彼女が悩ましげに相談してきた。
「新規事業に出資しないか」
「彼がこの前、『新規事業立ち上げのために50万円出資しないか』と言うんです。50万円もなければ、7万円でもいいからすぐ振り込んで欲しいって」……7万円? Kさん、それは赤字企業にも必ず課税される「法人住民税」とおんなじ額だ。ホントは彼、税金を払うキャッシュもないんじゃないの? と思ったが言えなかった。
とにかく男女の間で「お金の貸し借り」は止めたほうがいいと忠告したが、Kさんはその後、彼に50万円貸し、返ってこないまま別れてしまった。彼は「お金持ち」でもなんでもなかったのだ。良くも悪くも、自分を大きくアピールするテクに長けていたのだろう。
ましてや相手は、うら若い女性だ。セレブとの付き合いを匂わせ(ただし電話だけで証拠はない)、派手な消費をし(カード払いならキャッシュがなくても可能)、ベンチャー社長という華やかな肩書で女性を口説く(社長には誰でもなれるが「セレブ社長」のお金持ちであるとは限らない)。細かなテクニックを組み合わせれば、男性が恋愛相手に「自分を大きく見せる」のは簡単なのかもしれない。Kさんには夢の跡だけが残った。
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