千種辰弥
2017年5月3日10時30分
■明日も喋ろう:3 @ギリシャ
「家の外に15人の警察官がいる」「今、検事を連れて入ってきた。私を逮捕しようとしている」
雑誌「ホット・ドック」の編集長、コスタス・バクセバニスさん(50)は2012年10月、ツイッターでそうつぶやいた直後、警察に連行された。
その月発行したホット・ドックに、スイスにあるメガバンクの支店に口座を持つギリシャ人約2千人分の名簿「ラガルド・リスト」を掲載。それがプライバシーを侵害したとされた。口座に預金して脱税していた疑いがあり、元大臣ら幾人もの政治家や官僚、経営者が名を連ねていた。
リストは政府の手にも渡っていたが、捜査されていなかった。経済危機で国民は増税や年金カットに苦しんでいるのに、金持ちは見逃されるのか。バクセバニスさんはリストを独自に入手し、掲載に踏み切った。
逮捕には政権の意向が働いている――。そう考え、恐怖を覚えた。だが、気を取り直した。「これは自分個人の問題ではない。報道の自由の問題だ」
事件はツイッターなどで拡散し、批判が高まった。結局、逮捕から数時間後に拘束を解かれ、裁判も無罪に終わった。
「記者殺し」
ギリシャには、ジャーナリストがそう呼ぶ法律もある。名誉毀損(きそん)の疑いが持たれただけで逮捕されることもあり、「口封じ」の効果があるからだ。
日刊紙「エレフテロス・ティポ…
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