『やすらぎの郷』服部宣之Pが語る――第2回:日本屈指の脚本家・倉本總氏の手書き原稿を手にする喜び
脚本家の倉本總氏が、自身と同じシニア世代に向けて書いたオリジナルドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)。主演の石坂浩二をはじめ、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫といった豪華キャストの共演もさることながら、家族や人生、死への恐怖など、シニアたちが直面するテーマをコミカルに描いた展開も話題を集めている。企画が決まった当初、倉本氏から構想を聞いたプロデューサーの服部宣之氏は、「本当に実現できるのか自信がなかった」というが、その世界に魅了され、おもしろい作品になると確信したのだそう。そんな“倉本ワールド”について、たっぷり語ってもらった。(以下敬称略)
原稿に刻まれた倉本先生の筆圧に、思わず震えました
――服部さんご自身、これまで倉本氏の作品に感銘を受けたり、何か影響を受けた部分はありますか?
服部:もちろん『北の国から』(フジテレビ)をはじめ、『前略おふくろ様』(日本テレビ)、『玩具の神様』(NHK-BS2)、『優しい時間』『風のガーデン』(共にフジテレビ)と、好きな作品を挙げればキリがないくらい、憧れの脚本家さんです。市井の人々をしっかり、心のひだまで描く人間ドラマに何度泣かされ、心震えたことか。その一方で、『玩具の神様』の冒頭がトイレに閉じ込められているシーンで始まるように、先生が書く“喜劇”の部分も大好きです。何十年経っても語り継がれる台詞がいくつもあるというのは本当にすごいことですし、まさかボクのテレビ人生でお仕事をご一緒できる日が来るとは夢にも思っていませんでした。
しかし、そんな憧れが強かった分、前回もお話しした通り、自分が先生の書くものをきちんと形にできるのかという不安はすごくありました。なぜなら、先生がこれまで書かれたものは、雄大な自然と世界観と、そこに根付く人の生き方や営みがベースになっているわけです。それがどうやったら帯ドラマと一致するのだろうと、すごく悩みました。特に『北の国から』なんて、純(吉岡秀隆)と自分の成長が同じスピードっていうくらい、ボクらの世代はずっと見てきてるわけですよ。そういった、ある種の定点観測的な人間ドラマを描く方と、少なくともボクらが経験してきた帯ドラマはあまりに違うので、当然不安が先行してしまって……。でもその半面、先生がどんな脚本を書かれるのか、最初からすごく楽しみでした。
――2月に放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)では、その脚本(原稿)を倉本氏に手渡される場面が放送されていましたね。
服部:そうなんですよ。原稿をハイと手渡され、読んでいるところを目の前でジッと見られているという……非常に緊張する場面でしたね。しかも、先生は手書きで書かれるので、原稿には筆圧がはっきり残っているんです。「あぁ、このシーンはすごく力を入れたんだろうな」っていうのを感じるだけで興奮するし、一方で、「これ、形にできるのかな…」って内心ドキドキすることもありました(笑)
――前回のインタビューで、「台詞劇で人を惹きつける倉本作品は昼ドラに向いている」というお話がありましたが、今のお話だと、やはり帯ドラマの制約の中で倉本ワールドを作り上げるのは大変なのでしょうか。
服部:確かに制約がないわけではないですが、こちらが心配するより先に、先生の方からそれらを考慮したプランを出していただきましたね。ただ、先生が一つこだわっていたのは、“DASH村”“DASH島”(※日本テレビ『ザ!鉄腕!DASH!!』の人気企画)という言い方をされていましたが、今回、場所に関してはある種の匿名性みたいなものを大事にしたいと。実は先生が描いた(やすらぎの郷の)絵があるんですけど、そこには「ここに家があって、コテージがこう並んでて、こっちが山なんだ」って、すでに先生の頭の中にできていた物語の舞台の全貌が明確に描かれていたんです。それを実現できる場所はないので、藤田監督や美術チームが色々と知恵を絞って作り出しています。
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『やすらぎの郷』服部宣之Pが語る――第2回:日本屈指の脚本家・倉本總氏の手書き原稿を手にする喜び https://t.co/gZFAo2cV1w 倉本聰さんの生原稿を見て「私にできるのだろうか、自信がない」とPのテレビ人生で一緒に出来るとは、身震いするぐらい感動したのだろう。