商船三井傘下の商船三井フェリー(東京・港区)は2日、新造フェリー「さんふらわあふらの」の内覧会を大洗港(茨城県大洗町)で開いた。現行船に比べ個室を大幅に増やしたほか、燃費を抑えたまま速度を上げる新たな技術を採用。物流業界の人手不足が深刻になるなか、船便での輸送需要を取り込む狙いもある。今月中旬から同港と苫小牧港(北海道苫小牧市)を結ぶ航路で運航を開始する。
現行船は定員に占める個室比率が約3割だが、新造船では同5割程度まで引き上げた。相部屋タイプの部屋はカプセルホテルのような寝台を用意し、プライバシーを確保。大部屋タイプは客席間に仕切りカーテンを装備し、「大部屋で雑魚寝」が主流のかつてのフェリー旅とは一線を画した。
手軽にクルーズを楽しめる「カジュアルクルーズ」の浸透を目指して、設備も充実させた。最も広い「スイート」(定員3人)は約38平米で、ベッド2台とソファベッド1台を備えるほか、バルコニーも付く豪華仕様。船内無線LANを通じ、タブレット端末などで映画も楽しめる。大江明生社長は「単なる移動手段というより、船旅を楽しんでもらえれば」と期待する。
動力には新機構を採用した。現行船は2機のプロペラが並列に配置された「2機2軸」方式だが、新型船では2つのプロペラが1本の軸に直列に並ぶ「2機1軸」方式を採用。推進力のロスを減らして速度を向上させた。苫小牧行きは現在、午後6時半に大洗を出港するが、速度向上で到着時間を変えずに出港を午後7時45分に遅らせる。
出港時刻が遅くなることで、人手不足にも対応する効果が見込める。同航路を使って関東から北海道まで荷物を運ぶトラックが、より遠方で集荷できるようになる。トラックの積載可能台数も約1割増加。トラックの運転手不足を背景に輸送手段を鉄道や船に切り替えるモーダルシフトの流れを後押しする。
新しい「さんふらわあふらの」は今月13日、大洗発の便から就航する。同じ航路を運航する「さんふらわあさっぽろ」も今年8月から新型船に移行する予定だ。
(福冨隼太郎)