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電気ショッカーボートを導入した捕獲作戦=16年11月、たつの市御津町中島
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電気ショッカーボートを導入した捕獲作戦=16年11月、たつの市御津町中島
悠然と泳ぐアリゲーターガー=16年6月、たつの市御津町中島(揖保川漁協提供)
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悠然と泳ぐアリゲーターガー=16年6月、たつの市御津町中島(揖保川漁協提供)
姫路市立水族館で飼育されているアリゲーターガー=姫路市西延末
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姫路市立水族館で飼育されているアリゲーターガー=姫路市西延末

 ワニのような鋭い歯を持つ巨大外来魚「アリゲーターガー」。昨年6月、兵庫県たつの市の揖保川下流域で生息が確認された。周辺はウナギの保護区で、地元漁協は大規模な捕獲を試みたが難航。冬場は目撃情報も途絶えた。いるのか、いないのか-。水ぬるむ季節、漁協は新たな秘策で7度目の捕獲作戦に挑む。(木村信行、山崎 竜)

 「あれ、何や?」

 昨年6月中旬。揖保川支流の中川で、揖保川漁協(宍粟市)の会員が奇妙な魚影を見つけた。体長約80センチ。北米原産の肉食魚アリゲーターガーだった。

 発見場所は水産庁の補助で事業を進めるウナギの保護区。揖保川はアユ釣りの全国有数の名所で、周辺はアユの産卵場でもあった。

 危機感を抱いた漁協は捕獲を決定。だが、釣りや「はえ縄」は鋭い歯に阻まれ、断念。同漁協総代会会長の森本実勇(じつゆう)さん(54)は、ガーが好む水草などの浮遊物に釣り針を隠した「ごみトラップ」を考案し、勇んで試みたが捕れたのはライギョばかり。

 万策尽きたかに思われた昨年11月、全国内水面漁協組合連合会(東京)から「電気ショッカーボート」を借りた。日本の固有種を食い荒らし、生態系を破壊するブラックバスなどを駆除する秘密兵器だ。

 同月上旬。ウナギ保護区の周辺400メートルを仕切り、水中に電気を流した。3日間の成果はライギョやブラックバスなど43匹。ガーの姿はなかった。

 しかも、深刻な被害の兆候が判明した。電気で気絶した外来魚は幼魚か体長50センチ以上の大型ばかりで、ガーの餌に適した20センチ前後の魚は全くいなかった。アユも昨秋の産卵期はほとんど姿が見えなかった。

 ガーの活動が低調になる冬場は、目撃情報も途絶え、漁協は“休戦”を宣言。黄金週間明けにも活動を再開するという。

 水面で呼吸するガーの姿が確認できれば、これまでの経験を生かした特製の仕掛けで釣り上げる作戦だ。周辺は釣り禁止区域だが、兵庫県の許可を取り「釣り大会」をする案もある。

 森本さんは「漁協の意地にかけても、このままで終われない」と話す。

 【アリゲーターガー】成魚は1~3メートルになる世界最大級の淡水魚。ガー科の7種の中で、ワニのような長い口と鋭い歯を持つことから命名された。寿命はオスが25年、メスが50年とされる。魚食性だが水鳥を補食することもある。

■観賞用が野生化か、加古川や神戸にも

 アリゲーターガーは1997年ごろから琵琶湖(滋賀県)などで目撃されるようになった。名古屋城(名古屋市)の外堀では2009年以降、2匹が見つかり、市が何度も捕獲に挑んでいるが、成功していない。

 近年は東日本以西の広範囲で発見が相次ぐ。兵庫県内では加古川、三木、神戸市のため池で、水を抜いた際に捕獲されている。

 環境省によると、20年ほど前に東南アジアで養殖が可能になり、日本でも観賞用で安く取引されるようになったという。だが、思った以上に巨大化し、飼育に困って放流された個体が野生化したとみている。

 今のところ漁業被害の報告はないが、同省は18年春にも、アリゲーターガーを含むガー科を「特定外来生物」に指定し、輸入を原則禁止する方針。現在、飼育している個体は許可を取る必要がある。

 同省外来生物対策室は「幼魚の目撃情報はなく、まだ日本で繁殖はしていないようだ。ただ寿命が長く、1匹でも在来種への影響が大きいため、早めの対策が必要と判断した」とする。

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