3 Lines Summary
- ・若者はGoogleではなくInstagramでレストラン検索
- ・「Quippy」はInstagramに掲載された飲食店を表示
- ・既存の飲食店検索サービスとはお店を探すシーンやアプローチが異なる
ホウドウキョクが主宰する『朝活プロジェクト』は、朝の時間を豊かにする狙いで開催される朝活イベント。本イベントでは、広義に新しいことを始めた方をスタートアップと定義。お話を伺いつつ、会場に集まった方々と共にディスカッションを行う。
11月8日に開催された第1回のテーマは『メディア系サービス特集』。本記事ではイベントレポートをお伝えする。ホウドウキョクが厳選したスタートアップ各社が見据える、今後起こりうる未来の兆しを見つけていただければと思う。
Instagramの投稿情報をもとに、写真からレストランを検索できるスマホアプリ『Quippy』。同サービスを展開する株式会社Rich Table 代表取締役 奥村 慶太氏にご登壇いただいた内容を紹介する。
若者はググらずSNSで検索する
皆さんはレストランをネットで検索する際、どのように調べますか?おそらく、Googleを立ち上げ『表参道、ランチ』といったようにキーワードを2、3入れて検索するかと思います。が、その方法はもう古いです。今日は新しいレストランの検索方法をご紹介します。
あるメディアが、90年〜2000年代生まれの若い人に「どの検索エンジンを最もよく使いますか」という質問をしました。結果はもちろんGoogleがトップだったのですが、2、3番目はTwitterとInstagram。検索エンジンではなくSNSを回答していました。ググらずにSNSで検索する。これは何を意味するのかを私は考えました。
90年〜2000年代生まれの方にとって、インターネットは生まれたときから普及している当たり前のものです。彼らは、Googleの検索結果は「企業がSEO対策をバンバン行った広告でしかない」ということを身にしみて理解しています。だからこそ、よりリアルな情報を求めTwitterやInstagramで検索をするようになったのではないか、と考えました。速報レベルの情報を知りたければTwitterで検索しますし、ネイルやヘアサロン、レストラン、旅行先はInstagramと彼らは使い分けているのです。
ところが、実際にInstagramで検索してみるとある問題点が浮かび上がってきました。例えばレストラン。ハッシュタグで『#ピザ』『#表参道』と検索すると、個人がホームパーティーで出したピザも出てきたり、場所も近かったり遠かったり、と求めている情報が正確に出てきません。そもそもSNSは情報をシェアするためにデザインされていて、検索には向いていないのです。
Instagramに掲載された飲食店を表示する「Quippy」
一方、SNSで何かを検索するという需要はある。このギャップを埋めればいいサービスができるのではと考え、開発したのが『Quippy』です。
Quippyは、アプリを起動すると、現在地や指定した場所から徒歩12分圏内の、Instagramに写真が投稿された飲食店を表示します。ユーザーはお店の写真を選ぶと、Googleで検索結果を表示したり、地図を開いたり、Quippyからお店に電話して予約したり、空き情報を確認することができます。
気に入ったお店は保存でき、近くに着いた時点で再度表示させてお店に向かうことも可能。いままで、ハッシュタグやインスタグラマーのコメントなどからお店を探し、一度Instagramを閉じてGoogleの検索や地図アプリと横断していたのを、Quippyは1つのアプリで済むようにしているのです。
普段のランチに新しい風を。旅行先のディナーをボーダーレスに
QuippyはInstagramから正式にAPIの提供をうけており、ほぼリアルタイムで最新の投稿を表示できます。Instagramには毎日膨大な写真がアップされているので、Quippyはおそらく世界で一番掲載写真数が多いレストラン検索アプリケーションではないかと思います。
写真ベースのレストラン検索は、新たなお店やメニューとの出会いにもつながります。たとえば普段行くお店だと注文するメニューは決まりがちです。でも誰かが投稿した写真を参考にメニューを選べば、新たなメニューとの出会いがあるかもしれません。
Quippyの利用シーンは国内だけではありません。海外旅行でも役立ちます。写真はユニバーサルランゲージですので、レストラン検索サイトの言葉がわからなくとも、写真ベースで情報を検索できます。何かわからなくても「おいしそう」と思えばすぐにお店に向かえる。言葉がわからずとも、写真を見せてオーダーすることも可能です。
2020年に向け日本の政府は旅行客を誘致しており、これからますます観光客は増えるでしょう。もちろん海外から日本に来る人だけでなく、日本から海外に向かう人も同様です。外国への旅行客もまた今後増えるといわれています。世界中の移動が増えることで、Quippyのニーズはさらに高まっていくと考えています。
私たちの目標は、より良い外食体験の提供です。国内外さまざまなレストラン検索サービスが存在しますが、Quippyによって世界中のどこに行っても、同じサービスが受けられることを目指しています。
Q&A
プレゼンを終え、後半は会場も交えたディスカッションや質疑応答が行われた。その一部を紹介する。
Q:マネタイズはどのように考えていますか?
A:将来的には予約システムやモバイルペイメントなどの手数料でマネタイズしていければと考えています。ただ足下ではユーザー数を増やしていくことが先決です。ある程度の知名度やユーザーベースを作り、その上で売り込まなければ飲食店にもメリットを提示できません。マネタイズはその後だと考えています。
Q:Instagramをベースにすることのリスクはどう考えていますか?
A:リスクは2つあると考えています。1つはAPIの継続性です。Instagramが急にAPIを停止したらという懸念ですが、現状可能性は低いと私たちは考えています。
Instagramは15年12月より外部デベロッパーのAPI使用を認可制にしました。同社はこの旨を事前に公表し、16年6月までにAPI利用に関する新レギュレーションに合わせたサービスに修正を求めました。十分な修正期間を外部デベロッパーに与えており、今後も急な変更や停止はないと考えております。Quippyの場合、3月からAPI申請を開始し4月上旬に許諾を得ました。審査は非常に厳しく簡単に許諾を得ることはできません。もし急なAPI停止を将来行うのであれば、これだけ厳しい審査を行う必要は無いと考えています。
2つ目はQuippy独自の資産を構築しづらい点です。Instagramを活用することで既存サービスに比べ容易にデータベースを用意できる一方、写真はInstagramとユーザーに帰属するため弊社側に資産を築くことができません。この点は早い段階から認識しており、画像やユーザー情報など近い将来Quippy自身が資産を形成できるようサービスの充実を図っていく予定です。
Q:既存の飲食店検索サービスとの競合についてはどのように考えていますか?
A:既存サービスとは競合せず、むしろ協業できるシーンもあるのではないかと考えています。既存サービスは、クライアントや遠方からの友人との食事、お祝いの席など、大事なシーンでの事前予約に使うには非常に便利だと思います。一方、Quippyは「お腹がすいたけど何食べようかな」、という予定された行動ではないシーンを想定しています。既存飲食店検索サービスとは、ユーザーがお店を探すシーンやアプローチが異なるため、協業すればより良い体験をユーザーに提供できるはずです。
写真で直接胃袋に訴えかけるQuippy。運営側によって操作された順位ではなく、主体的にレストランを選びたいというニーズは若者に限らず決して少なく無いだろう。明日のランチは、Quippyで見つけた写真から決めてみてはいかがだろうか。見慣れた街がすこしだけ新しく見えるかも知れない。
■Quippy
完全画像特化型のレストラン検索スマホアプリ『Quippy』。Instagramの写真を用いて、ユーザーの現在地周辺のレストランに紐付いた写真を表示。従来の文字情報を主体としたレストラン検索メディアと異なり、直感的に好みの料理を選べる特徴を持つ。
http://www.quippy.me
■株式会社Rich Table
外食の全ての情報を蓄積する会社になるというビジョンのもと、Instagramの写真を使った画像で選ぶレストラン検索アプリ『Quippy』を開発・運営を行っている。
文=小山和之
会場=THE BRIDGE
【特集「朝活プロジェクト」】
第1回 【朝活プロジェクト #01】
第2回 穴場スポットを外国語で紹介・予約・道案内 チャットボット『Bebot』の実力
第3回 【SNS投稿→その場でプリント】『#SnSnap』のマーケティングツールとしての強さ
第4回 若者が飲食店探しに使うのはインスタ!?『Quippy』が生む、新たなレストランとの出会い(この記事)