「忙しいふり」をするのはやめたほうが良い理由
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Inc.:周りの人が皆、常に休みなく働いていると感じたことはありますか?
たとえば、誰かに「最近どう?」と声をかけたら、こんな答えが返ってきませんか?
「バカに忙しいよ」
「もうパンクしそうだ」
「今、とんでもない状態なんだ」
かつて私がマネジメント・コンサルタントをしていた頃、そんな口癖の人と一緒に働いていたことがありました。彼女は文字通り世界一多忙な人でした。少なくとも本人は周囲にそう思われたいと思っていました。
彼女はキーボードを狂ったように朝から晩までたたき続け、ラップトップと書類の束をつかんでオフィスを駆けずり回っていました。彼女が何をしていたのか私にはわかりませんでしたが、少なくとも重要なことをしていたように見えました。
そんな彼女を見て私は思いました、「いったい彼女は今、どんな重要なプロジェクトに取り組んでいるのだろう。」私は彼女ほど忙しくなかったので、自分がどう見えているかちょっと意識することさえありました。
それで競争心の強い人なら誰でもすることを私もしてみました。つまり、忙しいふりをしたのです。
会話の中で、どれだけ自分が働いているか大げさに話しました。日に8時間働いているところを常に10時間と言い、週に60時間を80時間と話しました。ほどなくして、「めちゃくちゃ忙しい」という陳腐な返事をそんなに忙しくない日にまで、するようになっていました。
いったいなぜ私たちはこんなことをするのでしょうか。
「理想的な働き手」の神話
ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、「なぜ週に80時間働いているふりをする人がいるのか」という問いの答えは、「理想的な働き手」の神話にあるようです。
「多くの職業では、仕事に100%身を捧げ、仕事の邪魔になるような私的なことは引き受けず興味も持たない『理想的な働き手』であるべきだという考えが広まっています。」
この期待と連動しているのは、理想的な働き手であることが成功につながるという思い込みです。
「(前略)成功するには、献身的な理想の働き手になる必要があると信じられています。多くの人が週に60時間から80時間働いていて、働く時間帯や出張するかどうかに関してほとんど自分でコントロールできないと報告しています。仕事が人生のすべてにおいて優先されることを期待されていたのです。」
「長時間働くべきだ」と「それが成功につながる」という2つのプレッシャーがあるせいで、社員は自分の労働時間について嘘をつくことになりました。
「我が社のEメールシステムには今、誰がオンラインで誰がそうでないかわかるようになっています。そして、夜中に自分が仕事をしている時間にオンラインになっていない人がいると、いったいあいつは何をやっているんだ、と思うような暗黙のカルチャーがあります。」
私も似たようなシステムの会社で働いたことがあり、このシステムのせいで愚かにも、常に自分は忙しくて重要なことをしているように見せようとしていました。たとえば、若手社員は週末の間ずっとラップトップをつけっぱなしにして実際より何時間も多く働いているかのように見せかけていたのです。
多忙信仰から解脱する方法
前述した「この世で最も多忙な女性」のことを思い出してください。
2年間多忙を極めた挙句、彼女はパフォーマンスが低いせいで解雇されました。どうやら、走り回っていたのは、重要なことをしていたからではなくて、能力が低かったからのようでした。
その知らせをきいたときは、私は恥ずかしながら実はちょっと「やった!」と思ったことを認めます。自分が昇進する可能性が高くなったからです。
この核心にあるのは、人は競争心があるせいで、自分の労働時間を現実より多めに見せているということです。人生のほとんどの場面において、世の中はゼロサム・ゲームだと言われています。自分が成功するには誰かが失敗するしかないのです。
でも、そこに落とし穴があるのです。世の中はゼロサム・ゲームではありません。長時間労働をしたからといって成功するわけでないことは誰もがわかっています。ハーバード・ビジネス・レビューの研究もこれを認め、次のように述べています。
「この研究が示す最も重要なことは、長時間労働は必ずしもクオリティの高い仕事にならないということです。」
読者もそれが本当だということはおわかりでしょう。私にはわかります。にもかかわらず誰もが忙しいふりをするゲームをしてしまうのです。何かもっと良いアプローチはないものでしょうか。
今度誰かに「やあ、最近どうだい?」と聞かれたら、「めちゃくちゃ忙しいよ」と言いたくなる衝動と闘いましょう。正直に答えて、常に働いていると他人から思われなくても平気になりましょう。
Here's Why You Should Stop Pretending to Be Busy | Inc.
Alistair Clark(翻訳:春野ユリ)