3 Lines Summary
- ・かつては日本一ウェブサービスに詳しい女子大生がインスタを分析
- ・インフルエンサーは趣味・関心を軸にファンを獲得
- ・「マストドン」はおじさんウケしてるから流行らない
ホウドウキョクの朝活プロジェクトと「渋谷のラジオ」のコラボ番組。今回はインスタグラム分析ツールを提供する株式会社パスチャー代表、カイユリコさんをゲストに、おじさんにはよく分からない「インスタ」の魅力やソーシャルの未来を聞いた。(MC:速水健朗)
日本一ウェブサービスに詳しい女子大生
速水
どういう会社かという話は後回しにして、とてもお若く見えますね。
カイ
今27歳になったところです。
速水
パスチャーを立ち上げる前は、どんなことをされていたんですか?
カイ
20~21歳ぐらいのときに、「日本一ウェブサービスに詳しい女子大生」みたいな売り方で当時流行っていた「オンラインサロン」を始めました。会員数も多くて、当時は国内で一番大きいと言われていました。
速水
それは趣味で始めたんですか?
カイ
そうですね。本当にウェブサービスを調べるのが好きで、小中高は友達もおらず(笑)。もうずっとネットばっかり見てたので、やたら詳しかったんですよ。
速水
小学校のころってネットで何をやってたんです?「前略プロフ」とかですか?
「前略プロフ」とは正式名称「前略プロフィール」の略。かつてガラケー時代に人気を集めたSNSの前進のようなサービス。
カイ
もうなかったかな。いわゆる「テキストサイト」の時代でした。「僕秩。(僕の見た秩序。)」とか「探偵ファイル」とか。
速水
ブログブームよりも前ってこと?僕43歳だけどなんか同世代と喋ってる感覚になりますね。そういうテキストサイトの時代からネットに興味があった?
カイ
はい。ネットでコミュニケーションとる方が楽なんですよね。人と会うのはすごく疲れてしまって。
速水
今日は45分くらい喋るんですけど大丈夫ですよね?(笑)じゃあ小学生時代からインターネットに関心を持って、大学時代にオンラインサロンを始めたんですね?
カイ
もうとにかくウェブサービスに詳しかったので、そういう情報をFacebookとかTwitterで発信してたんです。そしたらたくさん「いいね」とか「ファボ」とか、反響が貰えるのが楽しくて。そのうち、もっと重めのコンテンツをやってみたらと言う話になって、有料メルマガを始めたら300~400人も集まったのでバイト代わりになりました。
速水
どういう人たちが集まってきたんですか?
カイ
ネットベンチャーの経営者が多かったですね。そこでいろんなウェブサービスやマーケティングのTIPSを配信してたら、コンサルみたいな事をすることが増えてきたんです。でも、自分では何をした経験もないのに、外から色々言うのはイヤだなっていう気持ちが強くなって、それで大学4年のときに海外で起業しました。
人生初の起業はシンガポールとフィリピンで
速水
それはすごい、いきなり海外に行っちゃったんですね。どちらの国ですか?
カイ
シンガポールとフィリピンでEコマースをやりました。ルミネとか109に入ってるようなギャル系のファッションって、ワンシーズン落ちたらもう売れないんですよ。かと言ってブランドイメージもあるから安売りする訳にもいかない。そこで、海外で何が売れるのかマーケティングデータを取ろうということで、定価の1%弱ぐらいで買い取って向こうで売るという事業をしていました。
速水
でもこの事業は失敗しちゃうんですよね?
カイ
向こうの国って、平均年齢が23歳と若くて、インターネット人口もすごい勢いで増えていたので、これからくる市場だなと思っていたんですが、サイト上では全然売れなかったんです。インスタグラムで商品を紹介したら、実際にどこかで会って現金で買うんです。オフラインで売れても、ウェブじゃ売れない。
ウェブマーケティングが効かないっていうのは、私の唯一のコミュニケーションツールが断たれたようなものでした。ネットでモノを買う「文化」が成長するまでには、まだ2~30年ぐらいかかりそうだと実感したんですよね。
速水
今ちょっと、インスタグラムの話が出てきましたけど、これが今経営しているパスチャーを立ち上げる経緯に繋がるんですか?
カイ
そうですね。東南アジアで事業をやってるときは、マーケットプレイスや自社ECサイト、Facebook、インスタグラムで売っていたんですが、インスタが一番購買につながったので、セールスチャネルとして機能するという実感を持っていたんです。
事業をたたんで去年2月に帰ってきたんですが、そのタイミングではまだ国内でインスタを使った販促や広告はなかったので、もう一回やり直したいというか勝負したいなって思って、6月に今の会社を立ち上げました。
インスタグラム分析ツール「PONY」とは?
速水
インスタグラム分析ツールとは、具体的にはどのようなサービスなのですか?
カイ
はい、「PONY(ポニー)」という分析ツールを無料で提供しています。これは国内で一番普及しているツールで、2,500社くらいが使っています。今、国内の企業は2万社ぐらいがインスタグラムのアカウントを運営しているんですが、どうやってフォロワーを増やすかとか、どんなクリエイティブがいいのかとか、まだみんな手探りな状態なんです。そこをフォローアップしています。
カイ
「PONY」では、アカウントの現状把握がメインですが、別途、詳細なレポートも販売しています。例えば「#japantravel」というハッシュタグは、訪日の観光客がよく使うんですけど、画像解析技術も使って分析すると、たとえば3割くらいの人が神社・寺社をアップしていたり、桜をアップしていたり、何を目的にどんな行動をしているかが見えてくるんですよね。そういうレポートを出したりしています。
速水
ちなみに、今運営されているアカウントの特徴を分析するときはどういう項目に分けて調べていますか?
カイ
うちの会社で設けている指標は、「影響力」「潜在影響力」「成長力」「運用力」「拡散力」の5つです。
速水
「影響力」と「拡散力」はどう違うんですか。
カイ
「影響力」はすでにもっているフォロワーのことです。「拡散力」は、フォロワーの外まで広まる力だったり、フォロワーの外からの反応ですね。
「成長力」は、どういうペースで成長しているか。競合する人たちと比べたりします。「潜在影響力」は、フォロワーのさらにその先にいるフォロワーの影響力などです。フォロワーに影響力のある人がいると、情報がその人に行けば拡散する可能性があるとか、そういうイメージですね。
インフルエンサーの定義とは?
甲斐
パスチャーではもう一つ、「ROOSTER」というインスタグラムの「インフルエンサー」検索ツールを提供してます。
今まではインフルエンサーをキャスティングしたり、商品プロモーションを頼む時は、代理店が何社も入ってマージンも乗ってブラクボックス化してて、それが凄く嫌だったんです。そこで「インフルエンサー」のデータベースを公開して「この人はいくらぐらいで、こういう投稿ができます」という情報を全部見せるようなツールを作りました。
速水
今「インフルエンサー」っていう言葉が出ましたけど、さっそく秋元康が曲のタイトルに使ってますね。逆に言えば「インフルエンサー」って、そのぐらいメジャーになりつつあるんですが、具体的にどういう人達のことを呼ぶんでしょう?
甲斐
SNS上で大きな影響力を持っている人のことです。書籍などによって定義も異なるんですけど、だいたいフォロワーが数万人以上いるような人たちですね。
速水
これは、タレントやモデルではない人たちもいるんですか?
甲斐
ほとんどが、そうではない人たちです。タレントやモデルのフォロワーって、その人のライフスタイルに興味があると思うんですけど、インフルエンサーは「この人のファッションのテイストが好き」とか、「この人が作る料理が好き」みたいに、趣味に関心があるファンが繋がっているんですよ。芸能人がコスメをおすすめるより、ファッション業界で有名な人がおすすめした方が、フォロワーが影響を受けやすいので「インフルエンサー」と呼ばれているんだと思います。
速水
僕のような人にとってのインフルエンサーを例えるなら、「この人が教えてくれるニュースは信用できる」というイメージですかね。
「マストドン」が流行らない理由はオジサンに流行っているから
速水
カイさんは、インスタグラムに特化したサービスを提供しているわけですが、他のWebサービスやソーシャルで気になっているものはあります?
甲斐
それは…この台本に書いてある「マストドン」について話すということですね(笑)。逆にどう思います?
速水
僕は、新しいものが始まると取れるうちに自分の名前のアカウントを取っておこうとするんですけど、マストドンは話題が先行し過ぎているし、「昔のパソコン通信が帰ってきたような盛り上がり方」っていうのは、ちょっとついていけないと感じています。
カイ
私の中には「2大流行らない法則」みたいなものがあります。
1つ目は、技術とか思想が入口になっているサービス。
マストドンだと、分散型のネットワークでインスタンスを立ち上げられる…とかって別に利用するユーザーには関係ないですよね。ちょっと前に、Bluetooth通信で簡単にテキストメッセージがやり取りできるツールがありましたが、単純にスタンプが可愛くって使いやすいLINEの方が圧倒的に広まっています。
2つ目は、おじさんから流行るサービスって流行らない。
最近Instagram向けの画像加工ツールで「Prisma」と言うアプリが流行ったんですけど、ああいうものも、おじさんから流行ると、もう若者は真似しないんですよね。
速水
マストドンに食いついているのってみんなおじさんなんですよね。僕のFacebookはマストドン情報で埋まっているんですけど、みんな技術論。僕は昔「アスキー」っていうコンピューター系の雑誌をやっていた人間なので、話題先行で盛り上がらないサービスをいっぱい見てきました。
カイ
インスタグラムって、逆におじさんが入ってきづらいんですよ。投稿するものがないし、おじさんの自撮りとか誰も見たくないでしょう。
速水
ちょっと言い過ぎじゃないですか(笑)。実際そうですけど。若い世代にとってみると、先行世代がわんさかいるツールって使いづらいんでしょうね。Facebookでも、上司から友達申請が来たらどうしようという問題があります。無視もできないけど、おじさんのウンチクを語られても困る、みたいな結果「ミュート」が流行る。
これから流行るのは「動画映え」するインフルエンサー
速水
マストドンに関しては分析していただきましたけど、他に これから流行りそうな、おじさんでも使えそうなサービスってありますか?
カイ
え~~、これから流行りそうというか、もう流行っていますけど「SHOWROOM」みたいなライブ動画の配信には注目しています。
速水
「Ustream」みたいなことですか?
カイ
それよりもっとカジュアルで、「投げ銭」ができるんです。アイドルとかが自分でチャンネルを持ってファンとコミュニケーションしたりするようになれば、もっと流行ると思います。
中国の「Weibo」がまさにそういう感じになっていて、中国では「インフルエンサー」を、KOL=Key Opinon Leaderと言うんですが、そういう人たちが大きなお金を稼ぐようになっているんですね。美女がただ食事しているのを垂れ流しているだけだったりするんですけど。
YouTubeは再生回数に応じてお金が出たり、企業からのタイアップ広告があるぐらいだったのが、「投げ銭」と言う形でエンドユーザーから直接の課金のルートができたっていうのはすごく面白いと思っています。
速水
これは中国の話ですけど、日本でもそういう事が起きる可能性はありますか?
カイ
「来る」と思っています。それに伴ってインフルエンサーの中でも、すごく見た目のよい、「動画映え」する人が生き残ってくるんだろうなと思っています。
速水
それはインスタグラムの延長線上で起こっていく可能性が高いんでしょうか?
カイ
それもあるでしょうし、何らかの別のプラットフォームに行く可能性もあるのかなと思っています。
速水
そこはまだ未来なので分からないけれど、そこを予測するのも仕事のうちということですか?
カイ
そうですね、それで変わった時にはしっかりついていく形にする。
速水
その中におじさんは?(笑)
カイ
最初は入ってこない形で(笑)。
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