ここ最近、低価格が売りのとんかつチェーンが人気を集めている。
価格は定番のロースかつ定食が600円から700円程度、かつ丼がワンコインといったところ。ロースかつ定食などは、専門店やファミレスで食べれば1500円前後はするから半値以下だ。食事どきには、都心の店舗はスーツ姿のサラリーマンで満席。ボリューム満点でお手頃価格で食べられるとなれば、人気なのも納得だ。
その先駆けとなったのは、現在、国内に300店以上を展開する「かつや」。1998年、神奈川県相模原市に1号店をオープンさせると、瞬く間に店舗数を増やし、海外にまで進出。スーパーの惣菜や持ち帰り専門店でも安いとんかつは買えるが、どうしても帰宅するまでに冷めて、温め直しが必要になってしまう。揚げたてサクサクが安く食べられるというのは画期的だったのだ。
では、どうしてそれほどまでに安くできたのか。B級グルメ探極家の柳生九兵衛氏が解説する。
「基本的に会社の規模が大きく、店舗数も多いので、大量に仕入れ、その分薄利多売で提供できるという構造です。対する『松乃家』(『松のや』表記の店も。以下、松乃家)も『松屋』の『松屋フーズ』が経営していますから、同じく大量仕入れでコストを下げることができる。加えて、松乃家は一部に松屋と共通のメニューがあり、松屋で培ったノウハウやシステムを生かした経営をしています。そのあたりも価格を抑えられる秘密ではないでしょうか」
松乃家の1号店が東京・港区に誕生したのは2008年。かつやより10年後発だが、約9年で店舗数を117まで増やしてきたところを見ると、今の勢いは完全に松乃家といえるだろう。売上高を比較しても、松屋フーズのほうが圧倒的に上。松乃家がかつやを抜く日もそう遠くない?