【動画】横須賀基地を出航した海上自衛隊の護衛艦「いずも」=野津賢治撮影
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 安全保障関連法に基づき、平時から自衛隊が米軍の艦船などを守る「武器等防護」の初任務を稲田朋美防衛相から命じられた海上自衛隊の護衛艦「いずも」が1日午前、海自横須賀基地(神奈川県横須賀市)を出港した。政府関係者によると、房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流し、四国沖までこの補給艦を守りながら一緒に航行する計画とされる。

 補給艦はその後、日本近海で北朝鮮による弾道ミサイル発射への警戒や情報収集などをしている米艦船に燃料などを補給する見通し。日本海に展開中の米原子力空母カールビンソンの艦隊に補給する可能性もあるという。

 一方のいずもは四国沖で補給艦と離れた後、護衛艦「さざなみ」(海自呉基地所属)と合流。2隻の護衛艦は15日にシンガポールで開催される国際観艦式に参加するという。

 「武器等防護」は2015年に成立した安保関連法のうち、自衛隊法が改正されて定められた。今回の実施は、国家安全保障会議(NSC)での審議を経て防衛相が決めた。平時や武力攻撃を受けたとまでは言えない「グレーゾーン事態」が対象のため、集団的自衛権を行使する際の「新3要件」は適用されない。米軍からのニーズが高かった任務で、防護のために自衛官は必要最小限の範囲で武器を使える。安保法制に基づく自衛隊の任務が本格化することになる。

 いずもが出港した横須賀基地の近くでは、市民団体のメンバー約10人が「米艦防護は専守防衛をやぶるもの」などとプラカードを掲げて抗議。「ヨコスカ平和船団」の新倉裕史さん(69)は「北朝鮮をめぐる危機に対し、米軍だけでなく、自衛隊も一緒に実動することをアピールする政治ショーだ」と話した。(土居貴輝、前田基行)

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 〈武器等防護〉 自衛隊法95条の2は、平時、あるいは武力攻撃を受けたとまでは言えない「グレーゾーン事態」で、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動」に関わっている米軍などの武器や設備などを防護するため、自衛官が「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」で武器を使えると定める。北朝鮮による弾道ミサイル発射を警戒している米海軍のイージス艦▽放置すると日本が攻撃されるおそれのある「重要影響事態」における後方支援活動▽日米共同訓練――などが想定されている。

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