遺産相続のための7つの期限と遺産相続全体の流れの総まとめ
ご両親が亡くなって葬儀を済ませると、四十九日の法要を待たず相続手続きを開始する必要があります。
気持ちの整理も大切ですが、相続にはいくつか期限がありトラブルやリスクをともなうため、早めにご対応をされることをオススメします。
また、相続の際にいろいろなトラブルが発生する可能性もあり、相続をされる皆さんが近所に住んでおりいつでも集まれるようでしたら良いのですが、遠方の方がいらっしゃる場合には、葬儀の直後でもお話を
進め、集まれるときにしっかりと協議をされることをオススメします。
協議をする際には。いろいろな期限を意識して話し合いをしていただく必要があります。
本内容を参考にして、遺産相続の全体を知るとともにぜひ期限を守ってリスクのない相続を進めてください。
1.遺産相続を考える際に気にすべき5つの期限とそのリスク
ご両親が亡くなられて遺産相続の手続きを進める場合には、まずは四十九日の法要を目安にして、「遺言の有無の確認」「相続財産の把握」「相続人の確定」の3つが必要です。この3つが整わないと遺産相続の手続きが進んでいきませんので、急いで始めましょう。
なお、遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認の手続きが必要であったり、公証役場へ確認にいく必要がありますので、早めの財産の把握が大切です。
1-1.3ヶ月以内に「相続放棄・限定承認」の判断を
相続財産の把握ができると、ご両親の財産はプラスの財産(現金や土地など)が多いか、マイナスの財産(借金やローンなど)が多いかを知ることができます。もし、借金など負債を多く抱えられていた場合には、「相続放棄」の手続きをおこない、全ての財産の相続を放棄することができます。一方で、相続で得ることができるプラスの財産でマイナスの財産を弁済して、プラスの財産を越えた借金や債務は、弁済する必要がないという「限定承認」の相続も可能です。いずれも3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きが必要なため財産の把握と相続放棄または限定承認の判断を、まずは3ヶ月以内に必ず実施しましょう。
この期日を守らないリスクは、多くの借金を背負うことになる可能性があることです。
もし、どうしても3ヶ月以内に判断ができないときは、期間の延長を家庭裁判所に申し立てます。また、相続放棄は相続人それぞれがおこなう必要があること、放棄をしたら次の相続人へ通知が必要なことなど対応すべき内容が多いため、いずれにしても早期に対応しましょう。
図1:「相続放棄・限定承認」の期限
詳しい内容はこちら⇒「遺産相続の放棄ができる期限は3ヶ月!相続放棄の手順と期限切れ対応」
1-2.4ヶ月以内に「亡くなった方の所得税の確定申告」を
亡くなった方の今年の収入に対しては翌年確定申告をするものですが、亡くなった年に限り亡くなってから4ヶ月以内に「その年の1月1日から亡くなった日まで」の所得税の確定申告をおこないます。相続人の方が代理でおこなうことになります。これを「準確定申告」といいます。
この期日を守らないリスクは、手続きが遅れた場合には、無申告税・加算税・延滞税のペナルティが
発生します。
図2:「亡くなった方の収入の確定申告」の期限
1-3.10ヶ月以内に「相続税の申告・納税」を
相続税の申告および納税の対象となる場合には、必ず申告と納税の両方ともを亡くなったことを知った日から10ヶ月以内におこなう必要があります。判断基準は、こちらの図のとおりです。相続財産から基礎控除引いて残った財産がある場合には、相続税の申告の対象となります。納税は特例等を適用し残った財産がある場合に必要となります。
図3:相続税の課税対象の判断式
この期日を守らないリスクは、手続きが遅れた場合には、無申告税・加算税・延滞税のペナルティが発生します。
図4:「相続税の申告・納税」の期限
詳しい内容はこちら⇒「戸建てを持っている方必見!あなたも相続税の課税対象者?!」
1-4.1年以内に「遺留分の請求」を
財産の割合を考える際には「遺留分の相続分」「法定相続分」の2つの言葉がでてきます。ともに民法で決められた相続する財産の割合のことです。「遺留分の相続分」は、遺言があった場合で自分の権利分を
侵害された場合に主張できる権利割合のことで、遺言がある場合のみ利用します。もし遺言があって、「長男に全ての財産を相続させる」など特定の人に偏っている場合については、「遺留分減殺請求」を
おこないます。この期限が1年になります。この期限の1年は、相続があったことを知った日から1年ですが、相続があった日から10年で時効となります。
この期限を守らないリスクは、ご自身が財産をもらえなくなってしまうことです。
図5:「遺留分の請求」の期限
詳しい内容はこちら⇒「知らないと損するかも!?遺産相続における遺留分の権利とは」
1-5.2年以内に「埋葬料・葬祭費の請求手続き」を
健康保険から被保険者が亡くなると埋葬料(健康保険組合)・葬祭費(国民健康保険)として「5万円」が支給されます。その請求は、2年以内におこなう必要があります。
この期限を守らないリスクは、ご家族が埋葬料・葬祭費をもらえないことです。
この埋葬料・葬祭費の請求を忘れる方が多いため、忘れずに早めにおこないましょう。
図6:「埋葬料・葬祭費の請求手続き」の期限
1-6.3年以内に「生命保険の請求手続き」を
生命保険のうち、死亡保険金の請求は亡くなった日から3年以内におこなう必要があります。亡くなった方が加入していた保険会社に請求をしましょう。
この期限を守らないリスクは、ご家族が保険金をもらえないことです。
図7:「生命保険の請求手続き」の期限
1-7.3年以内に「相続税の特例や軽減手続き」を
相続税の申告期限に合わせて一旦相続税を計算して納税をし、後日しっかり話し合って分割をしようと考えていた方は、3年以内に分割協議を終える必要があります。そうしないと、小規模宅地の特例など財産価値の軽減措置が利用できなくなります。適用を受けて相続税を再計算した場合、払いすぎた相続税は還付されます。
この期限を守らなかったリスクは、相続税の財産価値の減額措置を受けられなくなり、相続税の支払い額が多くなってしまうことです。
図8:「相続税の特例や軽減手続き」の期限
2.遺産相続の期限が無いものの取り扱いと注意点
次にあげる内容については、遺産相続をおこなううえでの期限はありません。ただし、遺産相続は亡くなった方の意思を尊重し、お互いを思いやりながら早めに解決することをオススメします。
2-1.遺産分割協議に期限はない
相続税の申告・納税の対象ではない場合には、遺産をどのように分けるか。などの遺産相続の分割協議に期限はありません。亡くなった方の財産の分割などは、期日が無いため、相続人の皆さんで話し合って
決めてください。ただし、分割中に相続人のどなたかが亡くなったりしますと、その子どもが相続人となるため、話が難しくなる場合がありますので早めの対応をオススメします。
2-2.相続登記に期限はない(不動産・車など)
車や不動産などは登記を変えないと差し押さえられて使えなくなる。といったことは一切ありません。登記を変えなくても自由に利用することができます。しかし相続する予定の方が知らない間に別の方が登記をしてしまってトラブルになるケースなど、登記が遅いことで発生するトラブルも多いため、早めの対応をオススメします。
2-3.金融機関口座等の解約・名義変更に期限は無い
亡くなった方の金融機関口座は、死亡届出したタイミングで凍結されます。誰かが勝手に引き出してトラブルになることを防ぐためです。この凍結した口座も凍結のまま置いておくことは可能ですが、知らない間に誰かが名義変更をして解約していたなどのトラブルが発生しないためにも早めの対応をオススメします。
3.亡くなった日から遺産相続完了までの流れと期限
1章・2章でご紹介した遺産相続が完了するまでの知っておきたい期限をまとめました。
3-1.遺産相続全体の流れを知ろう
図9:遺産相続全体の流れにおける期限の総まとめ
4.まとめ
ご家族が亡くなると相続のことよりもまずは気持ちを。。。と
誰もが思いますが、最初の期限は3ヶ月でやってきます。
そして最初の期限が「財産を放棄するかどうか」であり、この時点で亡くなった方の財産をすべて把握する必要があります。
生前から家族の財産を整理しておくことが一番の得策ではありますが、なかなか財産を家族であってもオープンにされない方がほとんどだと思います。残された家族が借金など大変な事態に巻き込まれないため、本来もらえる財産を税金で納めないといけなくならないためにも、期日を把握してしっかり対応をしましょう。
また、ご自身でもこの流れに沿って対応は可能ですが、専門家に依頼してしっかり手続きを終えられることも良いと思います。そんな時は、相続の経験が豊富な税理士に連絡して、依頼をしましょう。