事後報告になってしまうのだが、星野源のライブに落ちた。
でも、落ちて本当に良かったと思ってる。そもそも生まれついての星野源、星野源のカタマリみたいな俺が星野源のライブに行ったところでライブ会場にゴキブリの如く溢れるニセ野源どもに飲み込まれてしまうからだ。
身長170センチ前後体重60キロ前後、男の身体を知るうえでの手本のような中肉中背、刈り上げ前髪ちょっと残しの男どもが何千人と集まる催し物、どこの地獄だよ。どうせ首筋がパンの匂いのするサブカル女連れてるんだろうが、あの場では俺たちはただの付属品。星野源界の頂点に君臨する星野源、フルパワー100%中の100%、星野源中の星野源こと星野源に全部持って行かれる。奴が「ど〜〜も〜〜〜!星野源で〜〜〜す!」と高らかに宣言するたびにしょせんニセモノはニセモノだと、劣化コピーだと言われてるようで頭が割れそうになる。
どうせライブ後に居酒屋でパン女と「あ〜〜最高だったね〜〜、源ちゃん超かっこよかったしかわいかった〜〜」なんて話をするんだろうが、なにが悲しくてそんなことせにゃならんのだ、音楽の話はしてもいい。だが、外見の話はするな、カガミ越しに褒められてるみたいなもんだわ、じゃあ俺でいいだろうが、俺を見ろ俺を褒めてくれ。遠くの塩顔じゃなく、近くの塩顔を。アンデスの塩より伯方の塩じゃろうがい。
貴様らにはこの苦しみは理解できないだろうが、「星野源をやる」というのは生半可な覚悟じゃできないことだ。
『地獄でなぜ悪い』『コウノドリ』『LIFE!~人生に捧げるコント』『逃げるは恥だが役に立つ』転機がどの作品だったかは知らんが、自分の中に確かにあったフワフワとしたものが「ホシノゲン」であると言語化されたその日から、俺は俺であることをやめ星野源になることを誓った。
音楽、本、映画、アニメ、ゲームなどの教養を学び、無茶振りにも応えられる度胸と、屈託のない笑顔、そして異性に嫌われないギリギリのラインの下ネタを身に着けた。俺だって本当はこんなことしたくない。願わくば、石黒賢や柴田恭兵や反町隆史のようなワイルドで色気のある、一言も喋らなくても女のほうから寄ってくるような男でありたかった。テキーラショットで飲み干してえんだ、なにが「ドリンキングダンスw」だよ。
でも駄目だった、顔が体が。圧倒的な色素の薄さ、一重、クセ毛、胃下垂、細胞のひとつひとつが「お前は星野源にしかなれない」とささやいてくる。
ならば、それでもいい。以前も書いたが、隣にいる君が俺に「それ」を望むのなら俺は星野源という悪魔にだって魂を売ろう。『おジャ魔女カーニバル!!』の良さを音楽的観点から語ってやるし、カラオケでは手を思いっきりパーにして歌ってやるさ。
でも君は「千葉雄大くんみたいな顔が好き」と言って俺の元を去っていった。世界はひとつになれない、そのままどこかにいこう。