トロツ キー翻訳研究

(藤井一行主宰 /2007.07.10/2008.06.15更新)               


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 翻 訳出版の責任を問う


 海外の革命家・思想家で、トロツキーほど日本で歪められて紹介された人間はいない であろう。その主な原因は、
日本の共産党をはじめとする左翼が、スターリン支配下のコミンテルンの「指導」のもと で、当否を確かめることもなく、トロツキーをロシア革命の裏切者として喧伝してきたことにある。
 しかし、それだけではない。トロツキー紹介の労をとった研究者・翻訳者たちが、故意にではないにしても、トロツキーの著作を必ずしも的確に日本の読者に つたえなかったという事情もあった。
 戦前の一時期をのぞけば、トロツキー紹介は主として英訳された著作からの重訳です すめられた。しかも、英訳者の翻訳力はトロツキー自身もしばしば嘆いていたように的確ではなかった。驚くことに、そうした欠陥英訳がいまだにそのまま改訳 されることもなく世界で流布している! しかもトロツキー派の出版社自体がそうした事態に無頓着に見える。

 日本では長いことそうした英訳にもとづいて邦訳がすすめられてきた。だが重訳者の 学力も疑わしいものであった。『裏切られた革命』の例をあげれば足りる。

 トロツキーを信奉する者も憎悪する者もそうした不適切な邦訳に依拠してトロツキー を「理解」し、論じていたのである。一時、その状況を克服する試み、つまりロシア語から直接訳すという企画が実現しかかったが、数点が刊行されただけで、 その試みは中断された。

 『裏切られた革命』、『ロシア革命史』、『永続革命論』、『わが生涯』などトロツ キーの主要著作は数々の瑕疵を含む重訳のままであった。

 そこで私自身、それらの主要著作を原書から訳す仕事にとりかかった。と同時にこれまでにロシア語から訳された
  著作についても適否を検討してみた。というのも、眼を通してみて不可解な訳文に遭遇 することが多かったからである。初期ソヴェト政権の言論政策を調べる過程でひもとくことになったトロツキーの『文学と革命』は、その代表的な事例であっ た。ロシア語から訳されたという『トロツキー自伝』(『わが生涯』の題名を変えて刊行したもの)に接したときも同じ印象であった。ロシア語文法を習得して いるかどうか疑われるような訳文が随所に見られた。

 そういう状況のもとで、私は岩波文庫編集部の厚情により『裏切られた革命』や『ロ シア革命史』の翻訳にとりくむことになった。刊行後、それらの私の訳業に非公式に批判が寄せられた。このサイトではそれにたいする私なりの回答を発表して いる。

 『ロシア革命史』の刊行とほぼ同時に、『トロツキー自伝』の瑕疵を克服したと いう『わが生涯』がやはりロシア語からの「新訳」として岩波文庫で刊行された。また、これまで英訳からの重訳しかなかった『永続革命論』もロシア語からの 翻訳として『トロツキー研究』誌に発表された。だがそれらの「新訳」に眼を通した私は、あまりの杜撰さに慨嘆に堪えなかった。

 トロツキーのまともな紹介と研究という課題は依然として残ったままである。
 以下はその報告、いうなれば、<トロツキー翻訳受難物語>である。<客員寄稿>以外は 藤井の執筆。

  追記 (2008.06.15)

   西島栄=森田成也氏は今度 は、光文社古典新訳文庫の訳者として登場した。トロツキーの『レーニン』につづ
いて『永続革命論』。トロツキー研究者としてとうてい見過ごしできない産物である。


 
( 以下、全ファイル2008年6月15日付)

             森田成也氏によるトロツキー翻訳の既 訳酷似度分析 (中 島章利 ) 

     
1 岩波文庫『わが生涯』の
 
     第12章、第13章、
第17章、第23章

    
    2 光文社古典新訳文庫『永続革命論』の部  

   
第6 章 歴史的 段階の飛び越えについて

    エピローグ

 
  付録 4 ロ シアにおける発展の特殊性

   付録 5 永続革命 (『スターリンの偽造学派』より)

    3 光文社古典新訳文庫『レーニン』の部 

        森 田成也訳『永続革命論』(光 文社古典新訳文庫を 吟味する (  藤井一行 )
 
             限 りなく盗用を 疑わせる森田成也氏のトロツキー翻訳             ( 藤井一行 )
                                      ーー既訳超酷似現象をさぐる
             
             1 『わが生涯・上』(岩波文庫)に見られる怪現象
            
            2「破局に向かう日本」(『トロツキー研究』第 35号、2001年、所収 )
           
            3「ロシアにおける発展の特殊性」(光文社古典新訳文庫『永続 革命論』所収、2008年)


                        

            客員寄稿
   
   中島章利「『永 続革 命論』は いかに訳されたか�西 島栄訳『永続革命論』第 1章、第 2章の検討概要� 」
   (2007.10.14)
    
      西島栄訳 『総 括と展望』(2007.10.01)  
  (ト ロツキー研究所Webサイト「トロツキー・ライブラ リー]所載)  (2008年3月削除された)
 
      西島栄訳 『永続革命論』(『ト ロツキー研究』、No.49, Winter 2006、所収;)
   (2007.09.01)
         (ト ロツキー研究所Webサイト「トロツキー・ライブラ リー]所載)  (2008年3月削除された)

   森 田成 也訳『わ が生 涯』(岩 波文庫,  2000年)

  [ 旧タイトル『トロツキー自伝』(高田爾郎訳、筑摩書房)と『わが生涯』(森田成 也訳、岩波文庫)]
    (2007.07.)

      拙訳『ロシア革命史』(岩波文庫) にたいするある覆面批判をめぐって (2007.07.)

  トロスキーを名乗る覆面の主は、『わが生涯』の訳者=森田成也氏(ま たの名は 西島栄)だった!  
     
       参考:上島武  拙訳『ロシア革命史』書評(『ユーラシ ア研 究』No.27, November 2002 )
 
      :中野徹三「日本におけるトロツ キー翻訳・研究について」

    『文学と革命(2007.05.)
   内村剛介訳(現代思潮社) 
   桑野隆訳 (岩波文庫)
  
 
 以下は当面、「翻訳出版の責任」のサ イトでご覧ください。

     
  ブ ルーエの評伝『トロツキー』の邦訳(柘 植書房) への疑問(2004.7.11)

    山 田侑平氏の問題提起:カー『危機の二十年』の邦訳批判(2004.7.11)

  拙 訳『裏切られ た革命(岩波文庫版)への批判をめ ぐって (2004.7.14)

  共産党高級 幹部の奇怪な出典操作(2004.7.04)

  1 党理論委員長・榊利夫氏のトロツキー批判の悲喜劇 
  2 共産党最高部・ 不破哲三氏における幻の出典 

  トロツキー『裏 切られた革命』の邦訳をめぐって (2004.6.19)

    対馬・西田訳『裏切られた革命』(現代思潮社)は、 欠陥商品の見本!
    その底本のEastmanによる英訳にも問題!