【世界ミニナビ】「猿に育てられた少女」とインドの“闇”…捜し続けた親、警察は「助けてほしければカネよこせ」と言ったと訴えた
インド北部の森で発見された裸の少女が、波紋を広げている。
8〜12歳とみられた少女は言葉を全く話せず手も使って歩くなど、当初はサルに育てられたとの憶測が飛び交った。しかし徐々に明らかになってきたのは、腐敗や貧困などインド社会に巣くう闇だ。
サルの一団と
AP通信などは4月はじめ、インド北部ウッタルプラデシュ州の森で今年1月に少女が見つかっていたと報じた。森林管理の担当者が発見したときにはサルのグループと一緒で、衣服を着けてない上に四足歩行し、人間に向かってキーキーとほえるようなしぐさもみせたという。連絡を受けた警察が少女を救い出そうとするとサルが追いかけて襲いかかり、何とか引き離すことができたともいう。
少女は病院に収容されたが、当初は動物のように床から食物を食べ、トイレも使えなかったという。
タイムズ・オブ・インディアが電子版で「サルと生活する少女発見」と報道するなど、事件はインドで大きな注目を集めた。人間の子供がオオカミなど動物に育てられる小説やアニメを引用し、現代版「ジャングルブック」と報じるメディアもあった。
名乗り出た両親
しかし、少女はまもなく人間らしい振る舞いを回復してきた。また診断によって、精神と肉体に障害があることも判明した。
発見されたのは森の奥ではなく道路に近いところだったこともあり、比較的最近、放置されたとみられる。英ガーディアン紙は「家族は面倒を見たくなかったというのが真相だろう」とする人権活動家の見解を報じた。背景には、女児より男児を好む一部風習や、障害を持つ子供に対するインド政府の援助の貧弱さがあると指摘した。
ところが4月なかば、同じウッタルプラデシュ州内の45歳と35歳の夫婦が、「少女は自分たちの10歳の娘だ」と名乗り出た。
英紙インディペンデントなどによると、夫婦は昨年3月、混雑する市場で買い物中、ほんの少し目を離したすきに娘を見失ってしまったとしている。娘は精神的に安定しないところがあるという。
捜索に「金」要求
夫婦は翌日、警察に届け出たが受けつけてもらなかった。仕方なく自分でビラをつくって張り出すなどして捜したが、手がかりを得られず、誘拐されたか亡くなったものと希望を失いかけていたという。
「私たちが警察を訪ねるたびに、『助けてほしければ金をよこせ』と言われた。どの警察官もとりあってくれなかった」
日雇い労働者の父親は英紙デーリー・メールに、あからさまに金銭を要求する警察への怒りを話した。
夫婦は少女の発見を伝える報道を見て自分たちの娘だと確信し、収容されている福祉施設をたずねて面会した。父親は「じっと私を見つめ続けた。それが彼女の普通の反応だ」と話す。
ただ施設側では、面会の際に少女が「父親」に反応しなかったとし、引き渡しには正式な親子関係の確認が必要だとしている。
父親は「娘がどうして森にいたのか、どうやって生きてこれたのかも全くわからない」と話す。少女は7人の子供のうちのひとり。親子関係を証明するDNA検査のためにも、お金が必要だと訴えている。