NNNドキュメント

番組詳細説明（内容）

【見どころ】
２０１６年７月２６日、神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」で１９人の命が奪われた。逮捕された男はかつて、やまゆり園の職員で「障害者が生きているのは無駄だ」とビラをまき、事件を起こす５か月前に手紙をしたため衆議院議長公邸を訪れていた。　
手紙にはこんな言葉が記されていた、「障害者は不幸を作ることしかできません」。
本当にそうだろうか？「それは違う」と私は言いたい。そして知ってもらいたい“世界”がある。　
それは、滋賀県にある重度心身障害者施設「びわこ学園」の日々である。

【内容】
今から13年前のびわこ学園の記録映像が残っている。かつて、田辺が5年に渡り撮影したものだ。
今回、番組ではこの映像をベースに、13年前と変わらずここで暮らしている人々を取材。
離れて暮らす男性を思い続ける女性、目の動き、手の動きでコミュニケーションを取る親子たち。
重度の障害を抱えながらもユーモアを持ちイキイキと日々を送るびわこ学園の人々を姿から“生きる”とは何かを考えたい。また、保護者、学園の職員たちは“やまゆり園事件”をどう受けとめているのか取材する。


「彼と結婚したい」 障害者である前に “一人の女性”でありたい
◇橋村裕子さん（５６）

児童養護施設、国立療養所を経て、２０歳でびわこ学園入所。
記録映像から１３年。橋村さんに「今、言いたいことある？」と尋ねると、「私が何処かへ出掛けると変な顔して見る人がいます。私はそれが嫌です。障害者は外に出たらいけないのですか？わたしは言いたい。わたしたちだって出かけたいし美味しいもの食べたいし、いろんなところに行って遊んだり、買い物したいです」
　昨年秋。橋村さんは、15年前にびわこ学園から大阪の施設に移った“彼”に会うため大阪へ向かった。
橋村さんの左薬指には、彼から貰った二つの指輪が光っている。
　後日、安井さんに会っての感想を聞くと、「もっと話がしたかった」とポツリ。そして夢を語り出す。「今私は一人暮らしをしたい。それが成功したら安井さんを呼んで二人で過ごしたい。そして結婚したい」。
しかし、橋村さんは現実もわかっている。「親が反対しそうな感じがする」とも。

やまゆり園の事件については、「誰でもいいから殺したかったっていう事言っているやつ“あほか”。
障害者だって生きる権利あるんやで　殺したいって言って夜中に殺す　あんた達はバカかって言いたい　何のために職員になっていたの　何の為に社会福祉勉強をしていたの　何考えているんやろう」と話す。


“言葉のない会話”　〜七里さん親子〜
◇七里大輔さん（２５）

　生後間もなく、脊髄性筋萎縮症であるウェルドニッヒ・ホフマン病と診断。生まれてからずっと寝たきりで、人工呼吸器を装着している。会話も不可能。８歳まで病院で治療をしていたが、“医療と生活の充実”を求めてびわこ学園に入所。１３年前、母：のり子さんは「息子と話しがしたい」と希望を語ったが、未だ大輔さんは言葉を発することはできない。しかし、のり子さんは、ここ数年大輔さんとの“会話”を楽しんでいる。
　
母　「母ちゃんと長く話してると、飽きてまうかな?」
大輔　 「（目、パチリ）」
母 「そこで返事するかい！あはは?」

母の質問にYesなら大輔さんが目の玉を動かす。わずかな目の合図でコミュニケーションを取る、七里親子。
かすかなやりとりが、互いを支えている。


“娘なりにコミュニケーションをとっている。知って欲しい” 〜やまゆり事件後の保護者の思い〜
◇桝谷美智子さん（44） と 母：美代子さん（７６）
　　病名：四肢強直性脳性麻痺　

＜母：美代子さんの話＞　
「学園に来た当初娘の発達年齢は6、7ヶ月と言われている。ある日帰ろうとしたら、もの凄く不満そうな顔をしていた。なんでかなと。“着替えて、おむつも替えてほしいの”と聞いたら“そうや”って。一年くらい前から手を握ったり引っ込めたりして、コミュニケーションが取れるようになった。」

　「（やまゆり事件について）一日、立てなかった。障害者を持つ親は自分に重ねてしまった。聞いたところによると、犯人はその場にいた職員さんに“この人はコミュニケーションが取れるのか”と聞いて一人ずつ殺していった。この子たちは、障害でできないことがいっぱいで、理解をすることも難しいですけど、一生懸命伝えようとしながら生きている。それを、みなさんに知って欲しい」


◆びわこ学園とは　　
滋賀県野洲市にある重度心身障害児（者）施設・びわこ学園医療福祉センター野洲　。
1966年、医療と教育の機能を持つ児童福祉施設として、西日本で最初に開設された。
現在、重度の知的障害及び重度の身体的障害が重複している人たち、約130人が暮らしている。