退職金、「一時金より年金受け取りが有利」は本当か? 年金は運用益あるが税・保険料負担も大
公的年金の支給額が今年度引き下げられるなかで、老後を支える役割が増しているのが定年退職金。受け取り方法は企業によるが、まとめて一時金としてもらうか、分割して年金方式で受け取るか、両者を併用するか、選べることも多い。どのように受け取ると有利なのか。退職金にかかる税金や社会保険料の負担に注意が必要だ。
「年金受け取りの条件はここ十数年で厳しくなった」と話すのは富国生命保険の年金数理人、中林宏信氏。年金方式の場合、会社が一定の利率で運用を続けてくれるが、かつて5%台が多かった運用利率は、最近は大手企業でも2%程度が目立つ。終身で受け取れる例は激減し、10~15年の有期型が増えている。
60歳の誕生月以降に受け取ることが多い退職金。図Aは、その受け取り方によって定年後10年間の総収入がどう変わるかをファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏が試算した結果だ。
■額面なら年金式
退職金を2000万円とし、受け取り方法は(1)全額を一時金(2)全額を期間10年の年金(運用利率2%)(3)一時金と10年年金で半額ずつ――という3つの方法から選べると想定。退職金の他に、64歳までは再雇用により働いて給与を、65歳からは公的年金を受け取る(合計額は10年で2850万円)と仮定している。
まず、税などを引く前の額面ベースで見ると、総収入が最も大きいのは、退職金全額を年金で受け取るケース。2位は半額ずつ、3位が全額一時金となる。再雇用収入と公的年金は共通なので、額面を左右するのは会社が退職金で確保してくれる2%の運用収益だ。
全額年金を選ぶと、元本2000万円は運用益により2210万円へ増える。半額を年金とする場合も2100万円になる。マイナス金利の時代、自分で運用して2%の利回りを得られるか自信がない人も多い。額面で見ると年金で受け取るほうが有利に思える。
ところが、図Aの下にあるように、手取り額ベースで見ると、3つの順位は逆転する。トップは全額を一時金で受け取るケースだ。2位は半額ずつ、3位が全額年金となる。税金と社会保険料(国民健康保険料と介護保険料)の負担額に差があるためだ。
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