「君の名は。」「言の葉の庭」の新海誠監督作品の「秒速5センチメートル」観ました。
新品価格 ¥4,059から |
2007年の作品
3つの短編を収録した短編集だけど、全部で一つの話になってます。
- 桜花抄
- コスモナウト
- 秒速5センチメートル
秒速5センチメートルというのはヒロインの明里(あかり)が言うには桜の花びらがおちる速度らしい。
小学6年生の恋から始まって、大人になって再会するまでのゆっくりしたスピードを表してるのだと思う。
このBLOGは今から観る人への配慮は一切しておりませんので、今から観る予定の人はここから下は読まないことをお勧めします。
秒速5センチメートル(全体) 感想
再会はしない。
ゆっくりと意味があるかのように進んだように見える人生だけど、再会はありませんでした。
主人公の貴樹(たかき)君はずっと明里の幻影を追いかけるような、他の女の子と恋愛しても虚しさを消し去れないような人生を送ってしまいました。
ラストシーンの踏切ですれ違えたのに、明里が電車が通り過ぎるまでそこに居てくれなかったのが残念でした。
もう他の男性と結婚が決まっている明里と再会できたところでどうしようもないかもしれないので、会えなくても良かったのかな・・・という気もする。
明里は貴樹君のことは想い出にしてしまったのだろう。
想い出にリアルの生活の場を荒らされたら困るから、それでいいんだろう。
第一話 桜花抄の中で明里のお別れのセリフ「貴樹君はきっと大丈夫だと思う」ってセリフは
「明里は大丈夫ではない」って意味なんだろうなと観ながら思った。
二人の文通がいつ、どちらから終わったのかわからないけど、やめたのは明里の方からのような気がする。
明里の心がどういう状態だったのか、その辺は描かれていないのだけど、きっと寂しくて限界に来たのだろう。
その「寂しい」というのが恋愛的にというだけじゃなく、おそらく明里のいる世界すべてが寂しく耐えられなくなっていたのだと思う。
桜花抄 感想
桜花抄だけでなく3つの短編すべてが静かで、自分の思い出にひたってしまうような作りでした。
主人公たちがずっと、自分たちの気持ちを朗読するような口調で語るのですが、それが自分の恥ずかしい過去を思い出させるような気分になって、少々居心地が悪いような気分にもなりました。
桜花抄は小学6年生の恋の始まりから。
「来年も一緒に桜見れるといいね」と言ってた明里は栃木に引っ越すことになって
離れ離れになってしまい、それは子供でも一生の別れであることをお互いに理解させた。
二人は文通をしていたが、貴樹君も鹿児島へ転校することが決まって、一大決心で東京から栃木へ、明里へ会いに向かう。
ただ、それだけの話なんだけど
「会ったところで何にもならないよ」と観てる方としては思いつつ、「でも会いたいなら仕方ないな」とも思い、「やっぱり会えたらいいな」と思って画面を見続ける。
貴樹君の乗った電車は雪の為遅れに遅れて、明里の住んでる場所の最寄りの駅についたのは夜の11時を過ぎていたが、それでもちゃんと明里は駅で待っていてくれました。
駅舎で二人で明里のつくったおにぎりを一緒に食べて、そして日帰りする予定だったけど帰りの電車が無いため、その辺の小屋で二人は一夜を過ごします。
「明里の家に泊めてもらえばいいのでは?」という気がしたけど、明里の家庭環境は良くわからない。
明里が駅舎で待っててくれてた時は、見てるこちらも「すごく良かった」って思えました。
どうせ貴樹君はUターンして東京に戻って、そして鹿児島に引っ越すのだから、会えたところで何にもならないんだけど、感動的なシーンでした。
やっぱり明里の別れのセリフ「貴樹君は大丈夫」は「私は大丈夫じゃない」って意味だったのだと思う。
精神的に崩れ落ちる前に貴樹君に会えたことはとても良かったと思う。
映画を観ながら「なんで明里は自分の家の最寄りの駅まで貴樹君に来させて、自分はせめて栃木の大きい駅まで迎えに行かないのだろう?」って思ったんだけど、
「栃木に行く」と言ってくれたのは貴樹君の方からだし、明里は会いたい人に会えることも怖くなってたんじゃないかと思う。
そう思えば、駅舎で待ってる時もうつむいて、貴樹君に気づかなかった。
たぶん「とても寂しい」と「とても嬉しい」が入れ混ざって怖くなっていたのだろう。
コスモナウト 感想
貴樹君の高校生時代の話。
貴樹君はどこか遠くを見て、目の前を見てないような人になっていました。
そんな貴樹君に想いをよせる女の子視点の話。
「貴樹君はいつも優しい」と思う花苗
でも貴樹君は「自分を見ていない」と悟り、一人で盛り上がって一人で失恋します。
貴樹君は何もしません。
貴樹君と花苗、一緒に列車に乗せられて種子島に移動をしているロケットを見て
花苗は「太陽系のずっと奥まで行くんだって、何年もかけて」と言います。
なんだか貴樹君の人生を暗喩してるみたいですが
ロケットはどこかにゆっくり到達するでしょうが、貴樹君はどこかに行けるわけではありません。
ずっと明里の姿を追って空回りしてるだけです。
桜花抄の明里のセリフを借りれば「大丈夫じゃなかった」んでしょう。
貴樹君がゆっくり人生を進めてわかったのは「大丈夫ではない」ことなのかもしれない。
秒速5センチメートル 感想
明里は結婚を決めていて、なんだか忙しそうです
貴樹君は恋人と三年間つきあって別れました
貴樹君の恋人からのメールには
私たちはきっと千回もメールをやり取りして、たぶん心は一センチくらいしか近づけませんでした |
と書いてました。
そしていよいよ、貴樹君と明里の再会のシーンです。
すれちがって、振り向いて、電車が通りすぎて、通り過ぎた後には明里はもういない。
そのシーンまでずっと貴樹君が明里の姿をいつも探してしまっていたことが描かれます。
明里はきっと、すぐに大丈夫じゃなくなってたんです、だから貴樹君の姿なんか探さない。
大人になってすれ違っても気づかない。
貴樹君は今はまだ大丈夫じゃなくなってる途中なのかもしれません。
だからたぶん、彼が立ち直るのはずっと先です。
全体感想 その2
もう少し書きたくなったので感想を続けます。
「貴樹君はきっと大丈夫」と言われた方は「大丈夫に決まってるだろ」と思ったかもしれず
「大丈夫じゃない」と思ってた方は、本当に大丈夫じゃなくて、どうしようもなく落ち込む・・・落ち込むというよりは「腐る」という時期をすぎて、再たび生きる。
絶対じゃないけど、再び生きる可能性はある。
大丈夫だったはずの方は致命傷が致命傷だと気づくまでも時間がかかり「俺ダメかもしれない」と思うまでに10数年かかって、ようやく「腐りかけ」の状態になった。
腐った後に「再び生きる」可能性はやっぱりあるけど、これも絶対じゃない。
貴樹君はきっと今からダメになっていくんだと思う。
だからこの映画を観て何を感じたかと言うと
「つまりお互い大丈夫なんかじゃない程の純愛だった」
ってことかな、と。
つまり「そんだけ人を想えて良かったじゃん」
貴樹君が腐って死んでも悔いなし!(きっと彼は復活できる人だと信じます)
ラスト・・・やっぱり明里に振り返って電車が通り過ぎるまでそこに居て欲しかったかなぁ・・・。
でもそこに居てくれても明里はもうふっきってしまってるから、それも貴樹君には絶望なのかもしれないし・・・。
でも最後に気づいて欲しかったような気がする!
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コメント
ハッピーエンドになってないのは残念ですね^^;
残念、現実的だけど残念(>_<) 「小学生でこんなに同級生の女の子好きになる男子いるか?」と考えたらあまり現実的でもないのかもしれないけど残念。