表裏のない端子だけではないUSB Type-C
Macbookやニンテンドースイッチに採用され、給電も通信もディスプレイの表示もできてしまう超汎用的なケーブルとして、今注目されている規格“USB Type-C”。便利なケーブル、端子の規格ではあるのですが、実はかなり複雑な規格になっていることをご存知でしょうか。
■USB Type-Cの意外な事実 1
[USBのタイプで給電力が変わる]
恐らく、多くの人はUSB Type-Cは、USB Standard-AやUSB Micro-B(いわゆるMicroUSB)のように端子に裏表があるわけではなく、どちらを上向きにしても接続できたり、電源ケーブルと同じくらいの電力量を供給できたり、高速でデータ通信ができるという程度の理解だと思います。
しかし、供給電力を実際に数値化してみると
・USB2.0の最大給電能力は5V/500mA。
・USB3.0の最大給電能力は5V/900mA。
・USB Type-Cの最大給電能力は5V/3A。
となっています。
理論上ではUSB Type-CはUSB2.0の6倍、USB3.0の3倍強の給電能力を持っています。ただ、USB Type-Cだからと言っても、必ずしも5V/3Aに対応しているとは限らないのが、USB Type-Cの複雑なところ。
3A対応と謳っていない場合は、56Ωの抵抗を検知し、5V/1.5AのBCモードでの給電になってしまう場合があります。
つまり同じUSB Type-Cであっても、最大給電容量は違ってしまうわけです。
USB Type-Cの給電力は機器側の対応アンペア数にも関わる
■USB Type-Cの意外な事実 2[給電力は接続する機器にも依存]
さらにケーブルを接続する機器側が5V/3Aに対応していない場合もあります。その場合も基本的にはBCモードでの接続となるので、5V/1.5Aでの接続になってしまいます。もちろん、3A対応のケーブルを使っていても、1.5Aまでしか出ないわけです。
これだけでもわかりにくいのですが、さらにUSB Type-Cの機器側の数値は明記していないことも多いので、その機器が実際に3Aなのか1.5Aなのかもわからなくなってしまうと言うことです。
■USB Type-Cの意外な事実 3
[でも、機器が3Aを謳っているなら変換ケーブルでも3A出る]
ということは、USBのタイプによって給電能力に違いが出るとなると、片方がUSB Type-Cだとしても、反対側がUSB Standard-AやUSB Micro-Bの変換ケーブル場合は、USB 2.0もしくはUSB 3.0の給電能力になってしまうのでしょうか?
実はそこについては、変換ケーブルであっても5V/3Aに対応したケーブルがあるので、それの場合はType-C to Type-Cと同様に3Aの給電能力で充電できます。
USBのタイプとは別にある充電規格
■USB Type-Cの意外な事実 4[給電力はアンペアだけでなくボルト数も変化する]
さらにUSBにはUSB Power Delivery(USB PD)と言うものがあり、USBの形状とは別の充電規格があったりします。
これはアンペア数だけではなく、ボルト数をアップすることで、供給電力をアップさせる規格です。規格には、5つのProfileがあり、
Profile1 は最大10W(5V/2A)
Profile2 は最大18W(12V/1.5A)
Profile3 は最大36W(12V/3A)
Profile4 は最大60W(20V/3A)
Profile5 は最大100W(20V/5A)
となります。
MacBook Proの場合は、USB Type-Cの電源アダプターが61W対応なので、Profile4の20V/3Aで、給電ができるようになっています。ニンテンドースイッチの場合は、最大15V/2.6Aの表示があるアダプターを使っているので、こちらもProfile4での充電を利用していると思われます。
しかし、ほとんどの人は、MacBook Proやニンテンドースイッチの給電についてはUSB Type-Cを使っているということはわかっていても、どういった規格でどのくらいの供給電力で充電しているかはわからなかったりするわけです。
このあたりはいちいち調べるのが面倒だったりするので、安全を期するなら、Appleや任天堂の純正品やライセンスをしっかり受けた商品を選ぶ方が良いかも知れません。
急速充電規格は実はこれだけではなく、他にもいろいろ存在します。
■USB Type-Cの意外な事実 5
[ボルト数の変化はUSBのタイプに依存しない]
例えばQuich Chargeであったり、PowerIQであったり、Apple規格であったり。
またQuick Chargeでもクラスがあり、最新のQuick Charge 3.0は、Quick Chargeを使わない機器とくらべて充電速度は約4倍高く、Quick Charge 1.0よりも約2倍の速度で充電できる。
さらにQuick Charge 2.0よりも充電効率が38%も向上しており、Quick Charge 2.0と同等の充電速度ながら、Quick Charge 2.0対応の機器への充電もできるようになっています。
で、機器側としては、USB Type-Cを使っているスマートフォンだとしても、Quick Charge3.0やPowerIQを採用しているモデルの数は少ないので、端子の形状がUSB Type-Cだったとしても、対応していなかったりもします。
先述した通り、急速充電規格とUSBの端子の形状の規格は別モノなので、USB Type-C to Type-Cでなくても、USB Standard-AやUSB Micro-Bとの変換ケーブルでも、高速給電に対応しているものがあったりします。
Xperia XZのUSB Type-C端子。Xperia XZは、Quick Charge 3.0に対応。ウェブサイトとかで確認すれば対応しているかがわかるが、アダプターのようにQuick Chargeに対応していることがすぐにわかるような表記やロゴはない。
通信速度は変換ケーブルやケーブル長に依存
USBの端子の形状の違いで、供給電力量以上に数値が変わるのが、通信速度です。■USB Type-Cの意外な事実 6
[通信速度はUSBのタイプに依存する]
もっとも数値の低いUSB 1.1は最大12Mbpsで、現在もっとも普及しているUSB 2.0は最大480Mbps、USB 3.0は最大5Gbpsとなっています。
USB Type-Cは、USB 3.0と同じ、5Gbpsとなっていますが、実は通信に関してはUSB Type-C Gen1とUSB Type-C Gen2があり、Gen1が5Gbpsで、Gen2は10Gbpsと倍の速度で通信することができるのです。
ちなみに、通信する機器がGen1であるかGen2であるかの表示はほとんどないので、実際にその機器がどの速度で通信できるのかは判断しかねるような状態だったりします。
■USB Type-Cの意外な事実 7
[USBの通信速度は、ケーブル長にも影響する]
また、USBのタイプ毎の通信速度は、最大ケーブル長も決まっていたりします。
USB 2.0の場合は最大5mで、USB 3.0やUSB Type-C Gen1は最大2m、USB Type-C Gen2は最大1mとなっています。
給電能力と通信速度の違いとして、片方がUSB Type-Cだとしても反対側がUSB Standard-AやUSB Micro-Bとなっている変換ケーブルの場合は、通信速度が遅い方に準拠してしまうということです。
つまり片方がUSB 2.0のUSB Standard-AやUSB Micro-Bであれば、480Mbpsしか出ないわけです。
USB Type-Cで最速、最大を目指すなら細かいチェックが必要
ここで一度まとめてみると、USB Type-Cには高速充電、高速通信の機能があるが、供給側、受給側、ケーブルの3つともの能力が対応していないと、USB Type-Cの本領を発揮することができないと言うことです。最大限のパフォーマンスで利用したいのであれば、接続するすべての機器、ケーブルの性能をチェックし、それに対応する機器を使うしかありません。
特にケーブル類は、対応アンペア数の表示を確認せず格安品を買ってしまった場合などは、高速充電、高速通信の恩恵は期待できず、端子の裏表がないことくらいしか利点がなくなってしまうかもしれません。それどころか場合によっては過電流が発生し、充電している機器がショートしてしまうこともありえます。
こんな混沌としているUSB Type-Cですが、もっと普及してくれば、規格の統一がなされる可能性もないわけではないと思います。
なので、「いちいち確認すんのうぜー」と思う人は、しばらくのあいだは「USB Type-C=便利になったUSB程度」に考えておくのが良いかもしれません。