体の皮膚が寒天のようにぷよぷよと柔らかいことから日本では「カンテンダコ」と呼ばれている、この深海に住む巨大タコは、太平洋側の水深200m〜400mに生息しており、オスは小さく30センチどだが、メスは体長4メートル、体重75キロにも及ぶ。
めったに人前に姿を現すことはなく、過去27年で3度しか目撃されていない。だがこの度、ロボット潜水艦によってついにその海で泳ぐ姿を撮影することに成功した。
さらにはクラゲを食べる瞬間もとらえられており、その生態が明らかになりつつあるという。
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A sucker for jellyfish: The unexpected prey of the seven-arm octopus
オスとメスの大きさの差が激しすぎる
オスは、触手の1本を目の下の袋にしまいこんでいることから、英名は「セブンアームオクトパス」という。オスとメスの大きさの差が激しい。オスは30センチほどなのに、メスはなんと4メートルもあり、1つの種における性別による形態の違いという点では、最も極端な事例である。
image credit:mbari
GEOMARヘルムホルツ海洋研究センター(キール)(GEOMAR Helmholtz Centre for Ocean Research Kiel)のヘンク=ヤン・ホビング(Henk-Jan Hoving)氏とモントレー湾水族館研究所(Monterey Bay Aquarium Research Institute)のスティーブ・ハドック(Steve Haddock)氏率いる研究チームが、ロボット潜水艦でカリフォルニア沖のモントレー海底渓谷を調査中に、大きなクラゲを捕まえたカンテンダコに遭遇した。
![0_e0](http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/7/6/76eab874.png)
image credit:mbari
クラゲを食べた後、毒を持つ触手を有効利用している可能性
カンテンダコはその体の大きさを活かして、水かき付きの腕の中に幅30センチはあろうかというクラゲの全身をつかんだ。
それからクチバシでクラゲの”傘”を食いちぎり、栄養のある中身を貪ろうとした。この時点でクラゲは死んでいるが、傘と房状の飾りの部分は無傷である。
どういうわけか、食事が済んだ後もクラゲを手放すことはなかった。この行動について、専門家は防衛行動あるいは他の餌を捕らえるためではないかと推測する。クラゲの触手の毒がまだ生きているからだ。
以前からタコの知能が高いことが数々の研究からわかっている。タコのゲノムは人間とほぼ同じ大きさであり、しかもタンパク質遺伝子は33000個とヒトの25000個よりも多いという研究結果も報告されており、タコがクラゲを道具として利用している可能性は高そうだ。
image credit:mbari
栄養価の低いゼラチン質の獲物でも重要なエネルギー源
この成果の後、カンテンダコの標本からゼラチン質の海洋生物らしきものが確認された。裏付けをとるために、トロール網にかかった5匹の標本の胃の内容物を調査すると、いずれからもゼラチン質の動物プランクトンの痕跡が発見された。また、うち3匹の胃からはクラゲが丸ごと発見。1匹はクダクラゲ、1匹はサルプを含んでいた。
これまでゼラチン質の生物は栄養価に乏しく、海洋生物にとって優れた食力源ではないと考えられてきた。
しかしマンボウ、オサガメ、マグロなどの大型魚もクラゲを食べることを鑑みると、どうやらそれは誤りであるようだ。ホビング氏とハドック氏は、クラゲの体重はかなりのバイオマス(有機性のエネルギー資源)に換算され、したがってカロリーになるのではないかと論じている。
この研究結果は『サイエンティフィックレポート(Scientific Reports)』に掲載された。
via:mbari・nature/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
こう日々深海生物の不思議さ凄さ神秘さを見せつけられるとそのうち「なんていうか申し上げにくいのですが人魚みたいなのいました」とか「UFOもありました」とか「ユーと、ミーはトモダチ―」とか言い出しても…やっぱきついな
2. のらねこ
>クラゲの触手の毒がまだ生きている
↑これがあるなら相応に知能があると推察されるし、生態がいろいろと興味深いね。
3. 匿名処理班
この タコ!!
4. 匿名処理班
目がキモイ…
なんでタコなのに三白眼なんだ
5. 匿名処理班
目が怖すぎる
6. 匿名処理班
人間がクラゲ食べても栄養にならないから
クラゲが大量に出たときはタコに食わせて
育ったタコを食えばいいわけか
7. 匿名処理班
大きさがわかる比較対象が欲しいところ
8.
9. 匿名処理班
>食後のクラゲの触手を武器として利用
武蔵坊弁慶かな?
10. 匿名処理班
クラゲを食べるとコラーゲンが摂取できる。
夏は中華クラゲがウマイのよね。
11. 匿名処理班
カニのハサミで歯間掃除するおじさんみたいな。
12. 匿名処理班
クラゲの95〜99%が水分と塩分なのに栄養化が高いのかねー?
人間なら塩かけたキュウリだけ食ってたら死んじゃうよ
13. 匿名処理班
やっぱりタコとイカはどっかから来た、あるいは太古の支配者なのではないでしょうか。
14. 匿名処理班
触手マスターまじリスペクトw
15. 匿名処理班
クラゲと同じイソギンチャクの刺胞を体内に取り込んで利用するウミウシもいたりする
進化の過程は別として同じような能力を獲得するのがおもしろいな
16. 匿名処理班
単に遭遇する確立が最も高い捕食可能な生物がクラゲなんじゃないかなあ。
17. 匿名処理班
イカ・タコは刺胞動物に弱いイメージがあったけど捕食してるのもいたんだな
18. 匿名処理班
>食後のクラゲの触手を武器として利用
むげにん万次さんかな?
19. 匿名処理班
カロリーベースという考え方自体が深海では通用しない説も
20. 匿名処理班
食べたクラゲの刺胞を再利用する、いわゆる盗刺胞を行なう生物は結構いるけど、これはクラゲの足そのものを持っていて道具として使うわけか。たしかにそれだったら珍しい。
オスがしまいこんでいる腕は、生殖に使う交接腕なのかな?
21. 匿名処理班
どうやって交尾するんだろう
22. 匿名処理班
ウミガメもクラゲを食べる。
23. 匿名処理班
数百年後には「このタコ」が侮辱ではなく、頭の良い人に対しての誉め言葉になったりして。