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超非常識の無能能力者 作者:仮実谷 望
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1話 とあるサラリーマンの変化していく日常

1‐1「とある会社員の普通の日常」

 俺は目が覚めた。

「変な夢をみたなあ、なんだったんだ今の夢?」

 謎の魔術師が現れたと思ったら、今度は謎の金髪少女に加え紫の天使が現れた。
 そして俺が邪神みたいになって無双するとかどういう夢だよ。
 夢ってやつは意味不明なものから楽しい夢があるものまでたくさんあるからなあ。
 と思っている間に時間が過ぎるので俺は気分を切り替えることにした。
 今日がかなりのいい天気であるのがわかった。
 ただ冷える猛烈に冷える。

 これが夏の終わりの秋の始まりを予感させる秋一番と言うのかと自分で新語を考えてみる。

 などと朝からたわいもない独り言を誰もいない一人住まいのアパートで話している。
 ここは最寄り駅まで10分ある家賃6万円ほどのせまい賃貸アパートである。
 俺は独り言を話していた。
 変なやつであることを自負しているが昔からの癖なので直せないでいた。

 俺のアパートは特に壁が薄いわけではないがとりわけ冬は寒いので厚着になる。
 とにかく寒いので暖房をしている。
 俺は人より寒いのが大の苦手だ。

 正直言うと冬は急激に底冷えするし暖房無しだと色々きつい。
 主に光熱費とかが。

 子供のころはみんなは雪降る中雪合戦などで遊んでいるが、俺は1人でこたつの中でゲームをしていた。
 笑っちゃうだろ? 子供は風の子だと言うのに。

 おっと、そろそろ時間が危ないな。
 と言うのも俺の職業はいわゆるふつうのサラリーマンだ。

 別に驚くことではないが最近の就職率が低下している中、俺はよく就職という平凡な人生を選択させられたと言うわけだ。
 特に考えていなかった。
 受けた会社のこともよくわからないので、とにかく働きたいですと志願したら合格した。

 なんとなく働くそんなことしか考えてなかったからな。
 自然に身を任したということなのか、深く考えていないだけだったのかも知れん。

 まあそんなことより時間がない。あと5分で出ないといつもの電車に乗り遅れる。
 俺の家は会社からだいたい電車で1時間ぐらいのとこにあるが、
 駅が混む、しかも駅まで10分と微妙に近いせいあって、油断して乗り遅れることも多い。
 満員電車になるのが億劫だ。あえて時間より遅らして行くのも一つの選択肢なのかもしれない。

 とまあ、こんなことを俺は脳内でしゃべっている間に用意が終わった。
 さあ後は玄関を出るだけだ。つい何か独り言を言いたくなる変な俺は扉の外に向かって一歩――いつも通りかな?

 普通が一番と心にポリシーを抱いている俺はこれが始まりの第一歩なのだとこの時は夢にも思わなかった……


1-2「現実は逃げるが負けである」

 俺はどこまで逃げればいいのかわからない。
 そういう抽象的な命題のほうがまだましなのだと、見に染みるほど感じることになるとは、まさかこの時の俺は微塵にも思わなかった。

―10分前―

 今日も元気に会社に行くぞと意気込みながら駅の方に向かい電車に乗り、長い混雑した乗客の雨あられを喰らい順調に電車から降りて、いつも以上の軽快な歩き方で会社を目指しているところであった。

 そんなときにいつもの曲がり角に来た。
ここを左に曲がりさらに進み、また左に曲がると行ったところで俺の勤める会社がある。
 なんでこんな回り道みたいなことをするのか説明すると、実は左の道は今工事中で道がふさがっていて、会社への最短ルートにたどり着けないのである。
 だから俺はこんな無駄すぎる回り道をすることになったのだ。

 そこでだ、前から気になっていた路地裏の近道がある。
 そのまさに隠れ道と言ってもいい細い大人一人分しか通れない路地裏を通ることにした。

 俺はぼんやりと考え事をするのに最適ないい天気の青空の中、少し薄暗さを感じる隠れ道へと進んで行くのであった――

――俺は少しずつ細い道を進んでいる。ゆっくりとな。
 なんせかろうじて大人一人分しか通れない道だから、少しずつ進まないとスーツが摩れてほころびる。

 しかしそれにしたって狭いな、この道は……これじゃあ進むのが遅いから近道した意味がなくなりそうな……

 せっかくの俺の少ない頭から出した名案が無意味になるかと思っていたら、少し道の幅が広くなっていった。

 これなら行けるぞ! と叫びそうになる自分は無視して俺はできるだけ早足で進もうとしたが、その時事件が発生した。

 たぶん忘れないだろう。
 自分の記憶力にはいささか不安が残るが。

「待ちな!」

 俺はあと少しで会社の道に出るはずだった。
 だがそこで知らない人物に話しかけられた。
 いきなり話しかけられたことにまず驚いたが、もっと驚いたのはその相手が小さい風貌の少年二人組だったことだ。
 まずなぜ話しかけられたのか心あたりもないし、なにか物を落としたわけでもない。

 ならばこんな路地裏であることと言ったら一つしかなかった。
 俺はいつもの倍ぐらいの速さで思考を加速させていたつもりだった。

「やあ初めまして、さっそくで悪いんだけどお金くれないかな? お兄さん」

「すまんなぁ兄ちゃん最近遊んでばかりで足りないんですよ金が。だから恵んでくれるとうれしいですわぁ。万札二枚ほどでいいからマジで頼みますわぁ」

「なっ 冗談じゃない! なんだ君達は学校はどうした! 大人をからかうなんてとんでもない子供だ!」

 しかしなんでこんな年はもいかない少年? (小学6年と中2ぐらいか?)
 がカツアゲまがいなことを……しかーし俺は大人DA! ここであわてないやつが真の大人なのDA! さあてここから上手く切り返すとするKA! などとテンションを少し上げてみる。

「で、君達みたいな子供がこんな馬鹿みたいな犯罪行為をするなんておじさんは悲しいぞ。いったい学校でどんな教育をしているのか……」

 よし! 完 璧 だ!

 自分で言うのも変だが模範的なテストの回答を見ているかのようだ。
 これでこの子供達も大人しく引き下がってくれるだろうと思っていた。

 この時なぜか俺はいつもより頭が回らなかったのか

変な夢を見たせいなのかなと自分に言い訳して見るか――



 ――雲一つない快晴の朝空を見て、俺は自分のこれまでの過去を振り返っていた。
 まず、小学時代俺は虐められていた。だけど俺をかばってくれる女子がいた。
 なので俺はそのような虐めを乗り越えることが出来た。
 中学時代は引っ越して、不慣れな土地で習慣も言葉も微妙に違う世界で俺は仲間を作ることが出来た。
 虐めはあまりなかったのだが、喧嘩はした。気にならない奴らだったが少し注意しただけで俺に牙を向けた。
 そして殴る蹴るの暴行を受けた。最初はやられるばかりだった俺も次第にやり返すようになった。
 そしていつの間にか俺に喧嘩を吹っかけてくる奴らがいなくなったので平和が戻った。

 高校時代はクラスで何故か急に無視されるようになり、俺は学校が怖くなり引きこもりがちになった。
 正確には学校にはちゃんと行っていた。でも家に帰ると自室に引きこもりゲームばかりしていた。
 そこから三年間はたぶんゲームばかりしていただろう。だろうと言うのは何故か正確に思い出せないからである。
 ほんの5年前のことなんだが何故だろう? ゲームばかりしていたので頭がおかしくなったのだろうか?

 そこで俺は現実の世界に引き戻された。中学生Aが話しかけてきた
「で、おにいさん万札二枚ぐらい出す気になった? 普通出すよね、二枚くらいは……そのくらいは持っていてもおかしくないと思うし」

 このとき俺はこの中学生は失礼な奴だなという不快感という気持ちしかなかった。
 人の財布の中身を推定するなんてなんとも失礼じゃないか。
 子供だから仕方ないことだと俺は諦めたように許してしまうが少し腹が立った。
 だから苦手なんだよ子供は身勝手なことをよく言うし。
 俺は子供が嫌いな訳ではない、苦手なんだ考えてみても分かると思うが
 少し子供は俺達大人と違う、本音をズバズバ言う。
 しかもあまり利益を追及せず、やりたいようにやるような傾向があると 俺は考える。

 だから、俺達大人は困惑する、子供の突拍子もない発想力にな。

 そのせいもあって
 俺は子供が苦手なだけでなく子供アレルギー気味になった。

 子供に話しかけられたり、近くにいるだけで蕁麻疹じんましんができる。
 精神的なものらしいと俺は考える。
 さて既に少し発疹が出てきた訳だがどうしたもんか……

「で、どうしたの? おにいさん? さっきから黙って? 考えことなのかな~? つまりやっとお金を恵んでくれるつもりになったのかな?」

「とにかくですな。俺達は金が必要なんですよ。さっそくだが二枚もらいましょか。にいちゃん恨まんといてな」

 子供二人組が何か言っているのが聞こえる。俺はこのとき余裕がなかったので、些細な脅しにも屈服しそうだった。
 俺は悪くないのにだ。俺は悪くないなんでこんな子供なんかに舐められるんだ。

「クソッ!」

 俺の心を踏みにじった、あの時の連中は今でも頭にくる。
 こいつらにそれを重ねてしまうかもしれない。
 なんかあれだ、変に今と関係ない過去のことで頭に血が昇ったことは反省しよう。

 だけど今はこの状況を看破する方法を誰か教えてくれよ……
 俺はちっぽけなプライドなんかごみ焼却場に捨ててしまえばいいのにと内心思っていたが、気弱な性格もあり思わず口走った。

「俺は金を払う気はさらさらない!」

「ふーん……そうくるか、でもね おじさんにはおれたちに逆らえない理由があるんだよねぇ……」

「そうそう、アニキを舐めないほうが身のためでっせえ」

 理由?

 俺が逆らえない理由?それってどういうことだ……
 何か作でもあるのか……? 逃げようと思ったら俺はいつでもダッシュで逃げれるのに……? 中学生と成人の脚力では俺のほうが勝るだろうに

「つ・ま・り……ジャジャーン! これがあんたの弱みの一つだ!」

 えっ!? ただの紙切れ?? まあそれなら別に……って

「好きなもの、隠れ道を探すこと……何? 隠れ道って? 知ってる? 隠れ道って? なあ尾宇野~わかる?」

「俺が知ってるいることではこういう誰にも見つけづらいわかりにくい、道……でしょうかね」

 なんで、俺の趣味をこいつは知っているんだ!? まさか俺のことを今まで監視していたのか!!
 そうだそうに違いない!いったいこいつの目的は何なんだろう?

 でも俺みたいな微妙な男を監視するメリットはないか。
 そんなの変に決まっているし、つまりあの中学生は超能力者の可能性が高いな……


1-3 「子供の超能力者」

 第一印象は普通の一般的中学生ぐらいより背が低く顔つきは少し幼さがあるが、かなり大人を舐めているような表情で人を見るような気がする。
 でも少しだけその印象とは逆に頭が良さそうで、穏やかだがいたずら好きで天使ともとれるし悪魔にもなりそうな。
 そんな想像イメージを持った。
 もう一人の尾宇野とか呼ばれていたやつは何か擦れてるような気がする目付きのあまりよろしくない不良中学生と言ったところか
 さて相手が超能力者というだけでやっかいなのは事実だとしてこいつらの目的はなんだろうか

 まさか金だけとは限らないし普通なら目的があるしなあ?
 とりあえず俺は聞いてみることにした。

「なんで俺がおまえの弱味を知ってるかわかるかな~わかるかな~♪ 教えてあげようかな~……チラッチラッ☆」

「……………………………………………」

「え~~~~~~~~!? 無反応なの!? ちょうはつしたのに??」

 俺は冷静に中学生の話を聞いていた。ちょっと頭が良さそうだと思ったのは気のせいだった。
 そしてこいつはいったいどんな力があるのか予想してみる。
 まず俺の弱みと言うより趣味を相手はなぜか知っていた……

 つまり、あいつは対象の人物から情報を得る、もしくは情報を予知する能力者というのが俺の予想の考えがあの中学生の超能力である。

「だったら……これで決まりかな~……あなたの嫌いなものはわさびに――頭の悪い人か……結構いい性格しているんだ~……」と中学生Aは何故か俺しか知りえない情報を言う。

 いきなりのことなので驚愕の言葉を発した。
「そこまでわかるんだ!?」

「驚いただろ!! やっと驚いたね~……これが俺の能力!! 条件索敵(パラメーターキャッチ)

 思わずどや顔してしまった超能力者こと中学生Aは
 その場でかっこいい? ポーズをとっている。

 しかし妙だ。カツアゲするなら暴行を加えればいいのにそういうそぶりは見せない。
 俺はあの中学生達の目的がカツアゲではなくて
もしかしたら超能力の自慢をしたいのじゃないかと思った。

だから俺はあえて反論はしなかった……中学生Aの話をとりあえず聞くことにした。

1-4「いつの間にか増えていた超能力者」

――「明日はどんな風に走れるかなぁ~ 」――

――「マジ俺なあ昨日紙コップ浮かせたんだってぇ」
「マジで!?」 「マジマジ、オオマジ出しい~」――

――「それで○○○ちゃんを能力科にねぇ……結構厳しいらしいわよ能力科って……」――

――「あーいいなあ俺のクラスは超能力者が半分もいる中で、俺はいまだに超能力無いとか……俺も超能力者になれたらいいのになあ~……まあ帰って寝るとするか」――

――場面は今の今まで中学生Aこと美知(みしる)は俺に自分の能力の概要を話していた。

 まず自分の能力はある対象地点Xを通る人物の情報を得ることが出来て
その対象の情報は趣味や苦手なものなどを手に入れるし、相手のいわゆるパラメーター

つまり相手の力の度合いがだいたい測定出来るらしい。どこまでが真実なのかわかならいが取りあえず話半分で聞いておいた。

「と言う訳だからおにいさん、これで俺の能力の危険性がわかったわけだが。さあてどうするんでしょうかね。このことおにいさんの彼女とか友人に話しちゃおっかなぁ~」

「いいですよ。俺は友人も彼女もいませんし。それに大したことない秘密なんだし喋っちゃって下さいよ」

「えーー―!! おにいさん彼女はともかく友人が一人もいないの? それはちょっとおかしいよね、普通なら」

「別におかしくはないよ……俺は高校に入ってすぐに引きこもりがちになってしまったから、なんて言うかなんとなく家でゲームしたり、漫画読んだりを繰り返したら、高校三年になっていたな。そしてなんとか大学に入ったら対人恐怖症になっちまったよ……たくっ……ろくでもない大学生活だったな。(中退したし……)今考えると俺は普通だけど普通じゃないやつに含まれる側だったな。なんでこんなこと話したんだろうな」

 俺は後悔の念に悩まされた。そしてこれ以上ここにはいられないと思い家の方角に向かって逃げ帰った。

 そして何故かここから俺はあまりよく覚えていないようだ。
 ただいつの間にか俺は家に帰って来ていた。

 さっきカツアゲの中学生達に会ったことは確かに覚えているのに……
 俺は自分のいつもの曖昧な記憶力に対し特に疑問を感じさせない都合のいい頭を便利だと思っていた。
 嫌なことは忘れたほうがいいからな……


1-5 「能力者は快適に暮らせることもある」

 俺が高校に入学する時は世間は超能力者のことはあまり関心が無く、一部の場所では盛んに研究や発展が行われた。
 というのも俺が入学した高校は普通科ではなく超能力特区にある高校だった。
 超能力特区とは、日本でも数が少なく数えるしかない超能力者を育成することに特化した地区だ。
 俺はどうしても当時超能力者になりたかったのか、親に学費はアルバイトでほとんど工面するからそこに転入したいと希望した。
 母親は「あなたがそうしたいのならそうしなさい。学費は半分はこちらが出しときますから」と言った。

 そして俺の超能力特区にある通称『無限異能都市』場所は俺の住んでいるところからリニアと粒子加速バスを併用しても4時間ぐらいのとこにある。
 そこに行くことになる。俺はバラ色の三年間があると信じて疑わなかった。
 しかし最初に俺は能力開発という独自の学科を受けたのだが、それでも超能力が発現しなかった。
 しかしクラスの連中は半数ほど超能力者になった。しかも俺は無能力者どころではなく否能力者という超能力者として完全に否定をされる烙印を押された。
 それから…………毎日勉強はした。少しは努力したつもりだったが、周囲の能力者達が俺のことをイジメてきた。
 それはいまでも苦い思い出だ……それから――「 」普通の人生を過そうと考えるようになった。
 そして月日は少し過ぎて

 俺はサラリーマンと言う今では珍しい普通の職業に就いたのである。



1-6「要らない能力はたぶんない……はず」

俺の朝は早い。まず顔を洗いに洗面所に行き、トイレも済ます。
 そして朝食作りが始まるのだが、いかんせん料理は少し苦手な部類に入るので、ご飯、味噌汁、昨夜の残り物、納豆ぐらいである。

 突然だが今日は会社の行事の一つで祝日なのに能力測定の日なんだ……
 この能力測定は一言で言ってしまうと、その人本来の超能力を測ることなんだが、実は違うらしく、政府に対して反社会的な超能力者を探すとかあまりにも強い超能力者は政府の管理下に置いて、自由を奪うとか、そういう内部関係の裏事情なのか、ただの噂なのかわからない不確実な情報も小耳に挟むことがあるが、俺にはあまり関係無いことなんだ……

 そりゃ当たり前のことなんだけど、能力者がいるなら無能力者もいる。
 最近はどのメディアも能力者のことをついちょっと前まで取り上げていなかった反動か良く知らないが、連日連夜能力者の取材や能力者を集めた筋肉番付的な番組、ついには超能力者タレントとかいう意味わからん職業まで出てくる始末。
 と に か く、最近の無能力者に対する風当たりはあまりよろしく無い。

 人口当たりの超能力者の数なんてまだ成人以上で0.5パーセント有るか無いかなのに…………

 つまりテレビはつまらないのだ昔に比べて
 ちょっとした流行なのに大げさに取り上げて放送したり、発言を細かく切り取って、必要なところはカットしたりして重要な発言を放送しない。

 こんなことばかりしているから年々テレビの視聴率が下がるのも納得する。
 そして長々と愚痴を浮かべてしまって少し頭が疲れてしまったが、俺はそろそろその能力測定に行かないといけない。

 時間は指定されてないが、測定は体力測定やESPカードを使ったり、よくわからん試験もあって3時間ぐらいかかるからできるだけ急いで行くしかない。
 俺はカロリルメイツを片手にまたいつも通り能力測定もとい検査に向かった……

――着いた……ここだ。
 いつ見てもここはにぎやかだと感じさせるほどだ
 まるでアミューズメント施設のようだといつも思う。
 たくさんの人がごった返しになることが当たり前な場所だ。

 何せ測定は政府公認の場所でしか受けられないし、そんな場所は限られることにもなるので、一ヶ所に集中する訳である。
 俺は今整理券を貰い順番待ちをしている。
 番号は、ええと……
 126番!? 前回は60番台だったのに、来るのが遅かったか。
 やはり一年に一回の測定なので、みんな考えることは一緒か。
 そして俺はここに描くのも馬鹿らしいほど怠惰な時間を過ごした――


――そして時刻はあれから3時間、もう帰っていいですか? と聞きたくなるほど憂鬱な気分になっていた。
 ん? 建物に入った時に貰った紙には測定振替日があると書いていた。

 これは誤算だった、今日必ず受けなくても良かったようだ。
 だから前に並んでいた人がぞろぞろ帰っていったのか。
 さて帰りたいのはやまやまだが、さすがに3時間はもう戻ってこないし
 まあとりあえず受けて帰るか――

――測定をし終わったのだが、何故か別室に呼ばれた。勘弁してくれよ今昼の2時回った所だぞ、俺は帰りにどこかでラーメンでも食おうと思ってたのに、さっさと測定とやらを終わらしてくれ! と思いながら俺は別室の扉を開けた。

 そこには初老の男が面接官のように座っていた。
 こいつが測定官の一人かな? と思い俺は正面の椅子に腰掛けた。

「あなたが最後の測定官ですか?」とりあえず俺は質問してみた。どうせ最後にちょっと会話して終わりなんだろ?

「…………あっ…………えーーと、どちらさんじゃったかなぁ…………?」

「…………………………」

 あまりにも予想外の返答に俺は言葉を失った。
 まだボケるには早い年齢だろうが、どうみても60代ぐらいにしか見えないぞこの男性は。

「いえ、あのですね、私はここに、能力測定に来ていて、最後に別室に呼ばれたんです!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ……そうじゃったそうじゃった。確かに儂はここの測定官じゃったか。……いやぁすっかり忘れておった」と悪びれた様子も無く俺に返答した。

「すまんのぅ~若いの」

 どうやら最後の測定官であるらしい。いちおう信じることにした。つうか思い出すの遅いから!

「それで、最後にどのような測定をするのでしょうか? もう測定は終わったと思っていたのですが?」

「いやいや測定ならもう終わっとるわい。ただなぁ……ちょいっと儂の質問に答えて欲しいだけなんじゃがのぉ…………」

 というわけで、俺はちょいっと質問に答えた。
 内容は好きなものは有るか、嫌いなものは無いのか、やおぬしの性格を漢字一文字で表すとなんだとか、完全に年寄り趣味のあるものまであった……

 そして最後に

「ふむ……おぬしがどのような人物かほんのちょっとわかった気がする……」

 そりゃ初めて会ったばかりだしなと考えていると、爺さんがとんでもないことを口にする。

「実はな今回測定した結果…………おぬしが超能力者になっていることがわかったのじゃ!!」

「なんだってええええ!?」

 かなり驚いたが俺はすぐさま思考を切り替えて、今一番聞きたいことを聞いた。

「そ、それで、俺の能力はいったいど、ど、どんな能力何ですか?」

 思わずどもるが、俺は内心凄くわくわくしている。

 これで世間は俺を認めてくれるぞと自信を張れる。
 恐いことに怯えなくてすむし、電話の勧誘も断れるし、もう何も恐れるものはない。

「おぬしの能力はなぁ……ふむぅ……これ本当に超能力に入るんかのぉ……」

 初めはみんな弱い能力なのは俺でも知っている。
 確かサイコキネシスの超能力者でも最初は小石一個を少し宙に浮かせるのがやっとだと聞いたし、俺のもそういうことなんだろうとこのときは思っていた。
 さあ、速く俺の能力を教えてくれ!

「もったいぶらないで教えて下さい! 私の能力を一言で言うと、どんな能力何ですか?」

「おぬしの能力を一言で言うならば……………………『逃げること』かのぉ…………」



 ん? 今この爺はなんて言ったんだ??
 俺の聞き違いじゃないかな、だって『逃げること』って……
 それ超能力……じゃ……ないだろ…………

 俺は心と体にまっさらな白い穴が空いたような心情になった。
 その穴は無限に繋がっていて、どこまでもどこまでも無情なる白の穴が開いているように見えた。
 だが裏側は黒であり、どこまで行っても黒い穴が空いて表側と裏側にいったりきたりして、外に出られない。
 地獄もぬるまゆに感じるほど穴の開いた空間にいることを想像したら寒気がした。
 コインの裏と表の違いは模様でしかないことと同じように違いなんて無いに等しかった。

 いきなり超能力者になりましたと言われたと思ったら、逃げることが超能力って……
 ある意味俺らしいかもしれないが、そんなのってないよ!! と言いたい。

 つうか普通に考えても超能力じゃなくて特技だろうが!!
 俺は認めないぞ、そんな後ろ向きの能力は、絶対認めないからな!!

――「それで俺、もう帰ってもいいですか?」

「おお、そうじゃったな……もう飯時をとっくに過ぎてしまっておるからのぉ。お主はもう帰っていいぞ」
 良かったやっと帰れる。
 凄く今日は疲れたしな、早く帰ってネットしながら、ゲームでもするか……

「おっと、一つ言い忘れておったわおぬしにこの能力認定証とこの端末いわゆる対戦者捜索装置を渡そう」

「あ、はい、ありがとうございます」

「その対戦者捜索装置はな能力××××に――するために必要での……ただあくまで――は××で……」

「て、あの男もう帰ってしまったのか、儂の話ちゃんと聞いておったのかのぉ……」

1-7「理闇苛」

 大勢の通行人をしり目に自分は無視して道を通ろうとするが、周りの奴らは全部俺を無視して、自分のことをしか考えてない木偶野郎だと俺は思うんだ。
 でもそれは勘違いでみんな他人のことを実は気にしていて、本当は知らない人とでも会って話をしたいと思うし、自分と回路が一緒や近い人と仲良くなりたいと思っているだろうと考える俺は。
 自分のルーツを辿ると思わぬ人にたどり着くことがあると俺は考える。
 世界は無数にある。それがどんな世界なのか俺は知らない。知ろうともしない。
 それを知るには体が無数にないと不可能だ。
 そして世界のうちの一つを選択して、我らはそれを享受する。
 そしてそのまま一本道を進んでいく。
 長い長い一本道だ。
 でもその一本道にはたまに分かれ道があったり、落とし穴があったり、スタート地点に戻されるワープ装置があることもあると思う。
 そして誰かが後ろから歩いてくる、もしくは前から歩いてくる。
 もしかしたら既に見えないけど横にいるのかもしれない。
 俺の共が……愛を受け止めてくれる女の人が……でもそれは実は近くにいるけどみんな見えてないし気づかないのかもしれない。
 そして悪……敵、もいる。それは巧みに我らを騙しにきて、喰い物にして、破壊する全てを。
 それらの存在は偽装して我らに見つからないように隠れるようにして近づいてくる。
 向けられた悪意は……狂った心から生まれて、我らを蝕むウイルスなどの病気を発生させる。
 そして人は……その悪意に負けたとき、人をやめる。
 化け物と呼ばれる。人とは違う何か……狂魔、魔人、人狼……など呼び方は差魔坐真だろう。
 この世界には全てのものの願いを受け入れる場所は存在しない。
 一部の力ある強者だけが栄光を掴める。それがこの世界。
 それが政治家だったり、財閥だったり、…………扉を開いただけあるのは納得だ。
 それがなんの扉かは俺は知らない。まだその扉を見たこともないし、手をつけてもいない。
 それが普通だ。
 人生の頂はまだ誰も見えない。その先があるのかも。
 それでも我らは進み続ける。
 この世の全てを凌駕する。
 でもそれは一人では不可能だ誰しも。
 俺は今一人だ。家族すらも俺は……まだ誰も知りえないから……誰も俺を理解してくれてないから。だから俺は……みんなを信じたい。
 現実はこれが…………なんだろう? 異常なのか、普通なのか、それとももう完全なのか? 我らはまだ知りえない。誰も知らない。それは当然だ。
 それを知っているのは神ぐらいだろう。
 神が存在する証明など神本人しかできないが……
 みなみな繋がり続けないのだ、自分と同じ仲間と共に。
 それが相手の性格とかそれが趣味趣向など一致しなくてもだ。
 想像は稀に現実とシンクロする。稀にだ。そんな頻繁にあったらこの世界が壊れてしまう。
 だからあまりにもありえないことは想像してはいけない。
 もし本当にそうなったら我らは……みな不幸になる。
 だから不幸なる現実は訪れない。不幸や不運なこと出鱈目な基地外なことは考えてはいけない。
 世界は……一つじゃないだからそれでもみんなは夢を持つ。
 夢は良いけど、叶わないとそれは儚いものだ。
 だからみんなあまりにも現実離れした夢は語らない。現実に可能なことぐらいで留めていくのだ。
 それでも不可能だと思われる夢を語る者もいる。しかしそれは悪いことではない。
 夢はあくまでも夢だ。夢なのだから夢をかたるのは自由だ。
 その人の夢を否定してはいけない。
 柵の中我らは生きる。理不尽や非情なる現実を苦悩な感情で乗り越えようとしても乗り越えなれない、奴もいる。
 するとそれらはこの世から消えるものもいるなか、周りの無関係な隣人を一緒に道連れにしようとしする、無情なる凶器となる。狂喜に震えた何かは、我らを消し去られてしまう。これは当たり前のことだ。この世界では……だ。
 だがそれは現在のことではない過去のことだ。
 現在はそれが緩和されて、かなり減少した。
 そのような不穏分子は政府に監視され、事を生じさせる前に、消す。
 そんなディストピアな世界なのだここは。
 しかしそのような我らには理解できない狂気な存在は……そんな不利な状況でも巧みに我らを欺き、牙を向ける。
 そして向けられた、牙を折るには一苦労だ。
 牙を抜いても抜いても生えてくる。その本体を消してしまえばいいだとうと言う奴らもいるが、それは今は許されない。
 かなりの危険な存在以外は経過観察を見て、順次解除するのがこの世界では普通だ。
 なのであまりにもおおっぴらにやらないその牙を持つ獣は飼いならされる。
 そうした方が特になるケースもあるので世界は慎重だ。
 実際利用価値のある存在は生かされるのがこの世の理だ。
 だから我らは無闇な殺生を禁ずる……そんな盟約を約束した彼らと。
 これは契約だ……破ってはいけない。
 その契約が世界に取り決められてから、いくつかの時が流れた……
 そして今がある。我らは分かれたが今結集する。
 そう無数の欲望が支配するこの世界で戦いが巻き起こる。
 それらの戦に巻き込まれる存在たちがいつも彼らなのかもしれない。
 そしてここに一人乱れた乱気流のように中心は空の存在がいるが。
 それはまだ本人も気づいてない。
 その方が本人的にはしあわせだろう。
 なのであえて伝えないことがいいだろう。
 もう長々としたな……誰か気づいてくれよ。
 無限の時の中悠久の時の中で……ある存在は一人、今は一人の存在がほっといて眠りにつく。
 それは誰も彼を気づかないので彼もそれを苦にしなかった。
 彼はいつも孤独だった。彼はもう無理だと諦めそうになった。
 だけど諦めるのはしゃくだから最後まで敵を作らず周りをまきこまないようにしていこうと思っていた。
 なので結果的に彼は、今も一人だ。それはこれからはわからないが今のところ一人だ。
 だれにも話したいけど面を向かって話せるやつはいない。
 それでも彼は気分が優れなくても、一人で生きていくのは無理だ、壊れエル、消えたくない、嫌だ俺は何故生きている??? と考えも考えても考えが消えない。
 そしてかれは 堂々巡りした結果いつもの日常に戻る。
 見えた……これはあれだ、世界は誰にもわからないのだ。
 俺ですら完全に理解してない……のだ。
 暗いチカチカとした空間で彼は窓のような景色が見える何かの装置を動かしていた。
 それは歪な形だった。それでも彼はそれが自分の世界の全てと信じていた。
 そして今日も見続けるそれから通してこの現実を自分と重ねて――――

1-8「反無野」

 点滅する信号機、スピード違反を取り締まるパトカー、ちり紙を配るアルバイトなどを後にして竹男は駅に向かう。
 闇の日暮れが迫ろうとした。ただ光の夜明けも同時に交差する十字を傾けたかのように反面、希望と絶望。
 最弱と最強。醜悪と美麗。竹男は重なり合う運命の絆の糸を手繰り寄せることをしなかったが、相手の方から糸を垂らしてきたのである。
 竹男はその糸を掴むしか選択肢はなかった。彼は戦いに巻き込まれるが、同時に助けをする側、される側の両方を任される。
 いいなれば黙示録のような物語が始まるのであった
















?-?「   」
竹男は混沌とした闇の世界にいた。
その世界は外界から隔離された世界で、全ての意志を飲み込む暗黒の世界だった。
しかしそんな世界に一人でいる、ひとりぼっちだ。それが竹男の罪なのか……
竹男は声にならない悲痛な呻き声をあげていた。

、、、。。。?????×××△△△△ーーー/」@:;!&#('&)+*`{[……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………v………………; ………………………………………………k……………………………………ウj…………………………r……………………:………………………………ン…………………………………………d;……………………………………が………………………………l…………………………木…………………………………………………………や……………………………………………………;お………………………………………………………………タ…………………………………………………………………………………………亜…………………………………………………………………………………………………
誰もその呻き声には耳を貸さない……ここは竹男しかいないから……
そして竹男はほんの少しだけ理性を取り戻してまた声を、この世界の外側に聞こえるように発した。
……………………待てよ……なんで俺がお前みたいなやつに負けるんだよ………… 悔しい…………だけどな ………………それでも俺は……………俺が……………………おまえらを…………………………救う…………ために…………あいつを打ち砕くから…………みんなは安心して欲しいんだ………………………………………だから…………………………まっててくれよ…………………………みんな…………………………俺がそっちに戻るから絶対ここから出てみせるから……………………俺はこの何もない世界から必ず逃げだしてやる………………から……………………必ず戻る!!!みんな!!!いくぜえええええええええええええええええええ…………うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうら――――――――――――――――――う       
ら―――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
その魂の叫びの超連続の威圧的な衝撃がこの世界の壁にひびを入れた瞬間だった。
竹男は世界の理なる闇の荷なる重圧を撥ね退け、世界の不幸な現実を覆して、悲運な運命の鎖を巻かれた者たちの運命を捻じ曲げるかもしれない。
それが竹男の宿命なのかもしれない。
竹男は明日のためにこの世界を不幸に導く純粋な完全に近い存在を倒すためにこの理不尽な世界を乗り越えていくのであった。

?????「やはり………………きたか………………いいだろう、おまえのような存在などわたしが捻り潰してやる……さあどこからでも来るがよい!!!」
「行くぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
 竹男は突っ込む。そして火蓋は切って落とされた。
辺りは光に包まれた。両者激突しあい、誰も両者を止めるものはいなかった。
そして世界はこの二人を残して静止した。
 それでも両者対決をやめない。
 そして先の視えない戦が続いていく。
 のちにこれが世界の運命を左右した、超神魔大戦と記録されたのは言うまでもない。
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