モスクワを訪問した安倍首相がロシアのプーチン大統領と会談し、北方四島での「共同経済活動」や、北朝鮮情勢などについて意見をかわした。

 両首脳の会談は第1次安倍政権時代も含めると17回目だが、米国でトランプ政権が発足してからは初めてだ。

 そのトランプ政権が今月、ロシアが支援するシリアのアサド政権をミサイル攻撃し、米ロ関係は悪化している。

 「トランプ時代」にロシアとの関係をどう描き直すか。米ロ双方の首脳と良好な関係を築いてきた首相にとって、その戦略が問われる第一歩となった。

 日本にとって重要なのは、北朝鮮情勢をめぐり日米韓と中ロの分断をつくらないことだ。

 米ロ両国は北朝鮮のミサイル開発や核兵器保有は認められないという立場では一致するが、米国が北朝鮮に軍事的な圧力を強めていることは、ロシアには自国や地域への脅威と映る。

 立場に違いはあっても、国連安保理常任理事国であり、北朝鮮に一定の影響力をもつロシアの建設的な関与は不可欠だ。

 日本は日米韓の連携を強めつつ、ロシアが積極的に協調行動をとるよう促す必要がある。そして何よりも、北朝鮮の後ろ盾であり、核問題をめぐる6者協議の議長国でもある中国を巻き込むことが欠かせない。

 プーチン大統領は首脳会談後の共同記者発表で「少しでも早く、6者協議を再開させることだ」と語った。

 北朝鮮に対し、米国が軍事攻撃に踏み切れば日韓両国が反撃を受け、甚大な被害を受けかねない。米国が北東アジアで軍事行動に出る事態は、中ロにとっても好ましくない。

 そうした事態を避けるためにも日米韓に中ロをまじえた枠組みで共同歩調をとり、粘り強く打開をはかるしかない。

 北方領土問題では、両首脳は5月にも官民合同の調査団を日本から派遣するほか、6月に航空機による元島民の特別墓参を実施することで合意した。

 これらは昨年末の首脳会談で合意した「共同経済活動」の実現に向けた入り口だ。共同経済活動は両国でかつて何度も検討されながら、立ち消えとなってきた経緯がある。日ロどちらの法律を適用するかという難題があり、隔たりは大きい。

 北方領土問題の解決をめざすには、北東アジアの平和と安定は欠かせない。日ロが北朝鮮問題でいかに共同歩調をとっていけるか。平和条約締結に向けた第一歩としても、地域安定への協調の道筋を描く必要がある。