任天堂が『スーパーマリオブラザーズ』を発売してから30年以上がたつが、またしても興味深い要素が発掘された。同作を遊んだプレイヤーが、聞き覚えのないであろうサウンドを新たに発見したのだ。(映像の24秒から)
4秒という効果音ともBGMともいえない長さのこのサウンド。最後に聞こえる「1UP効果音」はなじみ深い音で、それ以外の部分はどこかで聞いたことがあるような旋律でありながら、ゲームをプレイしている際には聞く機会はない。知っているような知らないような、そんな不思議な魅力のあるサウンドといえる。
映像を投稿したYouTubeユーザーFamicomer氏に話をうかがってみたところ、氏はこのサウンドを偶然発見したという。氏はもともと2Dアクションゲームを愛する任天堂ファンで、『スーパーマリオブラザーズ』や『ロックマン』シリーズのバイナリをいじって遊ぶのを好む少々変わったデータマイナーだ。いつものように愛用エミュレーター「FCEUX」を使って『スーパーマリオブラザーズ』を遊びつつ、バイナリエディタ「HxD」で同作の研究をしていたという。
ある日、氏は効果音を制御する列にある値「0000F0」を見つけ、3列目にあるファンファーレの部分に78と入力、そして隣にあるBGMにかんする値である4列目と5列目の部分の両方に00を入力した。すると一度全ての音がミュートとなり、例のサウンドが流れ始め、「1UPサウンド」を発見したと氏は語っている。
『スーパーマリオブラザーズ』はデータ内部を含めて研究され尽くしたタイトルであるので、このサウンドが新発見と断言するのは難しい。しかし、Famicomer氏は「このサウンドは今まで聞いたことがない音であると感じている」と話す。
面白いのは、今回発掘されたサウンドが、われわれが聞き慣れたキノコ取得時と1UP時の2つの効果音のベースになっているという説が、redditにて提唱されていることだ。実は最後の1UP効果音が聞こえるまでの部分を高速再生すると、マリオがキノコを取得した時に流れる音に酷似している。この研究については、すでに3年前に検証されており、キノコをとったときに聞こえるパワーアップの音が複合的なサウンドによって構成されていることが明らかになっていた。
つまり、今回の説は、実はパワーアップ時の効果音と1UPした際に流れる効果音はもともと“1つのサウンド”であり、かたや切り取られ高速再生することでゲームに使用され、かたや切り取られて1UPの効果音として採用された。その1つのサウンドが、今回発見されたサウンドというわけだ。またFamicomer氏は今回のサウンドはゴールした際の音にも似ているので、なんらかの関連性があるのではないかと指摘する。根拠はないものの、なんらかのつながりを感じさせるのも確かだ。
Famicomer氏を中心に、この「謎のサウンド」の存在を確かめるべく、コミュニティーでは検証が進められている。このサウンドは、32年前の作品の内部データの1つにすぎない。しかし、われわれの知る『スーパーマリオブラザーズ』のサウンドに隠されたルーツがあるというのは、非常に興味深い。この謎が解き明かされなくとも、この世に情熱あるゲーマーがいる限り、あらゆるゲームの研究が終わることはないだろう。
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