在韓米軍は昨日、慶尚北道星州郡の旧ロッテ・スカイ・ホテル・ゴルフ場に米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」に関連する必要な機材を搬入し、設置のための作業を行った。作業が行われたのは深夜から未明にかけてだが、これはTHAAD配備に反対するデモ隊との衝突を避けるためだ。これに対して5月9日に投票が行われる第19代韓国大統領選挙に立候補している進歩(革新)系「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は「THAADの奇襲配備は韓国国民の自決権を押さえ込み、主権を踏みにじる暴挙だ」などと激しく批判した。
THAADはもちろん完全とは言えないが、現時点で北朝鮮の核兵器やミサイルによる攻撃を防ぐのに必要な最低限かつ最善の防衛手段であることは間違いない。しかしTHAADそのものはさほど大掛かりな施設ではない。一般の路線バスサイズのレーダーにミサイル発射台が設置されただけのもので、実際にこれを動かす兵士もせいぜい100人程度。しかも指揮官は大尉だ。ところがどういうわけかこの程度の配備をめぐって国全体がこれほど大騒ぎになっており、しかも大統領への当選が有力視される候補者が「主権」という言葉まで持ち出して必死に反対している。過去に聞いたこともないような異常事態だ。もちろんその理由はただ一つ。「中国が反対しているから」というだけだ。実際に中国外交部(省に相当)は韓国へのTHAAD配備を受け「中国の利益を守るため必要な措置を取るだろう」と激しく反発した。
中国は大韓民国の安全保障をめぐる主権に露骨に介入し、稚拙な報復を今なお本当に行っているが、これに対して韓国の進歩勢力は「主権侵害」という言葉を使って抗議をしたことがあるのだろうか。有事の際には北朝鮮の核兵器やミサイルから韓米両軍の主要施設を守らねばならないが、それこそが最終的かつ本当に韓国の主権を守ることにつながる。ところがその主権を守るためのミサイル配備を主権侵害と言うのは完全に的外れであり、言い過ぎと言わざるを得ない。