CRISPRは、多剤耐性菌に対抗する抗生物質代わりになるか?
病院や養護施設で致命的な感染症を引き起こすクロストリジウム・ディフィシルは、抗生物質が効かない。では、バクテリアの免疫防御システムからヒントを得たCRISPRは、抗生物質代わりになるだろうか? by Emily Mullin2017.04.18
米国では抗生物質が効かないケースが増加している。そこで研究者は、病院や養護施設で致命的な感染症を引き起こすクロストリジウム・ディフィシルのようなバクテリアに対抗する新しい治療法を探している。
治療法のひとつが「クリスパー(CRISPR)ピル」だ。有害なバクテリアを自己破壊するように仕向けるピル(丸薬)だ。
CRISPRは強力な遺伝子編集テクノロジーだ。すでに人間の遺伝子を正確に編集して病気を治すといった治療方法が研究中だ(「個人向けの遺伝子療法はいつ実現し、誰が認可するのか?」参照)。それだけではない。CRISPRの応用可能領域は幅広く、さまざまな用途で研究されている。ちょうど今週も、ボストンの科学者がCRISPRで安価でシンプルな診断検査ができると発表した。
ウィスコンシン大学マディソン校のジャン=ピーター・バン・ピケレン助教授(食品科学)によれば、現在科学者はCRISPRを超精密な抗菌治療へと変え、「死滅させたいバクテリアをピンポイントで殺菌」できるように研究中だという。
「クロストリジウム・ディフィシル」といっても聞き覚えはないが、米国疾病予防管理センター(CDC)が作成した緊急性が高い薬剤耐性菌リストのトップとして掲載されている。2015年のCDCの調査によれば、アメリカ人の500万人近くがクロストリジウム・ディフィシルに感染し、そのうち1万5000人が亡くなったことがわかった。
実際、CRISPRはバクテリア内で見つかった機能のことだ。バクテリアに侵入するウイルス「バクテリオファージ …