ディー・エヌ・エー(DeNA)と横浜市は4月24日、自動運転社会における地域交通の在り方を考える共同プロジェクトをスタートした。取り組みの第1弾として、DeNAが開発中の自動運転バス「Robot Shuttle」(ロボットシャトル)の一般向け試乗イベントを27日と28日の2日間、金沢動物園(横浜市金沢区)内の一部エリアで実施する。
園内での定期運行に向けた検証を行いつつ、自動運転に対する人々の理解を深めるのが狙い。特に横浜市では高齢化やニュータウンの老朽化による交通弱者の増加を見据え、無人運転車やAI(人工知能)の活用によって中長期的な課題解決に取り組むという。
試乗イベントでは、動物園内で指定された片道約180メートルのルートを往復で運行。乗車人数は最大8人とし、乗降案内や緊急時対応などを行うオペレーターが1人同乗するという。走行スピードは「歩くよりも少し速い程度」にとどめる。
ロボットシャトルの仕様は定員12人(着席6人、立席6人)、最大速度は時速40キロ、総重量は約1.7トン。動力はリチウムイオン電池で、最長10時間走行できるという。
車内に運転席はなく、ディスプレイとドアの開閉ボタン、非常用ボタンが設置されている。バスの天井には位置を推定するGPSとレーザーセンサー、車体の四隅には障害物検知用のレーザーセンサーを備える。ベビーカーや車いす用の可動式スロープも搭載している。
園内の走行ルート上に柵などは設置せず、非常時は同乗しているオペレーターが停止させるという。人の飛び出しなどを検知する条件は2段階で設定。間隔を広めに取ったセーフティエリア内に人が立ち入ると減速、さらに2段階目の近さまで近づくと停止するという。
DeNAの中島宏オートモーティブ事業部長は、ルート上の事前調査が非常に重要であると説明する。
「物陰から人が飛び出してくるような場所を調査して、その可能性があるポイントではあらかじめ速度を落とすなど、安全性を最重視している。自動運転は事前調査が非常に重要で、そもそも急ブレーキをかけるような状況を生まないことが重要」(中島部長)
走行するロボットシャトルは、DeNAがこれまでにも千葉県千葉市や秋田県仙北市、神奈川県横須賀市、福岡県福岡市で一般向けに試乗イベントを行ってきた車両と同じもの。
これまでにのべ約2600人の一般人による試乗を行い、総走行距離280キロで事故は1件も起きていないという。中島部長によれば、こういった一般向けの試乗では技術検証よりも利用者からの感想を得ることに比重を置いているという。
「技術的な実験はクローズドで行い、安全が証明されたものだけを外で実験する方針。試乗した人から思わぬニーズを見つけたい」(中島部長)
実際に試乗した一般参加者に取材したところ、次のような感想を話した。「少しガタガタしたが、子どもたちは喜んでいた」(女性)、「音が静かで動物園にはぴったりだと思った」(女性)、「園内ではいいが、公道では静かすぎるのはちょっと怖い」(女性)、「高齢になったので車を手放す予定。自動運転は夢みたいだと思っていたが、本当に快適だった」(男性)。
本プロジェクトは、横浜市が地域のIoT化などの推進を目指して11日に立ち上げたプロジェクト「IoT オープンイノベーション・パートナーズ」の一環でもあるという。中島部長は、新たな地域交通のロールモデルを構築するのが目的であると話す。
「プロジェクトの主旨は地域交通課題の解決。ロボットシャトル開発元の仏EasyMileが提唱しているコンセプトは『横に動くエレベーター』というもの。昔のエレベーターは運転用のオペレーターが同乗していた。今はご存じの通り、誰もいなくても安全な状態になっている。これらと同じように、乗客がドアを開けたり閉めたりできるような状況を段階的に作っていきたい」(中島部長)
DeNAは自動運転車について2017年内に今回のようなプライベートエリアでの実験を行い、18年に実用化を目指す。19年には公道での実証実験、20年には公道での実用化も狙うという。
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