映画のヒットと市場の変化:「ディズニーのブランド力」から公開日: 2017/04/28
シネマの週末・データで読解 「ディズニーのブランド力」 (毎日新聞2017年4月28日 東京夕刊)記事内において、先週末(2017年4月22日)の動員ランキングで、ディズニーの『美女と野獣』が土日2日間で興行収入10億円を超える大ヒットスタートになったことについてとりあげた。
また、ディズニーには柱となる五つのレーベル(『美女と野獣』のウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、『モアナと伝説の海』のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、マーベル・スタジオ、ルーカスフィルム、ピクサー・アニメーション・スタジオ)があり、いずれも興行としても成功し、批評家、鑑賞者からの作品評価も高いことについて触れつつ、その中で、弊社で毎週実施アンケート調査において『アナと雪の女王』(2014年)のころから「ディズニー映画なら観たくなる」人の割合が増えていったことについて触れたが、ここではグラフを交えてより掘り下げ、整理をしていく。
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弊社が毎週実施している「1年に1本以上映画館で映画を観る映画参加者人口に向けたアンケート調査の集計結果(CATSレポート用)」においては、作品の浸透度等以外に、普段の映画鑑賞行動特性や嗜好についても様々な質問をしている。
まずは、週ごと市場アンケート調査で「ディズニー映画であれば、映画館に観に行きたくなる」と答えた人の割合の推移をみた。プロットした作品は、2014年以降に公開され最終興行収入40億以上となったディズニー配給作品のうち、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、ピクサー・アニメーション・スタジオによるものである。
【図1】「ディズニー映画であれば観たくなる」と答える人の割合の推移 |
1年に1本以上映画を観る人の中では「アナ雪」の公開時は27%だったのが、『美女と野獣』の公開時点では34%と7ポイント上昇した。過去3年間で『アナと雪の女王』が大きなターニングポイントとなっていて、減少傾向にある時期もあるものの、長い目で見れば増加傾向にあり、またこの春にも上昇気流に乗っている。
比較のために、「ハリウッド大作をよく観る」と答える人の割合の推移と比較した。
【図2】「ハリウッド大作をよく観る」「ディズニー映画であれば観たくなる」と答える人の割合の推移 |
このように、「ハリウッド大作をよく観る」と思う人の割合は4割強だが、期間中ほとんど変化はない。比較してハリウッドメジャーの一角である「ディズニー」というブランドが持つ力が右肩上がりなのがわかる。
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近年「ジャンル」として大きくなったものといえばアニメ。ディズニーもアニメ作品が多い。その推移を比較すると以下のとおり。作品名がプロットされているのは、2014年以降公開された最終興行収入40億円以上のアニメ作品(ディズニー配給作品を除く)である。
【図3】「ディズニー映画であれば観たくなる」「アニメをよく観る」と答える人の割合の推移 |
アニメ作品のヒット作も多いディズニーももちろん貢献しているが、それ以外にも洋画・邦画のアニメ作品のヒットが折り重なるように、市場が創造されている効果が見られる。
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弊社が毎週実施している「1年に1本以上映画館で映画を観る映画参加者人口に向けたアンケート調査の集計結果(CATSレポート用)」では、作品の浸透度等以外に、普段の映画鑑賞行動特性や嗜好についても様々な質問をしている。
特定のジャンルへの嗜好を持っている人がいるから映画が当たるのか、あるいは映画が当たるから、特定のジャンルへの嗜好を持つ人が出現するのか。「特定のジャンルへの嗜好を持った人の存在」=「市場」と「映画のヒット」、両者は鶏と卵の関係にある。
ディズニーに関して言えば、元々のブランド力が動員を呼び、鑑賞後の評価の高さがブランド力を高め、それが動員を後押しするという好循環が作り出されていると言える。「ジャンル」ではなく、企業ブランドという資産に蓄積されているところがポイントであろう。
また、アニメに関しても、近年上昇傾向にあったところにディズニーアニメはもちろん、『君の名は。』社会現象化、人気アニメシリーズの中には毎年安定した動員を確保しているものも多く、これらの作品が市場を拡大させ、さらにそのまた上にヒットを生み出している様子がうかがえる。
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