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ボクココ

サービス開発を成功させるまでの歩み

SaaS サービスの料金設定の勘所

ども、@kimihom です。

最近は SaaS サービスの料金設定について考えることが多いのでこの辺でまとめてみようと思う。

あらゆる規模に最適化されているか

各 SaaS サービスにはそれぞれターゲットがいる訳だけども、それに見合った顧客だったとしても規模が 3人だったり50人だったりすることはよくある。その中で3人でも50人でも公平に課金がされる仕組みがあるといいと考えている。

これに対する一番簡単な解としては、1人~円と料金設定する方法だ。そうすれば明確に規模の増減に応じて公平に課金が行われる。特にこの方法で問題がない場合は、人数分の課金にするのが素直な方法だ。

ただし、そうはいかないケースがあったりする。例えばその SaaS が多くの人が使われてこそ価値を生むようなサービスの場合だ。その場合に都度料金が上がってしまうようなら、多くの人に使ってもらうようにする仕組みを作ることができない。となると人数以外の部分で課金の仕組みを作るか、10人までは~円、100人までは~円というように段階的な限度を設ける方法などが考えられる。

人数以外の部分で課金の仕組みを作るのはなかなかチャレンジングだ。3人しか使っていない場合と50人も使っている場合とで料金が同じなら、3人の人はそのサービスを使うのが適切ではないのかもしれない。例えばゲストアカウントは無料でいくらでも作れるけど、管理アカウント単位で課金する方法もある。何かしらの条件で人数や規模ごとで公平に課金される仕組みがあると、ユーザーも運営側も納得のいく料金になる確率が高まると思っている。

規模に応じたプランの機能設計ができているか

SaaS サービスの多くがプランを用意しているのは、顧客の規模や用途によってニーズが変わるからだ。

例えば、3人などの小規模ではほとんど必要のないような機能を埋め込んでしまっては、その顧客にとって適切なサービスではなくなってしまっている。その分料金が高くなってしまっているようなら、もっと手軽に使える他のサービスを選ぶことだろう。適切なプラン設計をすれば、サービスのコア機能をベースに幅広い顧客に対応した SaaS サービスを実現することが可能だ。

大規模になると、例えば同時ログインする人が増えたり扱うデータ量が多くなるといった特徴が出てくる。そうなると、例えば以下のような機能が必要になってくるだろう。

  • ユーザーごとの権限
  • データ分析
  • 誰がどんな作業をしたのかの追跡
  • 大量データを効果的に整理/アクセスする仕組み
  • 自動化

もちろん、これらは小規模でも必要なケースはあるかもしれないが、ほとんどの小規模事業者の場合はマストではない機能だろう。しかし、規模が大きくなれば、上記の機能はマストとなってくる。こうした違いを元に、プランごとの機能を設計していきたいところだ。

そしてそれに適した料金をセットすれば、顧客も満足して上位プランを契約してくれることだろう。

カスタマイズ項目を入れていないか

最上位プランは何でもします!的な料金体系は危険だ。どんなにお金を払ってくれる企業だとしても、その一時的な利益の向上のために未来のサービスの成長を遅めることになるだろう。

今後のサービス改善の中で、その企業のために作ったカスタマイズ機能を考慮しないといけなくなる。もしくはその企業は今後ずっとアップデートをしないということをすることになる。前者は1社だけのために余計な考慮を考えることが増え、多くの時間を消耗することだろう。後者は、SaaS サービスのメリットを全く活かせていない。どちらの対応にしても辛い運命が待っている。

料金設定において、「カスタマイズはご相談ください」を入れることは慎重になろう。どんなに最上位プランを用意しても、である。

では SaaS サービスはカスタマイズできない運命なのかといえばそういうわけでもない。一つの方法としてはアプリマーケットプレイスを作る方法がある。その"アプリ"自体は自社で作っても良いし、外部の企業が作って公開できるような場所を用意しても良いようにする。これによって、ある企業にとっては必要な拡張機能を必要に応じてインストールしてもらい、その後のメンテナンスはそのアプリを作った外部の企業に任せることができる。自社では引き続きコアの機能を改善していくことに時間をかけることができる。この方法は大規模な SaaS サービスではよく見られる方法である。

料金自体は適切か

料金が適切でない場合、今後 値上げをしていかなければならなくなる。これはサービスの規模によって変わっていくものであるから、値上げ自体は悪いことだとは思わない。

値上げすることによってより良いサービスにしていくための土台を作るという意味では、値上げが必要になってきたら考えてみてもいいだろう。顧客はその値段が正当だと思えばそれで良いだけの話だ。コロコロ値段を変えるのは当然よくないけど、信頼を積み重ねていけば顧客も納得してくれる。聞いた話では、サービスの値段がその分サービスへの信頼に繋がるケースもあるとのことだ。企業によっては高い料金を払うことで、信頼を買っているケースがあるのである。それでより手厚いサポートが受けられるのであれば良いという考え方だ。

こんな感じで SaaS サービスは循環していくのかもしれないと思うことがある。最初は安めでスタートして小規模の事業者に使われるサービスになり、やがて規模を大きくしていこうとして高額な商品を機能追加によって売るようになる。そうなると今度は小規模事業にとっては最適なサービスではなくなるので、他の新しく出てきた安めのサービスを使うようになる。そんなエコシステムがどの SaaS にでも見られる光景になるだろう。小規模ターゲットのまま続けられるのは、大きくすることを求められていない会社の場合にしか実行できないのである。

SaaS サービスで値下げをするってところは、ほとんど見かけない。だから個人的には興味がある。Amazon ではマーケティング的な意味を込めてどんどん値下げをしていって、圧倒的なファンを獲得している。誰だって料金の値下げは嬉しいニュースのはずだ。でもお金の数字しか見ていない企業では 100% できない施策である。

終わりに

今回は SaaS サービスの料金設定に関して思うことをざっと書いてみた。サービスの特性や企業のビジョンによって変わることだから、正解など何もない。ただ、顧客を裏切るような料金設定や途中の変更だけはしないように気をつけていきたい。

まだまだ日本で SaaS サービスってもの自体が少ないので、これからどんどん増えてこのような議論が生まれる場が出てくれば良いなと思っている。