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ゲーム最高峰のビジュアルクオリティを生み出すNaughty Dogの開発手法【GDC2017レポート Vol.4】

ゲーム最高峰のビジュアルクオリティを生み出すNaughty Dogの開発手法【GDC2017レポート Vol.4】

昨年5月、人気アクションアドベンチャー『アンチャーテッド』シリーズの最新作『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』(以下『UC4』)がソニー・インタラクティブエンタテインメントからリリースされた。同シリーズを開発しているNaughty Dogは、米サンタモニカの開発会社で、『アンチャーテッド』シリーズのほか、現在2作目を開発中の『The Last of Us』でも高い評価を受けている。GDC 2017では、そのNaughty Dogが開発者のリクルートを目的に、合計で15コマものセッションを開催していた。そのうち4つのセッションを受講することができたのでレポートしたい。

TEXT&PHOTO_谷川ハジメ(トリニティゲームスタジオ
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
©2016 Sony Interactive Entertainment America LLC. Created and developed by Naughty Dog LLC

<1>高品質なカットシーンを生み出すNaughty Dog流のモーションキャプチャ

まず最初に紹介したいのは、キャラクターに個性を与え魅力的なアクションを生み出すキャラクターアニメーションに関してのセッションだ。「Uncharted 4': Workflow and Prototyping」と題されたこのセッションでは、同作の制作ノウハウが惜しげもなく公開された。

同セッションの内容で最も注目したいのはNaughty Dogのプリビズの方法論だ。モーションキャプチャデータの撮影に先立ってシーンの全体像をDCCツールで組み立て問題点を洗い出すプリビズは、映像の世界のみならず、ゲームのカットシーンでも一般的になったと言える。Naughty Dogのプリビズで興味深いのは、DCCツールで制作したプリビズを参考に、実際にスタジオや野外で演技を行うライブアニマティックスで、現実世界での実現性を検証している点だ。

さらにゲームシーンと完全にマッチしたキャプチャデータを得るために、現実のキャプチャスタジオの空間とそこで使用される大道具を、DCCツール内に同じスケールで制作し、ゲーム内とモーションキャプチャスタジオの状態を物理的に一致させている。こうすることでモーションキャプチャデータの撮影現場ではコンテやイメージボードから動きを想像するのではなく、完璧な計画にしたがって撮影を進行させることができる。この方法はスタッフ同士のみならずアクターとコミュニケーションをとる際にも有効で、プリビズ上に撮影現場があらかじめつくられているため、アクターはどのように演技をすれば良いか、視覚的に理解することできるという。

このモーションキャプチャのワークフローでは、撮影したデータをゲームでそのまま使用するため事後に改変する必要がなく、非常に効率的だ。日本の開発フローではモーションキャプチャデータを単なる素材と捉え、撮影後に見栄えを優先してアクターの演技を大幅に変更することも多いが、このような手法は、伝統的にアクターの演技に対するリスペクトの大きいハリウッド映画でも採用されることが多い。プログラムで制御する必要のあるモーションに使うには難しいかもしれないが、映画的なカットシーンの場合には効率的な方法だ。

▲セッションで公開されたモーションキャプチャデータの撮影風景、プリビズ、ライブアニマティックスのスライド

またゲーム内のキャラクターの動きとの「馴染み」を良くするために、プレイ中のキャラクターアニメーション(プレイヤーが動かすプログラムで制御されたキャラクターの動き)のために撮影されたモーションキャプチャデータを、素材としてカットシーンにも活用している。先のプリビズのながれとは異なり、こちらは日本でもお馴染みの手法だろう。『UC4』のようにプレイアブルな場面からシームレスにカットシーンに繋げる必要のあるゲームでは、モーションキャプチャデータの数を減らすという意味だけではなく、プレイヤーに与える違和感を低減させるためにも有効だ。

▲大量のアニメーションデータやタスク、フィードバックを管理する方法も解説された。Naughty DogではTaskerというツールが活用されている

▲ほかにも「Cinematic Environment Production for 'Uncharted 4'」というセッションでは、カットシーンにおいてプレイヤーに対してよりシーンを印象付けるための方法論が語られた。もっとも、このセッションの中身にはあまり目新しいものはなく、プレイヤーの注視点を誘導するための構図や色づかい、ライティングといった話題が中心だった

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<2>ゲームシステムとアートワークの巧みな連携

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