長期化が予想される北朝鮮問題と住宅ローンの長期金利
どうも千日です。2017年4月6日にトランプ大統領が中国の習近平国家主席を招いての首脳会談中にシリア攻撃して以降、急激に緊張度を増した北朝鮮問題ですが、今後の住宅ローンはどうなっていくのでしょうか?
前のブログでは5月のフラット35の金利が下がることを予測しました。
今回は2017年6月以降に住宅ローンの実行を控えている人向けに、今後の金利の動向について参考になる記事を書こうと思います。
では始めますね。
目次
- 長期化が予想される北朝鮮問題と住宅ローンの長期金利
アメリカによるシリア攻撃から潮目の変わった長期金利の動向
トランプ政権は何十年と先送りされてきた北朝鮮問題に終止符を打つという強硬な姿勢をとっています。協調主義を掲げていたオバマ政権とは対象的にドラスティックな意思決定で従来の交渉セオリーを変えるような動きですね。
シリアへの攻撃は、人道的見地に反する国には、躊躇わず軍事的な措置を取ることを明確にし、北朝鮮や中国に強い圧力をかける効果がありました。
実に分かりやすく、ストレートな脅しで、こういう手法は確かにオバマ政権のときには無かったものです。
- アメリカとしては、北朝鮮がアメリカ本土に届くような小型弾道ミサイルを持つことが最大の脅威です。
- 中国としては、国境を接する北朝鮮がアメリカに占領されることは大きなリスクとなります。長年にわたり守ってきた北朝鮮を失うことは、習近平政権にとっても大きな打撃となります。
今回のシリア攻撃から原子力空母カールビンソンの出航までの動きというのは、中国が北朝鮮を抑えなければ、アメリカが軍事行動を起こし、北朝鮮を占領下に置くという仕掛けなのですね。
ただし、スタートこそ劇的でインパクトがあったものの、徐々に状況は硬直化しているように見えます。
直近20営業日の新発10年国債利回りのグラフです。
一時はゼロパーセントにまで下がった長期金利はまた少し上がってきているんですよね。しかし低位で上がったり下がったりを繰り返しています。
これは、中国が北朝鮮を抑えてくれるんじゃないか?という市場の期待があるからです。
市場の中国への期待から長期金利は下げ止まり
歴史的に韓国と北朝鮮は、米国と中国のクッション(緩衝国)の役割を果たしていたのですが、北朝鮮がアメリカに攻撃されれば、中国はクッションを失います。また、北朝鮮から中国に難民が押し寄せる懸念もあります。
そうでなくても、習近平政権は内政面でまだ不安定な位置にあると言われています。習近平としては、アメリカに対して五分に渡り合えるというところを国内に見せつける必要に駆られています。
水面下では、中国が北朝鮮を抑える代わりに、中国が東アジアの盟主であることをアメリカに認めさせるという交渉が行われていると、専門家は言ってます。
なので、アメリカは中国が北朝鮮を抑えにかかるはずだと見越して北朝鮮に強硬な姿勢を示し、中国の圧力を引き出そうとしているんでしょう。
具体的には中国から北朝鮮への石油の輸出のストップがそれです。
これが、「中国が北朝鮮を抑えるから軍事衝突は避けられるだろう」という見方につながり、リスク回避による安全資産(日本国債)への資金流入が一旦止まっている。
2016年のように長期金利がゼロを下回らないのには、そういう理由があるからです。
北朝鮮はミサイル開発を放棄しない、が達成もできない
しかしながら、北朝鮮がこれによってミサイル開発を放棄するでしょうか。けして楽観視は出来ないと思っています。
これが長期金利が上がらない要因です。
アメリカの脅威や中国からの兵糧攻めに強く反発する可能性もあります。そして、金正恩が祖父と父親から受け継いだ政権を維持していくのにアメリカに対抗できる大陸間弾道ミサイルの開発は最優先事項なんです。
このカードを北朝鮮が簡単に放棄するとは、どうしても思えません。外敵の脅威に内部粛清の二本柱で辛うじて国内の統制を維持している国です。この考えは市場関係者も同様でしょう。
まず、大前提としてこれは動かないだろうと思われるのが、北朝鮮によるミサイルの開発です。
- 中国がどこまで北朝鮮をコントロールしようとするか?
- アメリカがどこかで譲歩するのか?しないのか?
このせめぎあいがあって、市場の動きも停滞しているんです。現在の状況は把握していても、誰もその先を読めない状態なんですね。
つまり従来と同じです。いわばアメリカは刀を抜いて大きく振りかぶったは良いものの、振り下ろす場所とタイミングを失っている状態なのです。
金正恩政権としてはアメリカ本土に届くミサイルを得るという目標が、国内の統制を維持する原動力なのです。
しかしその目標を達成したことを公にしたら即アメリカに総攻撃の大義名分を与えることなります。皮肉なものです。
アメリカが刀を振り下ろすタイミングは北朝鮮が握っている
北朝鮮の挑発行動は国内のニュースや、ミサイルの発射失敗、軍事訓練などの中途半端なものにとどまっています。
アメリカとしても手を出しずらい、しょぼい動きなんですよね。当初の思惑としては北朝鮮がアメリカの挑発に乗って一線を超える動き、すなわち核実験を実行に移せば、総攻撃を行う大義名分が出来ると踏んでいるんです。
しかし、なかなか動かない。
中国は北朝鮮に対する石油の輸出をストップさせましたが、それだけで抜いた刀を鞘に収めるわけにはいかないでしょう。
トランプ氏が米中首脳会談の食事会終盤のデザートで出されたチョコレートケーキにフォークを刺しながら中国と北朝鮮に伝えたメッセージはこうです。
北朝鮮であってもシリア同様に攻撃する準備がある。
これは彼らへの間接的な恫喝であると言われましたが、しかしこのままアメリカが軍事攻撃を引き延ばせば…
シリアと北朝鮮は違うでしょ、ハッタリでしょ。
こういうことになりそうです。
実際そうなんだと思います。
北朝鮮への攻撃には以下のどちらかのトリガーが必要なんです。
- 中国の同意か
- 攻撃しなければ危ないという大義名分か
前者はまず考えにくいです。中国が自ら緩衝国を手放す理由など無いからです。つまり、残るは後者、これは北朝鮮がハンドルを握っているということです。
カールビンソンは北朝鮮に向かっていなかった?
またここへきて、空母カールビンソンが実は朝鮮半島に向かっていなかったという、「新事実」をアメリカメディアが報じ始めました。
( ゚Д゚)ハァ??
って感じです。どうも誤報であったらしいです。
シリア攻撃直後という絶好のタイミングで出航したことや、国防長官による説明ミスなどが積み重なったことで「きっと北朝鮮を攻撃するために出航したんだ」というストーリーが先走りしたのだと釈明しています。
ちょっと、この説明には千日は懐疑的ですネ。
カールビンソンはいわば、鞘から抜かれた刀です。抜いたは良いものの、今のところは行き場を失っているのだと思いますよ。
北朝鮮問題の長期化に伴う金融市場と住宅ローンの金利動向は?
今後の鍵は北朝鮮の出方次第ということですが、アメリカとしてもタダで刀を鞘に収めるわけにはいかないです。その落としどころを探っている状況ですね。
そして、根本的に北朝鮮が譲歩することは無い。
ですから、場合によってはアメリカの軍事行動の可能性もまだまだ残されているのです。
普通の判断をすれば北朝鮮としてはただ何もしなければ、交渉を有利に運べるのですが、石油の補給を断たれた状態でどこまで政権を持ちこたえることが出来るか、という我慢比べです。
苦しい状況で国内の統制を維持するためにアメリカへの挑発行動がエスカレートし、それが一線を越えてしまう可能性は否定できません。
日本の金融市場は軍事衝突を先取りした動きになっている
アメリカと北朝鮮が軍事衝突した場合、日本の株式市場は軍事関連株を除いて下落し、日経平均株価は急落するものと考えられます。
そして株式市場から流れたお金は、債券市場で取引される国債の購入に向かい、長期金利の指標となる、10年物国債の価格は上昇する流れになるでしょう。
いま、10年国債の金利が下がっているのは、この動きを先取りしたものということです。まだ軍事衝突していなくても、そのリスクが強く意識されると、それを見越した動きを瞬時に起こすのが金融市場というものなんです。
国債価格が上がるとなぜ金利(利回り)は下がるのか?
国債(債券)の価格が上がるとなぜ金利が下がるのか?を説明しておきましょう。たいていのニュースはこれが前提となっていますが、何となく分かったような分からないような話ですよね。
金利とは利回りを言います。
利回りとは投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。
下記の例で、国債の価格と利回りの関係を分かりやすく説明します。
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
国債の相場が額面と同じ100円の場合、券面利率は2%ですから、100円に対して毎年2円の利息が貰えます。そして、10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%ということです。
国債の価格が上がったら利回りが下がる仕組み
今は、国債の価格が上がっている状態ですよね。
例えば、額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
つまり、購入価格が上がったことで、その債券からの儲け(利回り)が下がってしまうということです。
国債の価格が下がったら利回りが上がる仕組み
逆に国債の価格が下がったらどうなるか?やってみましょう。
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰える上に満期で額面どおり100円で償還されます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
つまり、購入価格が下がったことで、その債券からの儲け(利回り)が上がるということですね。
つまり、債券の価格と利回りは逆方向に動くということです。
- 価格95円の利回りは2.6%
- 価格100円の利回りは2%
- 価格105円の利回りは1.4%
金融市場の動向と住宅ローンの動向
住宅ローンを貸す金融機関は、我々に貸す住宅ローンのお金を金融市場から調達しています。
なので、市場の長期金利の指標となる国債の利回りが下がるということは、資金調達コストが下がるということです。
じゃあ我々に貸す住宅ローンの金利も下がる?
それほど単純ではありません。確実に下がると予想出来るのは、フラット35だけです。
フラット35の金利が下がる仕組み
フラット35の貸付資金の源は住宅金融支援機構という半民半官の組織が毎月発行している債券(機構債)です。これを買うのは主に機関投資家です。
機構債は投資家にとっては国債と並ぶ安全資産なので、国債金利の動向とほぼ連動するんですね。
北朝鮮問題で不安が広がり、国債の価格が上がって金利が低い時は機構債の利率が低くても機関投資家が買ってくれるというわけです。
この問題は既に長期化の様相を示していますので、当分の間はフラット35の金利は低い水準で推移するでしょう。
朝鮮半島の地政学的リスクという不透明感が拭えない限り、金利が上昇するのはまだまだ先になりそうです。
民間金融機関の長期固定の住宅ローンは?
長期金利に連動する長期固定の住宅ローン金利は低下することになります。
でも各銀行が毎月の月末に翌月の金利を独自に決めているんですね。
銀行によって力を入れている住宅ローンの商品は様々です。
10年固定に力を入れる銀行なら、10年固定金利は少し位利益が少なくても頑張って下げてきます。他行より多くの、より属性の高い住宅ローン利用者を獲得するために金利を決めるんです。
5月には各行の出方が明らかになるでしょう。また千日のブログを覗いてみて下さい。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
千日のブログでは、マイホームの購入や住宅ローンの組み方について、最新の情報に基づいて分かりやすく解説しています。
もう一つのサイト、千日の住宅ローン無料相談ドットコムでは毎日寄せられる様々な人の相談に無料で答え、その内容を記事にしています。
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5月のフラット35 Q&A
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