特集
2017年4月28日
熱帯魚とトップアイドル
大人数のアイドルグループが歌って踊っているところを見ると、何人いるのか気になって仕方ない。数を数えようとするけど、立ち位置がくるくる変わってしまい難しい。この感じが何か似てると思っていたら気がついた。熱帯魚だ! 水槽を泳ぐ熱帯魚も数を数えるのが難しいじゃないか。そうだ、熱帯魚屋さんから数えるコツを聞いてみよう。
人は数を把握したい生き物だ常に数を把握しておきたいと思っている。例えば東京都の推計人口は13,634,685人(2016年10月1日現在)で、日本の人口は1億2679万人(概算値・2017年4月1日現在)で、世界中にいる男の数は35億。これらの数を把握していたところで日常生活に役立つわけではないが、ざっくりとした数を把握することで精神の安定がはかられているように思う。
だから、アイドルグループの人数を把握できないと精神が不安定になってしまうのだ。何としても人数を把握しておきたい。 どうしたらいいのか? そこで思いついたのが熱帯魚である。以前、熱帯魚を飼育していた時期があり、水槽内の魚の数を数えるのが難しかったことを思い出したのだ。指をさして数えようとしても魚たちの機敏な動きについていけず、いつも数えるのを諦めていた。あの諦めの感情が、アイドルの人数を数えている時のそれと同じであることに気がついたのである。 あの頃は(熱帯魚を)数えるのを諦めてしまったが、今回は(熱帯魚もアイドルも)諦めない。 熱帯魚屋さんから泳ぐ魚の数を数えるコツを聞いてみよう。 アクアリウムアドバイザーに教えを乞う新宿サブナードにある「アクアフォレスト新宿店」にお邪魔して、水槽内の熱帯魚を数えるコツを聞いてみた。
アクアフォレスト新宿店
店頭に置かれた大きな水槽で作業をしていた男性に声をかけてみた。
「すいません、熱帯魚の数え方のコツを教えてください」 アクアリウムアドバイザーの黒澤さん
作業の手を止め、僕の質問に答えてくれたのは、アクアリウムアドバイザーの黒澤さん。
「熱帯魚の数え方ですか?」 と、少し戸惑った表情をしている。 「水槽の中の熱帯魚を数えるって、あまりやらないんですよ」 普段は魚を数えたりしないという
ってことは、数えるコツはないってことになるのだろうか? それでは困る。
― 水槽の中に何匹いるのか、把握はしていますよね? 黒澤さん「はい、それは把握しています。仕入れた時に何匹で、そこから何匹売れたとか、病気で死んじゃった魚が何匹とか。引き算で数を把握していますね」 そんなことだろうなぁ、とここに来るまでの間に薄々感じてはいた。 しかし、ここで引き下がる訳にはいかない。黒澤さんは熱帯魚のプロである。何かしらノウハウがあるはずだ。 ― どうしても水槽の中の魚の数を数えないといけないとしたら? 黒澤さん「そうですね。その場合は…」 お! コツが聞けるのか? 10センチ四方で数える黒澤さん「10センチ四方で数えると分かりやすいと思います」
10センチ四方? それはどういうことだろう? 10センチ四方理論を説明する黒澤さん
黒澤さん「10センチ四方の枠を設定して、その中に何匹いるか数えるんです。例えば10匹いたとして、あとはその10センチ四方の枠が水槽内の魚群にどれくらい当てはまるかを考えて掛け算します」
なるほど。 例えば次の水槽のテトラの数を数える場合、 10センチ四方内の数を数える
10センチ四方にテトラが8匹いるのがわかる。
魚群に枠がいくつ入るか考える
テトラの群れに対して、10センチ四方の枠が12枠ほどはまるので、
8匹 × 12枠 = 96匹 という計算になる。 黒澤さん「テトラなどの小さい魚は、大体10センチ四方の範囲を大きく外れることがないんです。なので、この数え方は割と正確です。例えばこの水槽に何匹いると思います?」 この水槽には何匹いるでしょう?
「50匹くらいですか?」
10センチ四方メソッドを使わずに、まずは勘で答えてみた。 すると、黒澤さんは指で10センチ四方を作りながら数秒、真剣に水槽を見つめた。 10センチ四方メソッドで魚の数を数える黒澤さん
黒澤さん「200匹はいます」
え! ここにそんなにいるんですか! 黒澤さん「そうなんです。思ったよりも多いんです。逆を言うと、たくさん魚を入れないと見栄えがしないということです。例えば45センチ水槽の場合、一般的なお客様だと2〜3センチくらいのお魚を10匹くらいで飼ってしまうんですが、実際は50匹くらいは入れないと見栄えがしないんです」 これが45センチの水槽。ここにテトラなどの小さい魚は50匹は入れたいと黒澤さん
黒澤さん「魚の種類によって、泳ぎ方が激しいものもいますので、その場合は数えるのがさらに難しくなりますね」
― どんな魚が激しいんですか? 黒澤さん「コイ科のお魚は泳ぎが激しくて、さらに動きがランダムです」 動きがランダムで激しいコイ科のプラチナゴールデンバルブ
黒澤さん「バルブを数えるのは難しいと思うので、この水槽にしましょう。何匹ですか?」
黒澤さんから突然出題される。 ここには何匹いますか?
黒澤さんから教わった10センチ四方メソッドを駆使して数えてみた。
― 200匹? 黒澤さん「正解です! じゃあ、これは?」 次々と出題される
― えーと、150匹?
黒澤さん「素晴らしい。正解です!」 どうやら10センチ四方メソッドの会得に成功したようだ。黒澤さんも喜んでくれている。 ふと、ガラスに赤い枠がある水槽を見つけた。 魚を数えるための枠?
― あれってもしかして、お魚を数えるための枠ですか?
黒澤さん「いえ、あれはあの水草が特価って意味です」 なんだ、そうか。よく見たら、下に「大特価」と書いてある。一番最初に、熱帯魚屋さんは水槽内のお魚を数えないって聞いていたのを忘れていた。10センチ四方メソッドに興奮し過ぎて恥ずかしい。 恥ずかしさを紛らすために、黒澤さんに一番好きな魚を聞いてみた。 黒澤さん「僕はベタが大好きでして」 黒澤さんが好きなお魚。ベタ
黒澤さん「こいつの虜になってしまって、家でも9匹飼っています。ただ、こいつは気性が激しいので、1つの水槽に1匹ずつで飼わないといけないんです」
ベタは1つの水槽に1匹で飼う。 数えやすい!
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