愛知県一宮市の消防団の分団長ら団員7人が、昼食をとるために消防ポンプ車でうどん店に立ち寄った。市消防本部は、消防車を見た市民からのクレームを受け、分団長に口頭注意した。近く消防団の全団員に文書で注意する。中日新聞が報じた。
ネット上では、昼食をとりに行くのに公用車を使うべきではないとする一方で、「別にいいのでは」などと擁護する意見が多数あった。
何が問題だったのか。BuzzFeed Newsは、総務省消防庁や市消防本部に話を聞いた。
2. 市消防本部「頭を下げてお願いするしか」
市消防本部の説明はこうだ。
問題は4月16日に本部であった消防操法大会の説明会後に起きた。説明会は午前中にあり、大会で使う消防ポンプ車に乗るなどし、団員ら50人が参加した。終わると、一分団の7人がうどん店に立ち寄り、制服姿で昼食をとった。
同日夜、市民から写真付きのメールが本部に届いて発覚し、不適切な行動として分団長を口頭注意した。
消防団員は、消防職員とは異なり、会社員など別の職業に多くが就き、災害の時に駆けつける。消防車は税金で走るため、私用で使うのは不適切。飲食店に立ち寄れば市民に「出動」などと誤解を招く恐れもある。
だから、活動以外の理由で使わないで--。消防本部は、消防団とそう申し合わせていた。そんな約束があったにもかかわらず今回の件が起き、口頭注意したという。
「次の予定があって、このタイミングで昼食を取るしかなかった」。これが分団長が述べた理由だった。
分団長の「次の予定」とは、町内会の仕事。つまり、消防活動ではない業務だ。
市消防本部・総務課の担当者はこう語る。
「消防職員は、消防活動以外で消防車を使うのは禁止です。ですが、別の組織である消防団には、極力控えてください、と今後も頭を下げてお願いするしかありません。私服に着替え、私用車で店に行くのであれば問題なかったのですが、次の予定もあった分団長は、『ご苦労様』と団員をねぎらいたくて立ち寄ったようです」
総務省消防庁によると、消防車で飲食店やコンビニに立ち寄ってはいけないとする統一のルールは設けておらず、各自治体の消防本部に任せている。
しかし、同庁地域防災室の担当者はこう釘を刺す。
「大きな災害があるなどして立ち寄らざるを得ないこともあり、一概に悪いとは言い切れません。しかし、プライベートで飲食店に乗りつけるのは、ありえません」
3. 消防職員は、どのように昼食をとっているのか
消防職員は、別の職業にも就いている消防団員とは異なる。関東地方で働く30代の男性職員は、こう語る。
「災害が発生して、出動が遅れることを考えれば、コンビニや飲食店の利用は勤務中にはそもそもありえません」
いつ出動を命じられるかわからない。そのため、弁当を持参しての出勤や出前を頼むのが基本。消防車に乗ることがない職員は、上着を脱いだり、服を羽織ったりして、コンビニでの買い出しを請け負うこともあるという。
「日頃から消防車の利用に関しては、市民の目が厳しいように思いますね」
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