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ワシントン・ポストが報じた「北朝鮮にミサイルを撃て!」と主張する日本の政治家たち
From The Washington Post (USA) ワシントン・ポスト(米国)
Text by Anna Fifield
日本の迎撃ミサイル「PAC3」
PHOTO: JUNKO KIMURA / GETTY IMAGES
4月25日に人民軍創建85周年を迎える北朝鮮は、この日に合わせて核実験や弾道ミサイルの発射をおこなう可能性がある。何度も何度も繰り返されてきた種類のニュースだ。
しかし、日本の政治家たちは、これに乗じていつの間にか「先制攻撃」の主張を始めている。そのバックにいるのは、もちろん安倍晋三だ。米「ワシントン・ポスト」紙が、中谷元らにインタビューした記事で、安倍の姿勢が世界からどう見られているか、はっきりと学ぶことができる。
「敵基地を攻撃せよ」
北朝鮮のミサイル発射の脅威が増すなかで、日本では、より強大な軍事的対応を主張する声が強まっている。
平和主義を謳う日本において、有力な政治家たちが、米国の防衛力に依存することなく北朝鮮を攻撃する力を得るべきだと、公に主張しはじめているのだ。
与党・自民党の安全保障調査会長の今津寛は、インタビューに対してこう語っている。
「日本は、破壊されるまで手をこまねいているわけにはいかない。ミサイルを発射しようとしている敵基地を日本が攻撃することは合法なのに、そのための武器や能力がないのです」
同調査会のメンバーであり、昨年まで防衛相を務めた中谷元も、本紙「ワシントン・ポスト」の取材にこう答え、今津に同意している。
「敵基地攻撃能力を持つことは考慮すべきだと思いますよ」
中谷元
PHOTO: PETER PARKS – POOL / GETTY IMAGES
彼らが公的にこうした主張をするのは、決して偶然ではないと永田町関係者は言う。首相に後押しされていないかぎり、影響力のある自民党議員が、このような問題を提起するはずがないというのだ。
実際、安倍晋三首相は、この考えを公に支持している。敵基地攻撃能力の所持の可否を問われた首相は、国会でこう語っているのだ。
「この件については、党に議論を促し、進捗を見守っているところです」
第2次大戦に敗北し、米国の手によって作られた日本国憲法の下では、日本は攻撃を受けた際に防衛することはできるが、先制攻撃は許されていない。
今津は、この状況が、現在の日本を「特異な」国にしてしまったのだと述べる。
「わが国は他国に守られているが、わが国が他国を守ることはできない。これは、もはや世界では通用しない論理です。米国や諸外国と協調してわが国を防衛するだけでなく、東アジアの平和に貢献する。この環境下で唯一できるのは、我々自身が自国を守る方法を議論することなのです」
安倍首相は自衛隊に関する憲法上の制約を緩めようとしてきた。とりわけ2015年には安全保障関連法案を通過させ、日本が米国に軍事的な支援をできるようにした。安倍は日本が正常な軍隊を持てるよう、憲法改正したい意向を示している。
挑発を繰り返す北朝鮮
北朝鮮はいま、安倍政権に対し警戒姿勢を強め、挑発行動を繰り返している。
ミサイルを発射し日本海に着弾させているし、直近のミサイル発射のうち3発は日本の排他的経済水域に到達した。北朝鮮は、在日米軍基地の攻撃を狙っているともいわれる。
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