消費者庁から、格安スマホ・FREETELブランドを運営するプラスワン・マーケティングに対して「通信速度」「販売シェア」「SNSカウントフリー」などに関する表示が景品表示法違反(優良誤認)だとして再発防止を求める措置命令が出た。
総務省からも同社に対し、適正な表示と再発防止の徹底を求めて行政指導した。
先日も、ITmediaで「『縛り一切なし』をうたうFREETELの999円プラン、端末価格で3年間の“実質縛り”」という記事を書いたところだった。
上記の記事では、FREETELの「スマートコミコミ+プラン」(以下、スマコミ+)が見た目の印象とは裏腹に、端末代金が単体購入時の2倍以上の価格設定になっており、「縛りなし」をうたっている一方で高額な割賦を組ませることで実質的な「縛り」になっていることについて指摘していた。
これに関してFREETELに質問を送っていたところ、その回答が19日の19時に届いた。
筆者が送った質問は大きく分けて以下の3点。
この中でも1番目の「縛り」について、公式サイトでも動きがあった。これを回答とともに詳しく見ていこう。
筆者 スマートコミコミ+プランで扱う端末の支払い総額が、通信契約なしで端末を一括定価で買った時に比べて、軒並み2倍以上の価格になっているのはなぜでしょうか? FREETELは「縛り」がないことをこれまでうたってきていますが、これは実質的な縛りに見えてしまいます。
回答 スマートコミコミ+は、スマートフォンをワンセットで簡単・手軽に使っていただくための商品であり、トータルでのお支払金額を安く抑えることを主眼としております。例えば、RAIJINの3年間での合計支払額で比較しますと、以下のように3万円程度お得になります。
回答 上記のトータルでの金額メリットに加えて、残債を支払わずに機種を変更できる「とりかえ〜る」というサービスを標準でお付けしております。
また、先ほどインフォメーションにてご案内させていただきましたが、プラン内容について「割賦契約期間中に解約した場合の残債が非常に高くなるのでは」とのご懸念の声をいただいたことを受け、以下の通り変更いたしました。
【対象者】スマートコミコミ+割賦契約期間中に解約された方(未払に伴う契約解除の場合を除く)
【変更点】
<変更前>
1. 割賦契約期間中の解約は割賦残債全額を一括でお支払い
<変更後>
1. 割賦契約期間中の解約は割賦残債全額を一括でお支払い
2. 当社が端末及び付属品を割賦残債50%分の金額にて買取
(お客様任意/故障端末を除く)
上記変更は、「スマートコミコミ+」をご契約中のすべてのお客様に適用され、2017年4月25日より提供を開始いたします。
なお、割賦契約による契約期間の制限を受けたくない方には、従来通り端末とSIMカードを別々に購入いただくことが可能でございます。
この回答は「縛りに見える」という指摘については否定しておらず、最後に「割賦契約による契約期間の制限を受けたくなければ、従来通り端末とSIMカードを別々に購入できる」と“制限”の存在を認めている。そして、興味深いのは今回発表された「割賦期間中の解約時の支払い額」の仕様変更だ。割賦中の端末一式を返却すると残債の50%の支払いで済むという。これは料金上どのような意味を持つのか、これまでの整理も含めて、送られた料金表を元にグラフを書いてみた。なお、とりかえ〜るはここでは考慮しない。
書いたのは解約月ごとの、契約時から解約時までの支払い総額だ(月々の支払い総額だけではなく、解約時に残る支払い義務を合わせた額)。横軸が解約月で縦軸が支払い総額となっている。水色の線がFREETELの「RAIJIN」を単体購入し、1GBカケホプランを契約した場合、オレンジ色の線がスマコミ+の1GBプランでRAIJINを契約し、解約時に端末を返却しなかった場合、赤色の線がスマコミ+でRAIJINを返却する場合に対応する。
このグラフで注目すべきは1カ月時点と12カ月時点だ。1カ月時点で単体購入1GBカケホとスマコミ+(端末返却)がほぼ同額になっている。そして、1年目の支払い総額が高額になるスマコミ+(端末返却無し)と単体購入1GBカケホプランは12カ月時点で交差し、13カ月以降は総額でスマコミ+の方が安くなるという具合だ。このグラフは1GBプランで書いているが、これを3GBプランや20GBプランにしてもグラフの形は変わらない。
契約ニーズで分類すると、「端末は欲しいけれど1年間も使い続けるか分からない」なら単体購入、「端末も回線もお試しでいい、必要なくなったらどちらも手元に残さなくていい」ならスマコミ+、「端末は残したいけれどスマコミ+を契約してしまった」なら1年以上契約を続ければ単体購入時より総額は下がる、とも読める。
このようにグラフを読んでいくと、回答にあった「トータルでのお支払金額を安く抑えることを主眼としております」という言葉には納得できる。1年以上契約を続ければ、確かに単体購入時よりも支払い総額は安く収まっている。
しかし、問題なのは前回の記事でも言及したように「価格の詳細をきちんと周知しているとは言いがたい」ということだ。「(1GBプランの場合)1年目は月額2180円、2年〜3年は月額3680円です」という言葉だけ受け取り、端末価格は通常と変わらないと思い込んでしまうと、下図の黄色の線のような支払いイメージを浮かべてしまってもおかしくはない。
グラフを見て分かるのは、黄色線(端末が通常価格だと誤認した場合のスマコミ+支払いイメージ)と赤線(スマコミ+で解約時に端末返却)がほぼ被っているということ。黄色線だと思い込んで契約した人が、支払い額としてはほぼ同額で解約するための措置が今回のスマコミ+(端末返却)だとも考えられなくもないが、端末が手元に残るかどうかは大きな違いだ。端末を手元に残そうとすると支払い総額はオレンジ色の線になり、中途解約ではやはり当初の思い込みから相当離れた高額を払うことになる。
ちなみに、「3年間使えばスマコミ+がお得」というのは比較としては正しいのだが、比較対象の1GBカケホプランはいつでもイメージ通りに解約でき、カケホを使わないなと思えば月額1499円の「10分かけ放題」を外すこともできる。もし、初めから「カケホはいらない」と分かっているのであれば3年間の支払い総額は約9万円となり、スマコミ+よりも安くなる。端末と通信を別々に契約したほうが柔軟な料金見直しができるのは間違いない。
「とりかえ〜る」にも触れておこう。ここまでRAIJINでの試算をグラフにしているので、契約13カ月目にRAIJINと同額の機種にとりかえた場合を同様にグラフ化する。
とりかえ〜るを適用すると、旧端末の残債は免除されるが新端末の割賦が新たに始まり、最初の1年間適用されていた「スマコミ+割」も復活しないので、スマコミ+の総コストは増加する。スマコミ+で最終的に端末を返却しない場合、単体購入時より支払い総額が安くなるのは30カ月以降だ。とりかえ〜るを使用するほどコストが上がっていくので、(3年間使うか残債を返済しない限り)端末が手元に残らないことを考えるとFREETELの新機種を1年間使えるくらいしかメリットが見当たらない。
「スマートフォンをワンセットで簡単・手軽に使っていただくための商品である」という主張だが、小さく表記した高額な端末価格で縛り(FREETEL風に言えば“制限”)をかけ、本記事で書いたようなグラフを自分で試算しないとお得になる条件が分からない商品を「簡単・手軽」だと考える人がどれだけいるだろうか。
続いて、残り2つの質問と回答を紹介する。
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