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白崎映美インタビュー 被災者や路上生活者も癒してきた歌手人生

白崎映美インタビュー 被災者や路上生活者も癒してきた歌手人生

『ミューズ達の歌謡祭 in あらかわ』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子
2017/04/27
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「無国籍音楽」を奏でて国内外で大きな人気を誇った音楽集団・上々颱風(しゃんしゃんたいふーん)の主要メンバーであり、現在は様々な名義で活動する歌手、白崎映美が、6月24日に開催される『ミューズ達の歌謡祭 in あらかわ』に出演する。

上々颱風の活動休止後、東日本大震災を経験して「東北人の血」をたぎらせた白崎は、同じ東北出身のミュージシャンを中心に結成した「東北6県ろ〜るショー!!」を率いて、ロックやジャズ、歌謡、東北民謡などをぶち込んだエンターテイメント性の高いステージを全国各地で展開している。エネルギッシュでバイタリティーに溢れた彼女だが、実は上々颱風に加入するまでは、「東北人コンプレックス」を抱えた引っ込み思案な少女だったというから驚きである。

今回は、そんな彼女がどのようにコンプレックスを解消し、存在感溢れる歌手へと成長したのか、上々颱風時代から現在までの道のりをじっくり訊いた。

神様、妖怪、昔から伝わる芸能、全部で「東北を守ってくれ!」っていう気持ちだったんです。

―白崎さんの、現在の活動の最も大きな動機は2011年3月11日の東日本大震災からきていると思うので、まずはそこから伺いたいのですが、「東北6県ろ~るショー!!」はどのような経緯で結成されたのですか?

白崎:おっしゃる通り、震災がなければ今のような活動はやっていないと思います。震災直後はもうパニックになってしまい、どうしたらいいのかわからない状態だったんです。私自身が東北出身者ということもありますし、中学3年のときに「酒田大火」(1976年10月29日に山形県酒田市中心部で発生した大火)に遭って、実家が全焼してしまう出来事があったんですね。そのときは他の地方から救援物資をもらったり、仮設住宅を造ってもらったり、いろいろ助けてもらって。

白崎映美
白崎映美

―そのときの「恩返し」をしたいという気持ちもあったのでしょうか。

白崎:そうだと思います。昔から東北って、経済もあまりよくないし、天気もよくないから暗いし(笑)。そういう、積もり積もった気落ちもあったんですよ。そこに地震ばかりか原発事故まで起きて、頭の中が「うわー!」ってなっちゃったんですよね。「なんとかしなきゃ!」って。

―居ても立ってもいられなくなったと言いますか。

白崎:最初は東北出身のミュージシャンだけを集めて、「東北の言葉で、東北の体で歌う」っていうバンドをやろうと思ったんですけど、ドラマーの山口ともさんが、「映美ちゃん、自分は東京出身だけど、よその地域から東北を思うのじゃダメなのかな」って言ってくれたんですよね。それで、「あ、私は逆差別をするところだった」と気づいて、いろんな地域の人たちを誘って結成したのが、「白崎映美&とうほぐまづりオールスターズ」(のちに「東北6県ろ~るショー!!」と改名)なんです。

『FUJI ROCK FESTIVAL '16』出演時の映像

―そこに至るまでに、木村友祐さんの『イサの氾濫』(未来社、2016年。初出は、文芸誌『すばる』2011年12月号)を読んだことも大きかったんですよね?

白崎:そうなんです。被災地のために「なにかしたい」と思っても、なにをしたらいいのかわからず、モヤモヤしたまま初めの一歩を踏み出せずにいて。そんなある日、朝日新聞の書評を見ていたら、青森県八戸出身の木村さんの『イサの氾濫』というのが紹介されていたんですよ。

それですぐに図書館に行って、『すばる』に載っている『イサの氾濫』を探して一気に読んだら、もう東北の血が逆流するような気持ちになってしまって。それを、周りの人に伝えまくり、「バンドやろう! やっぱりオラはバンドだ!」って。

白崎映美

―ライブの衣装が非常に特徴的ですが、これはどのようなイメージで作られたのでしょう?

東北6県ろ~るショー!!
東北6県ろ~るショー!!

白崎:この衣装は、『イサの氾濫』を読みながら、東北人が昔「蝦夷=まつろわぬ民(支配されない、迎合しない)」と呼ばれてたときに、どんな格好をしていたのか考えたんです。毛皮みたいなのを着ていた人もいたかもしれない、昆布をぶら下げていた人もいたかもしれない。

そんな蝦夷がもし現代にいたら、昆布の代わりにペットボトルをぶら下げていたり、ビニールシートを羽織ったりしていたかもしれない。蝦夷が馬に乗って、牛も鶏もみんな列になって、国会議事堂を包囲するシーンが小説の中にあるんですけど、それにシビレて、その小説のイメージを衣装デザイナーに伝えて作ってもらいました。人間や動物だけでなく、東北の神様、妖怪、東北に昔から伝わる芸能、そういうもの全部で「東北を守ってくれ!」っていう気持ちだったんですよ。

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イベント情報

『ミューズ達の歌謡祭 in あらかわ』

2017年6月24日(土)
会場:東京都 荒川区 サンパール荒川 大ホール
出演:
白崎映美
畠山美由紀
エミ・マイヤー
料金:全席指定5,000円

イベント情報

『演劇集団風煉ダンス「まつろわぬ民2017」』

2017年5月26日(金)~6月4日(日)
会場:東京都 高円寺 座・高円寺1

2017年6月10日(土)~6月11日(日)
会場:福島県 いわき芸術文化交流館アリオス

2017年6月16日(金)
会場:山形県 シベールアリーナ

作・演出:林周一
出演:
白崎映美
伊藤ヨタロウ
ほか
音楽:
辰巳小五郎
関根真里
ファン・テイル

書籍情報

『鬼うたひ』
『鬼うたひ』

2016年6月24日(金)発売
著者:白崎映美
価格:2,700円(税込)
発行:亜紀書房

プロフィール

白崎映美
白崎映美(しらさき えみ)

山形県酒田市出身。1990年、上々颱風(しゃんしゃんたいふ〜ん)のボーカルとして、メジャーデビュー。1991年、“愛より青い海”が大ヒット(JAL沖縄キャンペーンCMソング)。1994年スタジオジブリ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』音楽、主題歌担当。1996年シンディ・ローパーのアルバム『Sister of Avalon』にゲスト参加、武道館ライブにも出演。2007年ミュージカル『阿国』(木の実ナナ主演)音楽担当、出演。多岐に渡る活動で支持を集める。東日本大震災を経て、木村友祐・著『イサの氾濫』との出会いに東北人の血がたぎり、とうほぐまづりオールスターズ(東北6県ろ~るショー!!に改名)を結成。2014年9月にはアルバム『まづろわぬ民』をリリース。2016年6月、初のフォトエッセイ『鬼うたひ』(亜紀書房刊)を発売。2016年9月には、天皇・皇后両陛下がご臨席される『第36回全国豊かな海づくり大会~やまがた~』の進行役を務める。

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