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【群馬】

朝鮮人追悼碑模した作品 撤去に条例上の根拠なし 県立近代美術館

 高崎市の県立近代美術館で開催中の企画展で、朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑を模した作品について館側が要望し、制作した美術家に開催直前に撤去させた問題で、同美術館の設置管理条例に撤去の根拠となる条文がないことが、県への取材で分かった。法律の専門家は「撤去に何の基準もないとしたら、問題だ。県の恣意(しい)的な判断が繰り返される恐れがある」と指摘している。 (菅原洋)

 東京都美術館で二〇一四年に開かれた彫刻家団体の定期展では、造形作家が当時の政権を批判する作品を展示し、都が撤去を要請。都はその根拠として、都美術館条例に基づく運営要綱で、作品が政治的と認められる場合に館の使用を不承認にできるとする規定を挙げた。それでも、都は造形作家が作品の一部を変更したため、会期末までの展示を容認している。

 一方、県立近代美術館によると、制作した美術家が作品の修正も提案したが、館側は応じなかった。

 追悼碑は同美術館がある県立公園「群馬の森」に立つ。碑を巡っては、管理する市民団体が開いた集会で、設置条件に反する政治的な発言があったとして県が更新を不許可とし、市民団体が処分の取り消しなどを求めた訴訟が前橋地裁で係争中だ。同美術館側は二十三日の取材に「県が当事者の裁判について、一方の主張に偏る展示は適切でないと考えた」などと説明した。

 原告弁護団の赤石あゆ子弁護士は「芸術作品には、作者の思想や意思が込められている。見解の相違で撤去したとしたら、表現の自由の制約に当たるのではないか」と懸念を示す。

 県文化振興課は「今回の企画展は県の主催であり、展示品は主催者が選ぶべきものだ」と説明している。

 大沢正明知事は二十六日の定例記者会見で、今回の問題について「表現の自由うんぬんではない。(政治的などの作品が今後出品された場合には)美術館の方でしっかり判断してほしい」と述べた。

 

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