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【埼玉】19年、川口に公立夜間中を新設 不登校経験者、外国人「通いたい」
県内初の公立夜間中学校が、二〇一九年四月に川口市内に新設される見通しとなった。不登校などで十分に義務教育を受けられなかった人や、日本語の習得を目指す在日外国人らの新たな学舎(まなびや)となる。実際には、どんな人たちが開校を待ち望んでいるのか。一九八五年からボランティアが運営してきた「川口自主夜間中学」の金子和夫代表(70)に聞いた。 (杉本慶一) −公立夜間中学は東京都や千葉、神奈川県にあるのに、埼玉県にはない。このため川口自主夜間中学が、「学びたい」と願う人の受け皿になってきた ここの生徒では、今のところ約十人から「川口の公立夜間中学に入りたい」という声が出ています。 二十代半ばの女性は小学生のときにいじめを受けて不登校になり、引きこもり生活を続けていました。ここに通い始めたときは引き算が苦手で、漢字の読み書きもほとんどできませんでした。それが半年間で、小学六年生の教科まで理解できるようになったのです。ここでの学習はマンツーマンが基本です。彼女は「集団の中で勉強する公立夜間中学に入れば、友達ができるかも」と喜んでいます。 農家に生まれた六十代の男性は、学校に通えず家業の手伝いをして育ちました。「本当は学校に行きたかったけど、行けなかった。学校の雰囲気の中で勉強してみたい」と入学を望んでいます。 −公立夜間中学は在日外国人のニーズが高い ここの外国人生徒の多くは昼間、働いています。中には母国で義務教育を終えずに来日し、中卒でないことを理由に賃金を低くされた人たちがいると聞いています。 ベトナム出身で十代後半の女性生徒はその一人。母国では家庭が貧しく働いていたため、中学を卒業できませんでした。来日後はパートの仕事をしていますが、雇い主に「時給が低いのはおかしい」とは言いづらい。彼女には都内の公立夜間中学への入学を勧めましたが、「電車賃を出せない」とあきらめていました。彼女は「川口にできれば通える」と話しています。 来日後に小中学校に入っても、日本語を習得できずに卒業する子がいます。しかし、そのままでは就職先や進学先を見つけるのは難しい。公立夜間中学は、そんな若者らを救うことができるのです。 −川口に公立夜間中学ができたら、川口自主夜間中学はなくなるのか なくしません。ここには不登校や引きこもりの中学生も通っていますが、現状では、公立夜間中学は学齢期の子を受け入れていません。学齢期を過ぎて公立夜間中学に入学できるとしても、「そこまで勉強する気はない」という人もいるでしょう。そんな人の受け皿が必要です。 ここで学びながら、公立夜間中学に入るかどうかを考えてもらってもいい。多様な教育の場の一つとして存続させたい、と思っています。 <川口自主夜間中学> 市民団体「埼玉に夜間中学を作る会」のメンバーらが1985年に運営をスタート。川口市内で教室を週2回開き、これまでに1000人以上が学んできた。誰でも無料で、いつでも通い始めることができる。ボランティアで教えるスタッフは現職や元職の教員、大学生ら。現在の生徒は10〜70代の約50人で、約7割が在日外国人。教室は火・金曜の午後6時半〜同8時半。場所や入学などの問い合わせは、代表の金子和夫さん=電090(1843)1082=へ。 PR情報
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