マニラ=鈴木暁子
2017年4月25日00時55分
フィリピンのドゥテルテ大統領が「麻薬戦争」の名のもとに、大量殺人を続けていることは人道に対する罪にあたるとして、同国の弁護士の男性が24日、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)にドゥテルテ氏と政権幹部に対する予備的捜査の開始と、裁判を求める訴状を提出した。
ICCは集団殺害や人道に対する罪に関わる個人を訴追・処罰する国際司法機関。訴状は、ドゥテルテ氏がダバオ市長に就いた1988年から国家レベルの「麻薬戦争」に至るまで、「繰り返し、変わることなく超法規的殺人や大量殺害を続けている」とし、ICCに捜査着手と、今後の逮捕状請求や裁判を求めた。
訴状を提出した男性は、昨年議会上院でドゥテルテ氏から殺害を請け負ったと証言した「ダバオ暗殺団」元団員の弁護人で、こうした証言や麻薬戦争に関する国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの調査、報道内容を訴えの根拠に挙げている。
昨年6月末のドゥテルテ大統領就任以来、フィリピンでは麻薬犯罪者とされる市民約9千人が、警官や身元不明の人物に殺害されているとされる。ICCのベンソーダ主任検察官は昨年10月、声明で懸念を表明し、状況を見て予備的捜査に入るかどうかを判断するとしていた。
アベリヤ大統領報道官は24日、マニラで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が29日に開かれることに触れ、「フィリピンの議長国デビューを邪魔しようとする意図が明らかだ」と述べ、「比政府主導の超法規的殺人はない」と否定した。(マニラ=鈴木暁子)
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朝日新聞国際報道部