運営する「まとめサイト」で画像の無断転載などが社会問題となったIT大手DeNAが、転載被害者への「迷惑料」の支払いを進めています。しかし、ブログからの無断転載には支払う一方、SNSからの転載は対象外。DeNAが決めた複雑な線引きに、被害者からは戸惑いの声も聞かれます。
SNSだけ、なぜ?
化粧品ブログを運営する20代女性は、DeNA運営の「MERY」に画像19枚を無断転載されました。しかし、提示された迷惑料は3000円だけ。
金額の根拠をDeNAに何度も尋ねたところ、人気SNS「インスタグラム」に女性が投稿していた画像16枚の転載には、迷惑料が支払われないことが分かりました。
女性は首をひねります。「インスタグラムだけ、なぜ?」
多くのSNSには他人の投稿を、ウェブサイトに埋め込んで転載できる「エンベッド機能」があります。気に入った投稿を手軽に紹介できるため、様々なサイトで活用されています。
インスタグラムからのエンベッド
人気SNSに聞いてみると
エンベッドに対する姿勢はSNSごとに違います。
ツイッターは、投稿者からの許可なしでエンベッドすることを利用規約で認めています。
フェイスブックと傘下企業のインスタグラムは、「エンベッドする際の投稿者の許可」について問い合わせたところ、ともに「大きな前提としてコンテンツの権利は利用者が有するもののため、投稿者本人に写真や動画の使用許可をとるようお願いしています」(担当PR会社)と説明がありました。
これは世界的なガイドラインだといいます。
ツイッターからのエンベッド
一方、日本国内の法律からは別の状況が見えてきます。著作権法に詳しい骨董通り法律事務所(東京・港区)の小林利明弁護士は、こう指摘します。
「エンベッドは無断でも、原則として著作権侵害にはあたらないと考えられています」
SNSの機能を使って表示しているだけで、投稿データをサーバーに保存して発信しているわけではないためです。
支払い、複雑な線引き
DeNAが運営するまとめサイトは10にのぼり、他サイトからの転載方法も多岐にわたります。どこまでを迷惑料の支払い対象とするのか、DeNAは「相談者と個別に対応している」として細かい基準や理由を公表していません。
例えば他サイトの画像データを保存することなく転載できる「直リンク」と呼ばれる手法も、一般的には著作権法違反ではないと考えられていますが、DeNAは迷惑料の対象にしています。同社広報は「画像の使用形態によって、ご迷惑料の有無を変えていることはございません」と説明します。
そうした中で、数が多いインスタグラムからの転載が対象から外れた理由は何か。複雑な線引きについて、DeNAには相談者が戸惑うことのない説明が求められています。
DeNAの守安功社長は、3月の記者会見で「なるべく早く(被害者が)納得いく解決をめざしたい」と表明しています。
- 前へ
- 次へ