飛行機のエコノミークラスのシートは狭い。機材やシートピッチ(シート間隔)が狭い時には僕は膝が前の座席に触れてしまう。さらに前の人がリクライニングをすると快適さはほぼゼロになる。そういう時のエコノミークラスは僕にとって苦行でしかない。
そんな狭いエコノミークラスでアジアを移動した時の事だ。快適とは言えない機内で僕が経験したリクライニングにまつわるトピックスがある。今回は狭いエコノミークラスでのリクライニングを巡る僕と老婆の駆け引きの記録だ。
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エコノミークラスの狭いシートピッチを実感
あるアジアの路線のエコノミークラスに乗った時のことだ。狭いシートピッチで満席のフライトだった。機体がなんだったか忘れたが、僕が座るとポケットに膝がぶつかる寸前、それくらい狭いシートピッチのエコノミークラスに座っていた。
そして、僕の前に70歳くらいの大陸系の老婆が座った。老婆の見た目は田舎育ち風で飛行機にはあまり乗ったことがないように感じられた。後で解ったのは老婆に対する僕の第一印象はだいぶ違っていたようだ。
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老婆とエコノミークラスのリクライニング
老婆は僕の前の席に座るとすぐにリクライニングをしてシートを倒した。飛行機はまだ動きだしてもいない。ただでさえ狭いエコノミークラスのシートピッチに辟易していた僕は、側を通ったCAさんに老婆のシートを指差して合図を送った。するとそのCAさんは僕の意図を汲み取って老婆にリクライニングを元に戻すように促した。
航空機内ではルール上、離陸や着陸の時はシートを元に戻すことになっているから注意してくれたのだろう。シートを戻した後に老婆がチラっと僕の事を見た気がした。今思えばこれが僕と老婆の戦いのゴングが鳴った瞬間だったのだろう。
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老婆の波状攻撃を受ける
機内に出発のアナウンスが流れて、CAさん達が席に座る。そして飛行機が滑走路に向かってゆっくりと動き出した。その時、僕の前方のシートが倒れてきた。僕はCAさんを呼ぼうとしたが皆、席に着いたようで誰も見えなかった。それならばと呼び出しボタンを押してみたが反応は無かった。
更に滑走路に出るか出ないかという頃に老婆はもう1段階深くリクライニングをしてきた。2段目の攻撃だ。CAさんが姿を消した時が1段目、そして注意されないことを確認して老婆は「波状攻撃」を僕に仕掛けて来たのだ。僕は深くリクライニングされた老婆のシートを軽く数回叩いたが聞こえてないのか聞こえないフリなのか、老婆はしたたかに無反応だった。
テイクオフ中にトドメを刺される
事態は更に悪化する。飛行機が離陸した直後の傾いてGを受けている最中だというのに3段目のリクライニング攻撃が来た。これで100%のリクライニング率になったので僕はモニターとキスする寸前になっていた。飛行機に乗り慣れてない老婆がこんなに器用な真似ができるはずがない。
この老婆は見た目とは違いエコノミークラスのフライトに乗り慣れていると僕は感じた。そして狭いエコノミークラスの座席に対して自分なりの攻略法を持っているようだった。
快適に過ごす為の作戦を考える
僕は作戦を考えることにした。次にリクライニングを戻すべきタイミングはご飯の時間だ。大陸系の老婆に英語は通じないだろうし、「シートを元に戻してください」と言えるほど僕は中国語を話せない。だからCAさんにシートを戻すように言ってもらおう。でないと僕は狭いエコノミークラスの座席でモニターにキスか頭突きをしながらご飯を食べることになる。
そもそもシートをリクライニングすることは特定の時間以外は何ら悪い事ではないのだが…。
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「人生なんてマイルで変わるはず」だった…
少し前までは僕は飛行機に乗ることが苦痛だった。海外旅行は大好きだったけど、狭いシートや混雑した空港で時間を過ごすのが嫌いだった。そんな僕を飛行機好きへと変えたのは「マイルを貯める」ということに対する可能性だ。それについては人生なんてマイルで変わるを読んでほしい。
しかし、今回は諸事情によりマイルも使えなかったし、僕が保有しているJALの上級会員の特典を受けられるエアラインを選ぶこともできなかった。その事も僕がこの状況に陥った要因のひとつだと思う。
いざ、勝負の時間
そして食事の時間が近づいてきて、機内に食べ物の匂いが漂って来た。僕は老婆に一矢報いる為に深呼吸をして気持ちを整えた。これまでの老婆の行動を見る限り、彼女は食事の時間だろうと構わずにリクライニングした座席で過ごすタイプだろう。
僕はそれを止めさせなければならない。それも合法的に狭い機内の調和を乱すことない方法でだ。だからCAさんにサインを送って自然に注意してもらうことにした。前方には配膳しながらこちらにCAさんが近づいてくるのが見える。
その時、僕が自分の目を一瞬疑う出来事が起きた。老婆が突然シートのリクライニングを元に戻したのだ。それはまるでこう言われたみたいだった。
「全てお見通しさ、あんたの思い通りにゃさせないよ」
完敗だ…この老婆は僕の気持ちをも把握している。僕につけいる隙を与えずに狭いエコノミークラスの座席を操っているように見えた。
老婆の暖かさを感じた瞬間
食事の時間が終わりに近づいて後片付けが始まった。老婆の食器が回収されれば再びリクライニングが始まるのだろう。僕は既に老婆との戦いに敗れたことを認めていたので、ここからは「されるがまま」でいいと諦めていた。ところが様子が違う、食後の老婆はリクライニングをしなかったのだ。
「それくらいで凹んでんじゃないよ、しっかりおし!」
まるで大陸系の老婆にそう激励されてる気がした。僕は老婆の薄くなりかけた後頭部をシート越しに眺めながら「謝謝」と呟いてみた。
そもそもシートピッチが狭い事が嫌ならばビジネスクラスを選択するべきだ。JALの場合はマイルでアップグレードすることもできる。アップグレードしたビジネスクラス搭乗記はJAL・ビジネスクラス搭乗記とアップグレードの体験記録を読んでほしい。
またカタール航空のビジネスクラスの搭乗記はこちらになる。
www.hanayao.xyz
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敗北感、再び…
時間は過ぎていよいよ着陸が迫って来た。狭いエコノミークラスの旅がもうすぐ終わると思うと僕は気が楽になりつつあった。その後、老婆はリクライニングをすることは無かったし、優しい一面も見た気がして途中からは少しだけ快適に過ごすことができた。
着陸態勢に入る前の機内ではCAさんが座席のリクライニングを元に戻したり、シートベルトの着用を促していた。そしてCAさんの巡回が一通り終わり、いよいよ着陸態勢に入って機内が一斉に消灯された。なんとこのタイミングで老婆は再び最大限のリクライニングをしてきたのだ。
や、やられた…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
老婆の自由奔放な行動に一喜一憂した今回のエコノミークラス。老婆は時にはルール違反だった気もするけど、狭い座席でどうやってくつろぐのかはその人次第という事かもしれない。目の前に迫る老婆の後頭部を見ながら、僕はいつの日か老婆にリベンジすることを心に誓ったのだった。
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