先ごろ、米アップルが米カリフォルニア州で、自動運転車の公道走行試験の許可を得たというニュースが報じられたが、米アマゾン・ドットコムも同じく、自動運転の実用化への取り組みを進めているようだ。

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物流事業の改革に自動運転車を利用

 米ウォールストリート・ジャーナルの4月24日付の記事が伝えるところによると、アマゾンは無人自動車の技術について研究するチームをひそかに組織していたのだという。

 このチームは、少なくとも1年以上前に発足しており、現在は十数人の社員で構成されている。アマゾンは自社物流事業の改革を目指しており、チームはこの取り組みを手助けするために作られたという。

 ただ、その目的は、アマゾンの物流車両網を構築することではなく、自律走行車をいかに商品配送に生かすかを研究するシンクタンクのような役割を果たすことにあると、事情に詳しい関係者は話している。

 そして、この取り組みはまだ初期段階であるが、アマゾンは将来、トラックやフォークリフトなどの分野で自動運転の技術を導入する可能性があるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

 ただし、同紙によると、このチームの詳細など、多くのことについては、まだ分かっていない。

米国縦断走行をわずか1日半で

 アマゾンが自動運転車に関心を持っていることは、以前から伝えられていた。例えば、今年1月には同社が自動運転車関連の特許を取得したことが明らかになった。

 この特許は、幹線道路網で複数の自動運転車を制御する技術に関するもの。幹線道路などには、時間帯によって交通量の多い側の車線を増やす「リバーシブルレーン(可逆車線)」があるが、アマゾンの特許では、自動運転車がこうした車線を安全に走行するための仕組みを提案している。

 なお、米特許商標局(USPTO)が公開している書類には、アマゾンの自動運転車に関する事業など、今後の計画や事業戦略については書かれておらず、こちらも詳細は明らかになっていない。

 英ガーディアンなどの海外メディアによると、アマゾンは以前から運転者の操作を手助けしたり、人間のドライバーに代わって運転したりする技術について研究している。

 そして、自律走行するトラックは将来、同社物流事業の重要な役割を担うのではないかとの観測も出ている。

 今回のウォールストリート・ジャーナルの記事も同様に、自動運転車を活用した物流システムの将来像について報じている。

 そのうちの1つは、自動運転技術を備えたトラクタートレーラーが、人間のドライバーに代わって長距離輸送するというもの。

 人間には、長くても10時間という連続運転の限界があるが、自動運転車は昼夜を問わず連続して走行可能だ。これにより、現在4日かかっている東海岸から西海岸までの米国横断輸送が、わずか1日半で可能になるという。

 また、アマゾンは2013年から「Prime Air」と呼ぶ、ドローンを使った商品配送システムを開発しているが、このPrime Airと連係する商品配達システムを開発したりすることも考えられると同紙は伝えている。

(参考・関連記事)「アマゾンのドローン配送、ついに米で初の一般公開」

UPSがトラックとドローンの連係実験

 実はこうしたトラックとドローンを連係させる配送システムについては、今年2月に米物流大手のUPSが実験している。

 UPSの発表資料によると、実験トラックの荷台天井部分にはドローンが格納されている。そして、ドライバーが荷台内部からドローンに荷物を積み、運転席の操作パネルでボタンをタッチすると、ドローンが荷台屋根から飛び立つ(画像)。

 配達が終わったドローンは、トラックの位置を認識して荷台屋根のドックに自動で戻る。この仕組みがあるため、トラックはドローンが自動配達している間、別の配達先に向かうことができるという。

 これについてUPSは、トラックが1件の配達のために、幹線道路から離れた数マイル先の顧客まで走らなければならないような、田園地域の配達で効率化が図れると説明している。

筆者:小久保 重信