土星探査機「カッシーニ」初めて輪の内側に

土星探査機「カッシーニ」初めて輪の内側に
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20年前に打ち上げられ、土星の輪の鮮明な映像を撮影するなど数々の成果を上げてきた探査機、「カッシーニ」がことし9月の引退を前に、26日、初めて輪の内側に入り、土星にこれまでで最も近づいて観測する、最後の任務が始まりました。
「カッシーニ」は、NASA=アメリカ航空宇宙局などによって開発され、1997年に打ち上げられた土星探査機で、土星の輪の鮮明な映像を撮影したほか、衛星の1つで水蒸気が噴き出す様子を初めて観測するなど数々の成果を上げてきました。

カッシーニは、まもなく燃料がなくなることから引退が決まり、最後の任務として、土星にこれまでで最も近づいて観測するために初めて、土星の輪の内側に入ることになりました。

NASAによりますと、カッシーニは、衛星の重力を利用して進む方向を変え、日本時間の26日午後5時以降、土星の表面と、最も内側の輪の間に入ったということです。

輪の内側はちりが高速で飛び交い、機器が破損するおそれがあることからカッシーニはアンテナを進行方向に向けて盾のようにして飛行しています。
このため、一時的に地球との交信ができなくなっていますが、日本時間の27日午後には最新の映像が送られてくる予定です。

カッシーニは、輪の内側に22回入って観測したあと、9月15日には土星の大気圏に突入して燃え尽き、20年に及ぶ任務を終えます。
NASAの担当者は、「これまでにない発見ができることを期待している」と話していました。

カッシーニ最後の任務

NASAは、今回のカッシーニの任務を20年間にわたる最後の任務として「グランド・フィナーレ」=「壮大なフィナーレ」と名付けています。

最後の任務では、土星最大の衛星、タイタンの重力を利用して、土星の周りを6日半かけて大きく回る、だ円形の軌道に修正します。
新しい軌道では、土星の表面と最も内側にある輪の間に入って、表面からおよそ3000キロとこれまでで最も近くから観測する予定です。

輪の内側を飛行する際、カッシーニは、高速で飛び交うチリから装置を守るため、アンテナを進行方向に向けて盾のようにしながら、時速12万キロメートルを超えるスピードで通過します。
そして、巨大な台風やオーロラなどを観測するほか、長年、謎とされてきた輪の質量や土星の一日の周期の長さなどを明らかにしたいとしています。

また、実際に、土星の大気圏に近づいて大気のサンプルも採取し、大気の状態についても調べる予定です。カッシーニは、土星の輪の内側に合わせて22回入る計画で、その後、ことし9月15日に土星の大気圏に突入して燃え尽き20年に及ぶ任務を終えることにしています。

カッシーニの成果

NASAとヨーロッパ宇宙機関が開発したカッシーニは、1997年10月、アメリカ南部フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、2000年に木星の近くを通りすぎた後、2004年に土星を回る軌道に入りました。

そして、土星の輪の精細な映像や、巨大な台風が起きている様子、それに、ジェット気流が土星の北極上空から見て、六角形を描くように循環している様子を初めて撮影しました。

また、土星の衛星についても、存在が知られていなかった小さな衛星を複数、発見したほか2005年には、最大の衛星タイタンの地表に小型の探査機を投入することに成功しました。
そして、タイタンに液体の状態のメタンの海が広がっていることを明らかにし、地球以外の天体で初めて、液体の存在を確認しました。

さらに、氷に覆われた直径およそ500キロメートルの衛星、エンケラドスでは、地下に海が広がっているとみられることを突き止めたうえ、海底にある地表の割れ目から上空に向かって水蒸気が噴き出していることを観測しました。
エンケラドスの海底では、温度の高い水が湧き出していると考えられ、微生物などの生命を育むことができる環境が存在する可能性が指摘されています。