(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年4月24日付)

政治も私生活も「型破り」 仏大統領候補マクロン氏の横顔

フランス大統領選で決選投票への進出が確実になった後、パリで支持者らにあいさつするエマニュエル・マクロン前経済相(2017年4月23日撮影)。(c)AFP/Eric FEFERBERG〔AFPBB News

 完全に予想外の展開にならない限り、5月7日に実施されるフランス大統領選挙の決選投票は、1年足らず前まで公職選挙に出馬したことがなかった若き政治家、エマニュエル・マクロン氏(39歳)の即位式となるだろう。

 4月23日の第1回投票の前には、世論調査という世論調査が、マクロン氏が5月7日に対抗馬のマリーヌ・ルペン氏に圧勝するとの予想を出していた。勝敗の差は少なくとも6対4に達すると見られている。

 第1回投票でのマクロン氏の勝利は、欧州全体、そして西側の民主主義諸国全体で、各国政府から大きな安堵をもって受け止められるだろう。マクロン氏は慎重な国内経済改革と欧州連合(EU)の繁栄、リベラルな国際秩序を支持する独立系中道主義者として、英国が昨年の国民投票でEU離脱を決め、米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利を収めた後、この秩序が瓦解することを恐れていた人々の希望を体現している。

 極右の勝利が阻まれた3月のオランダ総選挙と、9月のドイツ議会選挙で予想されている穏健な中道右派か中道左派の勝利と相まって、今回のフランスの選挙結果は、欧州の自由民主主義、そしてEUそのものの死亡記事を書くのは時期尚早だということを示唆している。

 同時に、第1回投票の結果は、1958年にシャルル・ドゴールによってフランスで確立された政治体制にとって大きなショックとなる。左派、右派の2大主要政党がどちらも決選投票に候補者を進められなかったのは、ほぼ60年ぶりのことだ。フランス第五共和制の政党政治のエスタブリッシュメントは、我々の目の前で瓦解しつつある。

 だが、マクロン氏を完全なアウトサイダーとして描くと、誤解を招く。同氏は実際、数年前に古い政党政治システムが壊れていくのを見て取り、フランス有権者に新顔として打ち出せる候補を探していたフランス政官界エリートの幅広い層から支持されている候補者だ。

 マクロン氏はエリート養成校の国立行政学院(ENA)を含め、フランス最高の教育機関の出身者であり、専門アドバイザー、そして経済相として、近く退任するフランソワ・オランド大統領に仕えた。