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 米国国境に接するメキシコ北東部ヌエボラレド市の新聞社。社屋はまるで要塞(ようさい)に見えた。政府と麻薬密売組織との攻防が繰り広げられて治安が悪化。犯罪を伝える新聞社がマフィアによって銃撃された。1987年5月3日、記者2人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件から30年になるのを前に、暴力によって事件報道が消えた街を訪ねた。

 メキシコの憲法記念日の祝日だった2006年2月6日夜、記者約10人がいた新聞社エル・マニャーナの編集室に男数人が侵入し、銃を乱射して手投げ弾を炸裂(さくれつ)させた。1人が被弾して半身不随に。事件を境に、市民に開かれた新聞社は強固な扉で閉ざされた。

 「次書けば殺す」。記者が脅迫され始めたのは04年ごろだ。麻薬密輸などの記事が出ると警察や軍が取り締まりに動く。マフィアには都合が悪い。同社は12年にも2度銃撃され、紙面で「マフィア関連は一切報じない」と宣言した。やがて街から事件報道が消えた。

 ヌエボラレド市は、古くから陸路の要衝で麻薬密輸のルートにも使われ、国内有数のマフィアの拠点がある。地元新聞社「エル・マニャーナ」は1932年に創立され、「表現の自由の促進」を掲げて同市と米国・テキサス州で約2万部を発行している。

 記者が脅され始めたのは2004年ごろ。政府と麻薬密売組織との攻防が繰り広げられて治安が悪化していた。同年には、論説委員が自宅前で殺害された。

 そして06年2月6日夜、編集室で10人ほどの記者が記事執筆に追い込みをかけていた時だった。編集室が銃撃を受け、手投げ弾も爆発した。ダニエル・ロサス編集長(45)は「2、3分の出来事だったが、1時間にも感じた」と振り返る。

 現在、建物はほぼ修復した。受…

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