古代のヒト「ホモ・ナレディ」 当初予測より最近のものか

ポール・リンコン、BBCニュースサイト科学編集長

「ホモ・ナレディ」の化石 Image copyright John Hawks
Image caption 「ホモ・ナレディ」は初期の「ヒト属」と共通点が多い

南アフリカの洞窟で発見され、初期人類かもしれないとされてきた化石は、当初予測されていた最大300万年前のものではなく、20万年~30万年前とかなり新しいものかもしれないことが明らかになった。

南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学のリー・バーガー教授率いる発掘チームは2013年、北部ハウテン州の洞窟で15体分と思われる骨の化石を発見。2015年にヒト属の新種かもしれないと、「ホモ・ナレディ」と名付けて発表した。

「ホモ・ナレディ」については発表当初から、比較的新しい種ではないかと考える専門家もいたが、当時のバーガー教授はBBCに最も古くて300万年前の化石の可能性があると説明していた。しかしその後の研究の結果、おそらく20万年~30万年前のものだろうと教授は話している。

「ホモ・ナレディ」の人体構造は現生人類と似ている部分もあるが、200万年以上前の原人に近い要素も多い。

年代測定の新資料から、ホモ・ナレディは現生人類ホモ・サピエンスの初期と時期が重なっていた可能性があると判明した。

バーガー教授と共同で研究にあたる米ウィスコンシン大学のジョン・ホークス教授は、「我々と同じヒト属のより原始的な形に見える。(直立二足歩行した)初期のホモ・エレクトゥスや(ヒト属最初の種の)ホモ・ハビリス、あるいはホモ・ルドルフエンシスとつながりがあるかもしれない」と話す。

ホークス教授はBBCラジオに対して、「欧州のネアンデルタール、アジアのデニソバン、アフリカの初期現生人類と同時代だ。現生人類が誕生し始めた時代から、今と同じように多様な種類の人間がいた。ホモ・ナレディはその一部だ」と話した。

Image caption ホークス教授提供のホモ・ナレディの頭蓋骨(左)。頭蓋骨の形は、額部分が発達している以外は現生人類に近いが、脳が入る容積は今の我々より小さい

「ほかにアフリカに何があってどういう発見ができるのか、まるで分からない。私にとってはそれが最大のメッセージだ。200万年前に発生したと思われるこの系譜が20万年前まで続いていたというなら、それでおしまいではなかったかもしれない。我々が見つけたのは、最後のホモ・ナレディではなく、一部のホモ・ナレディだったのだ」とホークス教授は言う。

「ホモ・ナレディ」の化石は2013年、ハウテン州のライジングスター洞窟群の奥深くで発見された。入りにくく捜索が困難な場所だったため、わざとそこで遺体を処理し、数世代にわたり置いていたのではないかと、バーガー教授は当時推理していた。

もしその通りだとすると、「ホモ・ナレディ」には儀式的行動の能力があったことになり、そうした行動はより新しい人類の特徴だという通説に一致しないため、物議をかもした。

ホークス教授によると、発掘チームは現在、第2の石室の調査に着手しているという。

Image caption ナレディの手(左)と現生人類の手。手首と手のひらはよく似ているが、指はナレディの方が湾曲している
Image caption ナレディの足(左)と現生人類の足。似た大きさで、土踏まずの湾曲から二足歩行していた様子がうかがえる

「2番目の石室には、さらに3体分の骨が残っている。特に、頭蓋骨を含む実に素晴らしい部分的な骨格がある」とホークス教授。

研究チームはすでに、ホモ・ナレディが人類の進化のどこに位置するのかさらに知るため、化石からDNAの採取を試みてきたが、まだ成功していない。

「(化石は)可能性は十分にあると思える年代のものだ。だが欧州北部やアジアの寒冷地の洞窟では、DNAが非常に良い状態で保存されているが、この洞窟はそれに比べると温かい」とホークス教授は説明する。

ホモ・ナレディの年代測定については、数カ月以内に研究報告が発表される予定となっている。

(英語記事 Primitive human 'lived much more recently'

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