米大統領選を操ろうとしたと非難されるロシアのハッカー集団が、フランス大統領選で首位を走る中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相を標的にしていると、日本の情報セキュリティー大手、トレンドマイクロの調査員が明らかにした。
同社の調査員は、ハッカー集団「APT28」が仏大統領選に資源を動員していた証拠があると指摘した。欧米の情報機関はAPT28について、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)とのつながりがあるとみている。
欧米情報機関の関係者は、ロシアが米大統領選の際に民主党のクリントン候補に対してハッカー集団が用いたのと同じ戦術を使って、今年欧州各国で実施される選挙に介入しようとしているとの懸念を強めている。
ロシア政府はマクロン氏のライバル候補、極右国民戦線のマリーヌ・ルペン党首を支持してきた。ルペン氏はロシアとのより緊密な関係や、ロシアによるウクライナ侵攻で実施された欧州連合(EU)による制裁の解除、フランスの北大西洋条約機構(NATO)脱退を主張している。
ルペン氏は3月、モスクワでロシアのプーチン大統領から歓待を受けた。ロシアの国営メディアはフランス語と英語での放送も含め、ルペン氏を支援する情報を数週間流し続けている。
■ロシアは「APT28」との関連を否定
ロシア政府は一貫して、他国の選挙への介入やAPT28との関連を否定している。
トレンドマイクロが25日に発表したリポートによると、APT28は3月、大統領選でのマクロン氏の勝算が高まる中、同氏に対する取り組みを強化し始めた。APT28はマクロン氏側近にAPT28が作った偽のウェブサイトに誘導するメールを大量に送りつけた。誘導先のサイトは、マクロン氏の政治運動「前進」の公式ウェブサイトとアカウントをまねている。
例えば、ハッカー集団は「onedrive-en-marche.fr」というドメイン名を登録し、そこに前進が管理する公式アカウントに似せたウェブサイトを作った。前進のメンバーが無意識にログイン情報を入力することを狙ったものだった。
同リポートは、APT28がつい先週も前進を狙った同様の偽ウェブサイトを登録していたと指摘する。
これは、APT28が米大統領選のさなか、民主党全国委員会のシステムへの侵入手段を得る際に使ったのと同じ手口だ。これが結果的に何千という私的メールの流出につながり、クリントン氏の選挙活動を妨害、打撃を与えた。
マクロン陣営のデジタル担当責任者、ムニール・マジョビ氏は25日、陣営に対して昨年12月以降で10件のフィッシング攻撃があったが、全て失敗に終わったと語った。
マクロン陣営で選挙対策を担う前進のリシャール・フェラン幹事長は2月、ロシア政府と同国国営メディアがハッキングを行い、仏大統領選への介入目的で偽ニュースを広めたと非難した。
By Sam Jones & Anne-Sylvaine Chassany
(2017年4月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
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