トランプ米大統領の長女、イバンカさんが25日、初の海外公務で女性リーダーの国際会議に出席したが、ホワイトハウスでの役割や物議を醸す父の女性に対する態度について問われ、釈明に追われた。
35歳のファッションデザイナーで無給の大統領顧問を務めているイバンカさんは、トランプ政権との関係改善を図るメルケル独首相の招きを受けてドイツを訪問したが、外交への関与の落とし穴を思い知らされる結果となった。
ベルリンで開かれた20カ国・地域(G20)の女性リーダーらの会合で、女性蔑視発言の録音テープも出回っているトランプ氏についてイバンカさんが「家族を支援する政策の素晴らしい推進者」だと語ると、聴衆の一部からうめき声が上がった。
メルケル氏やラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事らと参加したパネルディスカッションで、イバンカさんは新興国の女性支援を目的とするG20の基金設立に支持を表明した。
イバンカさんの訪独は、トランプ氏との関係を強めようとするメルケル氏の取り組みの一環だ。メルケル氏は3月に米ワシントンを訪問している。
トランプ氏の政権運営には非公式な方法が多く、駐独大使も含め主要な外交ポストがまだ埋まっていないことから、関係筋の間では、メルケル氏が「ファーストドーター」(大統領の娘)を招いたのは、大統領の家族の政治的な重みが増しているという認識を示すものだと受け止められている。
この異例のアプローチに、批判派は冷笑を浴びせている。ドイツ社会民主党のクリングバイル連邦議会(下院)議員は、ツイッターにこう投稿した。「首相がドナルド・トランプの娘と外交をするのはまったくばかげていると思うのは、私だけだろうか」
だが、政権与党のグロッセブロマー下院院内副総務は、党を率いるメルケル氏の柔軟なアプローチを擁護し、同氏とトランプ氏の頻繁な電話会談に結実しているとした。
女性会合でのイバンカさんの憂き目は、司会を務めた「週刊経済」誌の女性編集長、ミリアム・メケル氏が「ファーストドーターという概念」になじみのないドイツの聴衆のために説明してほしいと求めたことから始まった。「あなたは誰を代表しているのでしょうか」と、メケル氏は聞いた。「アメリカ合衆国大統領としてのあなたの父か、米国民か、それとも自分の事業か」