セックスでの同意とは…「キャンパスレイプ」なくせ
駒場キャンパスでワークショップ 国内大学で初開催
大学生が性暴力の被害に遭う「キャンパスレイプ」を防ごうと、東京大の学生らが25日夜、東京都目黒区の東大駒場キャンパスでワークショップを開いた。「同意のないセックスはレイプ」という考え方が一般的な欧米では、大学の新入生向けオリエンテーションで「性行為における同意」を教えるプログラムがあるものの、国内大学での開催は初めて。ベッドに誘う時、誘われる時、あなたは相手の同意を得ていますか?【中村かさね/統合デジタル取材センター】
性行為の同意の取り方 どう考える?
「ペアになった相手と握手をしてください」
ワークショップの冒頭、約20人の参加者の半数にこんな指示が出された。ペアを組んだ相手に握手のことは知らされていない。「いいですか」と返事を待たずに相手の手を取る人、「アイコンタクトで察してもらった」と無言で手を差し出す人、「握手してください」と話しかける人。「同意」を考えるワークショップと知って参加していても、突然のことを求める側も求められる側も戸惑う様子がみられた。
ワークショップを企画した大学院1年の佐々木弘一さんは「東大は女子校や男子校の出身者が多く、恋愛経験がない人もいる。性教育では生物学的な内容しか習わず、セックスについてはアダルトビデオから情報を得ている学生は多いはず」と指摘する。
そもそも、なぜ「同意」を考える必要があるのか。
英国のテムズバレー警察署は2015年、「Consent is Everything(同意がすべて)」と題したキャンペーンの一環で、性行為の同意の取り付け方を紅茶の誘い方に例えた動画を制作・公開(http://www.consentiseverything.com/)した。
「紅茶飲まない?」と聞いた時、相手が「うーん…」と答えたら、紅茶を入れてもいいけれど、飲むことを強要してはいけません。「飲む!」と答えたのに「やっぱりいらない」と言われたら、ムッとしても紅茶を強要してはいけません。先週は紅茶を飲んだからといって、今週も来週もお茶が欲しいとは限りません。セックスでも同じだと分かるでしょ?--といった具合だ。今回のワークショップでも上映され、学生たちが笑ったり、うなずいたりしながら見入っていた。
イギリスでは同意のないセックスはレイプとみなされ、相手が同意していたか、相手の同意を得るためにどんな方法を用いたかが問われるという。
日本でも同意のない性行為に苦しむ女性は少なくない。内閣府が14年度に行った調査によると、男性から無理矢理性交された経験を持つ女性は6.5%に上る。15人に1人という数字だ。加害者の7割は顔見知りで、被害経験のある女性の67.5%は誰にも相談していなかった。「恥ずかしくて言えなかった」(38%)、「自分さえ我慢すれば、なんとかこのままやっていけると思った」(30.4%)などが理由に挙がった。
東大から発信 性行為では相手を尊重しよう
次のようなケースは、どう考えたらいいだろう。
互いに「いいな」と思っているサークル同級生とのデート帰り、B男がA子を自宅に誘った。ちゅうちょするA子に対し、B男は「大丈夫だよ、変なことなんかしないよ」。「断ったら嫌われてしまうかも」と考えて誘いに乗ると、「部屋に来た時、こうなることぐらい分かってたでしょ」と性行為を強いられた--。
ワークショップで参加者たちが行ったロールプレーの事例だ。参加した学生たちの意見は割れた。「誘う時は相手が否定できる余地を残すべきだ」「ただのウソつきじゃないか」とB男を非難する声が上がる一方、「女性への思いやりより、自分の童貞卒業に目が行くのはありがち」「黙っていては『緊張している』と解釈されることもある。女性も、ノーと声に出さないといけないのでは」とB男に共感する感想も挙がった。
経済学部3年の女子学生は「友人から相談を受けたら、相手が悪いと言えるけれど、自分の身に起きたことなら、『はっきり断らなかった自分が悪い』と思って誰にも相談できないかもしれない」と悩む。
東大でのワークショップは来月も開かれる予定で、佐々木さんは「セックスは相手を尊重することが大事なのだという考え方を、東大から日本の他の大学に向けて発信していきたい。こういうテーマに興味のない学生にも届けるため、今後は大学に協力もお願いしたい」と意気込んでいる。