北朝鮮ミサイル危機で頼るべきは自衛隊でなく地方自治体【評論家・江崎道朗】

【江崎道朗のネットブリーフィング 第10回】
トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!

日本の安全保障の転換点となった4月21日


 4月21日は、日本の安全保障の転換点として将来記憶されることになるだろう。

江崎道朗

江崎道朗(撮影/山川修一)

 1950年6月25日に始まった朝鮮戦争のときも、九州では空襲警報が鳴ったことがあるが、実に67年ぶりにリアルな危機が押し寄せてきている。

 そこで4月21日、菅官房長官が記者会見において、ミサイル攻撃を受けた際、身を守るためにとるべき行動をとりまとめ、内閣官房のホームページにある「国民保護ポータルサイト」に掲載したことを報告した。

 さらに菅官房長官は、都道府県の国民保護担当者を集めて対策会議を実施したこともこう報告した。

《地方公共団体に対してその旨を通知し、住民への広報について協力を要請したほか、都道府県の国民保護担当者に対する説明会を、本日開催することといたしております。政府としては、引き続き、米国、韓国等と緊密に連携をとりながら、いかなる事態にも対応することができるよう、緊張感をもって、情報収集、警戒監視等万全を期してまいりたいと思います》

 この記者会見のポイントは、二つ。

 第一に、ミサイル攻撃を受けることを想定して官房長官が記者会見で「自分の身は自分で守るしかない」と国民に直接注意を呼び掛けたこと。これは恐らく戦後初めてだ。

 第二に、政府は、都道府県の担当者を集めて緊急会議を開催し、避難について住民への周知と訓練を呼びかけたこと。

 この記者会見を見て、ミサイル攻撃を受けた際の対応について、なぜ都道府県の担当者と協議するのか。自衛隊ではないのか、と思った人もいるはずだ。

 ミサイル攻撃を受けた際、自衛隊は、ミサイルを撃墜するための行動や外国の軍隊による攻撃から領土を守るための防衛に従事している。有事になれば、自衛隊は、敵の攻撃に対応することに専念するしかない。よって誤解している人が多いのだが、自然災害とは異なり、有事の際に国民を避難・救援するのは、地方自治体の役割なのだ。

あなたの町は大丈夫? 危機対応能力が問われる地方自治体


 平成16年に制定された「国民保護法」第11条では、地方自治体は、以下のような措置をとることが義務付けられている。

一 住民に対する避難の指示、避難住民の誘導に関する措置、都道府県の区域を越える住民の避難に関する措置その他の住民の避難に関する措置

二 救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置

三 武力攻撃災害の防除及び軽減、緊急通報の発令、退避の指示、警戒区域の設定、保健衛生の確保、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置

四 生活関連物資等の価格の安定等のための措置その他の国民生活の安定に関する措置

五 武力攻撃災害の復旧に関する措置

 にもかかわらず、実際の訓練などを実施していないため、いざというとき対応できるかどうか、かなり疑問だ。

 実際に訓練を実施し、現在も24時間体制で警戒に当たっている秋田県や、市長をトップとする「北朝鮮危機事態対策本部」の設置を具体的に準備している大阪市のような自治体は僅かだ。

 消防や医療の関係者と話しても、ミサイル攻撃を受けた際、住民の避難と保護、救援が自分たちの仕事だと認識している人は決して多くない。そもそも国民保護法という法律があることも知らない人が多い。

 そこで政府は、都道府県の担当者を集めて住民の避難・救援、医療や生活物資の確保などが地方自治体の役割であることを再確認するとともに、まずは訓練を実施することを要望したわけだ。その際、重要なのは、民間の人たち、具体的には電気、ガス、輸送、通信、医療その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社などとの連携だ。救助活動が機能するためにも電気、ガス、道路などのインフラの復旧が急務となるからだ。

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