先進的な取り組みを続ける現場に訪問し,
- 【インタビューされた人】
小野和俊(おのかずとし) - (株)
セゾン情報システムズ
規模の違う企業での取り組み
- ──小野さんは現在,
アプレッソの代表取締役とセゾン情報システムズのCTOという立場でお仕事をされています。それぞれの組織について教えていただけないでしょうか。 小野:アプレッソは16年前に創業し,
現在では開発メンバーが30人弱くらいの規模です。会社全体で60人程度ですので, およそ半分がエンジニアですね。事業としては自社製品が中心です。一方セゾン情報システムズはもともとSIがメインですが, パッケージ製品やクラウドサービスも提供しています。アプレッソの人間としてセゾン情報システムズと一緒に仕事をしていく中で, 事業的なシナジーが強くあるということで3年前に資本業務提携し, 今にいたっています。私自身の時間の使い方としては, セゾン情報システムズが8割くらいです。セゾン情報システムズの事業はもともとSIがメインですが, そこも変えていこうということで, やることがたくさんあります。
アジャイルへの引力とウォーターフォールへの引力
小野:アプレッソではチーム開発をガチガチにやっていて,
100%スクラムで進めています。スクラムマスターが何人かいて, 教科書どおりのやり方でスクラムにしっかり準拠した開発フローですね。でも, 始めから教科書どおりだったわけではありません。アプレッソで開発を始めた2000年ごろは 「アジャイルソフトウェア開発宣言」 が出たばかりの時期で, まだアジャイルという言葉は普及していませんでした。そんな 「教科書」 ができる前の時期からペアプログラミングやリファクタリングなどに力を入れていたのは, 自然にそういうやり方になっていたからです。 たとえば大学の研究室で何かを作るときも同じだと思うのですが,
何も考えずに作ると 「ちょっとここを見てもらいたいんだけど」 「ここを一緒に作らない?」 といったやりとりが生まれる, ウォーターフォールというよりはアジャイル寄りな開発になりますよね。 - ──そうですね。しっかり計画するというよりは進めていく中で修正しますね。
小野:おそらく,
それが自然な開発だと思うんです。ガチッと計画を作るよりもやりながら修正するし, 1人で全部抱え込むよりも何人かで分担する。一時的に役割分担を決めるかもしれませんが, 進みが良かったり悪かったり, やり始めてみたら途中で難易度が高いのことがわかったりといったこともあるじゃないですか。そこを柔軟に変えていくのは自然なことなんですよね。そういう経緯でしたから, 「教科書どおりにやらなくていいんじゃないの」 みたいな甘えも少しありました。 でも,
若い人たちが中心となって, 「一度教科書どおりに, 1つの例外もなくプラクティスを守ってみよう」 「かっちりやることにきっと意味があるから試してみよう」 という話になって教科書どおりにやってみたところ, 「すごくいいね」 ということになったんです。結果, スクラムマスターになる研修を受けて資格を取った人も出て, 今はかっちりしたスクラムで開発しています。スクラムをやっている人と話すと 「エンタープライズだろうがWebだろうが, 1週間で回せないと何かがおかしいぞ」 という話になったので, ウォーターフォールへの引力を感じながらも, きちっと1週間で回して, アジャイルでやることにしています。 - ──自然とアジャイル開発をし,
その次にかっちりスクラムを取り入れたと。 小野:はい。その一方で,
セゾン情報システムズはずっとウォーターフォールだったんです。エンタープライズだとバグが出たときにクリティカルだったり, お客様に半年くらい前から作るものを約束していたりとか, どうしてもウォーターフォールの重力に引き寄せられがちになるんですよ。